閑話 〈2〉 ールピィのミカター
本日は閑話を投稿します。
今回はギルド職員ルピタ・リットンの視線です。基本ルピィの説明口調で話が進行します。(但し脱線します)
閑話〈2〉
「お疲れ様でしたぁ♡」
迷宮探索から帰って来た冒険者さんに労いの言葉を掛けます。うん、今日も何時もと変わらない1日───
「ルピィ、すまないがギルマスに取り次いでくれ」
はい……訂正。今日は荒れそうです!
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えっと、私はルピタ・リットン20才。城塞都市ラーナルー市に住むネイサン・リットンの次女です! そしてラーナルー市冒険者ギルドで働くギルド職員でもあります! あっ、因みに今年で3年働いてますよ。
実家はこのラーナルー市でリットン商会と言う大手の武具店を営んでいて、冒険者さん相手に商売をしています。それで私もお父さんの手助けになれば良いかな~と思ってギルドに集まる冒険者の皆さんに何時もことある事にリットン商会を宣伝しているんですよ~☆ えっ? ギルド職員がそんな事しちゃ駄目だ? 良いんですよ~、ギルマスさんにバレなければ! その内リットン商会がここのギルドの優良指定店にでもなれば、娘としても嬉しいですからね~ムフフ♡
はっ!? 話が逸れましたね!
兎に角3年前、このギルドの職員募集の張り紙を見てキチンとした仕事に就いて独り立ちしたかった私は、一も二もなく応募したんです! 何で独り立ちしたかったんだって? 私、次女ですからねぇ……お父さんの仕事はお兄ちゃんが引き継ぐ事は決まってますし、お姉ちゃんは結婚して家を出ましたし……私は結婚とかまだ早いかな~と、思うんですよね。特に好きな人も居ませんし………… 。
い、いえいえ! 何も結婚を諦めている訳じゃないんですよ?! その為にもギルド職員になったんですから! ほら、やっぱり高クラスの冒険者さんとか収入も高いし、Sクラス冒険者なんて貴族様ですよ?! やっぱり結婚するなら高クラスの冒険者さんで~、出来れば格好良くて~、出来れば優しい人とか憧れるじゃないですかぁ──♡
あれ?! また逸れましたねぇ~、コホン。
えっと、私が所属するラーナルー市冒険者ギルドは他のギルドとは違う点が1つだけあります。普通冒険者ギルドとは、この大陸のあちこちで活躍する冒険者さん達を取り纏める為の組織なんですね。でもラーナルー市の冒険者ギルドは迷宮の管理も行う為の組織として成り立っているんですよ。ここには「魔王の庭」と呼ばれるS級ダンジョンが街の真ん中にあって、その周りに街が出来て今のラーナルー市が出来たんです。
なので必然的に迷宮探索をする冒険者さん達が多く、また迷宮を取り込んで出来た街である以上、迷宮に対してあらゆる権利と共にあらゆる責任があるんですよ! と、ギルマスさんが言っていたのをそのまま受け売りなんですけどねぇ~、えへへっ。
何たってギルド職員に成り立ての頃、嫌と言う程聞かされたお話なんですよね……それこそ夢でうなされる程に!!
おっと、また逸れました──何ででしょう?
兎に角私もこのギルドで3年、それなりに頑張って来ました。最近はギルマスの秘書のお仕事もやらされてますけど……中堅としておおむね平穏な日々を過ごして来たんですよ~。だけど最近とある一団さんの所為で慌ただしいんです………… 。
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「ふわぁァ~」
朝早くからの窓口勤務で思わず欠伸が出ました……私達のギルドは1日24時間、1ヶ月30日、果ては1年360日ずっと休まず開いているんです。だから私達ギルド職員は1日を三等分して交代交代働いているんです! それにしても早朝勤務は眠いです…………ウトウト………………スゥスゥ………… 。
「──ピィ、ルピィ?!」
「はっ!?」
うっかりウトウトしていて、呼び掛けに気が付くと目の前に目付きの怖い──コホン、鋭い目付きの冒険者さんが立って声を掛けてました。えっと、この人は確か………… 。
「あっ、ウィルフレドさん。おはようございます!」
そうそう、ウィルフレド・ハーヴィーさんです! 目付きは兎に角、意外と親切で親しみ易くしかも王都のギルド所属のBクラス冒険者さんなのです。でも、こんな朝からどうしたんでしょう?
「何かありましたか?」
「済まないがギルマスに話を取り次いでくれないか? 急いで相談したい事があるんだ」
ふと、ウィルフレドさんの足元を見ると真っ黒な毛玉が──!? えっ? わんこ? 私は思わず受付帳場から出ていき、手を伸ばして黒いわんこを撫でてました。うゎー凄いモフモフしている~♡
「うわぁ~、可愛い~~♡」
私は自他共に認める可愛いモノ大好きで、しかもフワフワした毛並みの動物には目がありません! ついついモフモフしたくなるんですよね~♡
あっ、因みにギルドの女性職員全員に「モフモフ」と言う言葉を広めたのもかく言う私なんですよ! お陰でギルマスさんには変な目で見られましたけど……こればかりは止められません!! うーんこの手触り、癖になりそうです♡
「おい、ルピィ……そんなに撫で回すなよ。ファウストが戸惑っているぜ」
成程、ファウストって言う名前なんですね! 覚えましたよ~♡ 結局ウィルフレドさんに窘められて、ギルマスさんの所に行き面会許可を取って戻りウィルフレド……ウィルさんと一緒に執務室まで来ました。勿論、ファウストを抱っこしてです! 何かとても大人しいわんこで、昔飼っていた雌犬のタバサを思い出します──うるうる。
そのまま執務室でギルマスさんとウィルさんの話を聴いていたんですけど………… 。
えっと、このファウストが魔物のヘルハウンドですって?
こんなに大人しくてモフモフして可愛いのに? えっ? えっ?
その内、私達以外の声が聞こえてきて──えっと、ウィルさんのその腕輪が喋ってるんですか?
知性ある魔道具?!
私の頭の中はもうグルグルしてて、何が何だかわからなくなりました……はい。
結局、私は事態を飲み込めず置いてきぼりにされたままギルマスさんとウィルさんと──腕輪のコーゼストさん? が話を進めていきました。私は仕方ないので、ファウストをずっとモフモフしているしかありませんでした。いえ、決して自己逃避していた訳じゃないんですよぉ。
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それからウィルさんとコーゼストさんは、来る度来る度ギルマスを翻弄する話を持ち込む様になりました。そして何故か、何時も私の所に来てギルマスに話を取り次ぐ様に頼むんです。やっぱり私の何時も居る受付が「総合受付」なのがいけないんでしょうねぇ? ある日にはコーゼストさんが見つけた全然関係無いパーティーのトラブルを解決して来たり、またある日には可愛いゴーレムを仲間にしたと言ってきたり………… 。
そう言えばトラブルを解決して助けたダークエルフの女性とパーティーを組んだりもしました! えっと、アンヘリカさんって言う凄い美人さんなんです! えーーッ! ウィルさんは私が目を付けて……コホン、気にかけていたのにぃ──そんなこんなしていたらお二人共Aクラスに昇級するし──アンヘリカ……アンさんはウィルさんに気があるみたいなんですけど、ウィルさんは何の反応も示さないみたいです。それって私にも機会があるかも?! あ、いえ……何かギルマスさんがウィルさんの事を「将来は俺みたいなSクラス冒険者にも成りうる!」と言っていたので、つい──── 。
そんな付かず離れずのパーティーですけどAクラスに昇級した時にパーティー名も「黒の軌跡」として登録もされ、今やこのギルドでは知らない人は来たばかりの新人冒険者か、もぐりだと言われるくらいの有名人さん達になりました! ところでもぐりって、何でしょうね?
今日はお友達の魔法士のラファエル様に頼まれて、ツェツィーリア共和国までの旅に護衛として同行する事をギルマスに報告に来ました。ギルマスからは何か頼まれてたみたいですけど……ウィルさん、ちゃんとラファエル様との契約は書面にしてギルドに提出してくださいね。
でも、ウィルさんはいつもどんな時も私には変わらない態度で接してくれます。Aクラスになっても変わらないんです。もし万が一にも私に機会が有れば第二夫人ぐらいは狙えるかな………他の女性職員も何人か最近ウィルさんとの玉の輿を狙っているみたいですけど………私がウィルさんと一番親しいんですからね! 多分ですけど………… 。
あっ、第一夫人の座はアンさんが間違いありませんので、最初から狙いませんよ!
ルピィはのほほんとしている割に結構 強かな女の子なんです! それにしてもオンナは怖い……(実感)
副題の「ミカタ」とはズバリ、ルピィのウィルの見方=視線です!
次回は本編に戻りますのでお楽しみに!
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