事後処理と強襲?!
大変お待たせ致しました! 本日は第247話を投稿します!
-247-
「実はハーヴィー卿には大事な話があるのだが……」
「……何なんだ、その「大事な話」って?」
そう話を切り出して来る世界評議会議長のエウトネラ長老に、思わず身構える俺。それはそうだろう、ツェツィーリアの強硬派の連中を捕縛して来れば、俺に課せられた依頼は終わりの筈なんだからな。
「ははっ、そう身構えるな。そんなに悪い話では無いからな」
俺の様子に少し格好を崩して笑いかけてくるエウトネラ長老。見るとエリンクス国王陛下やギヨーム皇帝陛下らも、一様に笑みを浮かべて頷いていたりする。なので俺も一旦警戒を解いて
「……それじゃあ話を聞かせてもらおうか」
と居住まいを正して聞く姿勢をとる。
「うむ。実はな……」
「実は?」
「実は卿がツェツィーリアに乗り込んでいた時に、ここに集まっていた世界評議会の代表達と話し合ってな。卿を世界評議会の正式なメンバーとして向かい入れる事が決定したのだよ」
満面の笑みを浮かべて、そう宣うエウトネラ長老──って、ちょっと待てーーーッ!
「いやいやいやいや、俺はそんな話は初耳なんだが?!」
「うむ、卿が居ない時の話だからな。だから今話したのだが?」
思わずエウトネラ長老に食って掛かるが、エウトネラ長老は何処吹く風。更には
「卿には悪いが、今後卿が世界評議会の外郭部隊として活動して行くのには必要な処置なのだ。まあひとつ宜しく頼みたい」
と俺に有無を言わさぬらしい。そしてそこには俺の意思は関係ないらしい──とほほ。
~~~~~~~~~~
とりあえずこの話は既に確定なので、俺の異論も反論も認められないそうな。やれやれ、完全に巻き込まれているなァ、俺。
聞けばエリンクス国王陛下からの推薦があり、この場に居たギヨーム皇帝陛下やバーナード大統領ら各国のお歴々からも反対させる事も無く、寧ろ満場一致で俺の世界評議会メンバー入りは決まったらしい。お願いだからヒトが居ない所でそんな重大な話を勝手に進めないで欲しいものである。
因みにコーゼストは飽くまでも俺の指揮する外郭部隊の1人として捉えられているみたいであり、世界評議会では傍聴者扱いになるそうな。まぁそれはさておき。
「さて、それでは改めてツェツィーリア共和国のベルンハルト元首を緊急招聘しようと思うのだが……」
会議室に凛と響き渡るエウトネラ長老の声。それに対して誰もが「異議なし」と大きく頷いて同意を示す。もちろん俺もだが。
「うむ。それではハーヴィー卿、君とコーゼスト卿に頼むとしよう。ツェツィーリアからベルンハルト元首を連れて来てくれないかね?」
それを受けて俺に笑顔でそう言って来るエウトネラ長老。完全にコーゼストの転移魔導機頼みである。コーゼストはオブザーバーじゃなかったっけ?
「はァ、わかった分かりました。ベルンハルト元首を連れて来ればいいんだろう? 行くぞコーゼスト」
「はい、マスター」
そうコーゼストに声を掛けると、早々に転移魔導機で再びツェツィーリアに向かう俺。
まぁ単なる思考放棄とも言うが。
~~~~~~~~~~
兎にも角にもベルンハルト元首を迎えに、ツェツィーリアにあるベルンハルト元首の屋敷に再度転移して来た俺とコーゼスト。転移の光が収まると目前には、突然現れた俺達に吃驚しているベルンハルト夫妻の姿が。
「驚かせてしまったみたいだな、すまない」
「いや……リーゼからは君達が転移の魔道具を保有している事は聞いていたのだが、こうして目の当たりにすると……なぁイゾルダ」
「そうですわね、貴方。流石に少し驚きましたわ」
驚かせた事に謝罪すると、そうした返事が返ってきた。どうやら事前にリーゼさんが転移魔導機について説明しておいてくれたみたいである。良かった、お陰で説明する手間が省けた。
「それでウィルさん、何か御用事がおありなのではないのですか?」
そんな風に俺が1人で感心していると、話し掛けて来るのはリーゼさん。
「ああ、用事と言うのは他でもない。世界評議会からベルンハルト元首に大至急来て欲しいとの事だ。今回の一件で話があるらしい」
リーゼさんの問にひとつ大きく頷くと再来訪の目的を口にする俺。
「うむ、それは当然であろうな。わかった、早速出向く事にしよう」
「お父様、そう言う事でしたら私も参ります!」
ベルンハルト元首がそう言うとリーゼさんも同行すると言ってきた。まぁ1人でも2人でも手間は変わらないから問題無い、か。
俺はそう判断すると、2人を伴ってブリシト城に戻るべく、コーゼストに転移を指示するのだった。
~~~~~~~~~~
転移の魔法陣から溢れた光が急激に収まると、そこはオールディス王国ブリシト城の会議室の中。俺とコーゼストはベルンハルト元首とリーゼさんを伴い、転移魔導機で戻って来たのである。
「よくぞ参られたベルンハルト元首。この度は災難だったな。リーゼロッテ媛も、お父上らと再会出来て何よりだ」
そう言ってベルンハルト元首らを出迎えるのはエウトネラ長老。
「心配をお掛けして申し訳なかった、エウトネラ議長。他の方々も申し訳なかった」
そう言って軽くではあるが、頭を下げるのはベルンハルト元首。
「皆さん、お心遣い感謝申し上げます」
リーゼさんもそれに倣って言葉と共に頭を下げる。それにひとつ頷くと
「ベルンハルト元首。お疲れのところ申し訳ないが、我々は至急貴殿に確認しなくてはならない事があり、ハーヴィー卿に急ぎ貴殿を連れて来てもらったのを理解して欲しい」
急ぎ招聘した理由を口にするエウトネラ長老。
「わかっておりますエウトネラ議長。我が国のオールディス王国に対する宣戦布告についてですな? 我が国にはオールディス王国と戦争をする気は毛頭ありません。全てダヴィート議員の独断です」
それに対してベルンハルト元首の答えは極めて単純明快であった。この瞬間、オールディス王国とツェツィーリア共和国の間にあった緊張は一気に霧散し、最悪の事態は回避出来たのである。
それは同時に、今度こそ俺への依頼が達成された瞬間でもあった──やれやれ。
~~~~~~~~~~
「それとは別に、ここに居る方々に話があるのですが……」
俺が1人感慨に耽っていると、ベルンハルト元首からそんな発言が。なので世界評議会のメンバーと共に聞く姿勢をとる俺。
「何かね、我々に話とは?」
全員を代表してベルンハルト元首に尋ねるエウトネラ長老。するとベルンハルト元首からは
「うむ、私は元首の座を退こうと思っているのです。今回の一件で私は元首として明らかに力不足なのを思い知らされました」
いきなり爆裂魔法並の衝撃発言が飛び出した! おいおい!?
「む?! うむぅ……我々としては貴殿の意思を尊重するのはやぶさかでないのだが、貴殿の後継者をどうするのかね? やはり穏健派か中道派から暫定的に選出するのかね?」
その言葉に衝撃を受けたエウトネラ長老からはその様な言葉が投げ掛けられる──と言うか、こうした政治的な話は俺には難し過ぎるのだが? 周りは周りでベルンハルト元首の言葉に混乱している中
「ああ、それは既に考えてありますぞ。私は後継者としてリーゼロッテを推挙しようと思っております」
その混乱に更に混沌を混ぜ込む様な更なる爆裂魔法級の衝撃発言がベルンハルト元首から飛び出した! 突然の話に言葉が出ない世界評議会の面々。
「お、お父様ッ?! 私にお父様の後を継いで元首になれと仰るのですか?!」
あまりの突然の話に、思わず大きな声を上げるリーゼさん。それはそうだろう、彼女にとっても俺達にとっても正に青天の霹靂なのだから。
~~~~~~~~~~
「リーゼ、お前は私には無いモノを持っている。あらゆる局面に於ける決断力と行動力、そして強運を。私はダヴィートら強硬派に抗う術を持ってはいなかったし、彼等に軟禁された時は自身の運のなさを嘆いたりもした。だがお前は私より強い心と運を持っている。そして何より全国民にも人気が高く人徳もある。だからお前に託したいのだ、我が国の行く末を」
驚きの声を上げるリーゼさんに、そして何より世界評議会の面々に、訥々と自身の想いを語って聞かせるベルンハルト元首。その顔は寂しそうでもあり、それで居て何処か吹っ切れた様な表情が見て取れる。
「お父様……」
そんな父親の姿に声を詰まらせるリーゼさん。一方そんな娘の様子に構わず言葉を続けるベルンハルト元首は
「なのでエウトネラ議長、そして今この場に居る方々も。どうかこのリーゼロッテの事を宜しく御願いしたい」
と俺達に向かって深く頭を下げる。
「頭を上げられよ、ベルンハルト元首」
エウトネラ長老の言葉に顔を上げるベルンハルト元首。
「貴殿の申し出、確かに聞き届けた。貴殿がそこまで決意しているのなら、私はこの件に何も言う事は無いな。ところで皆はどうだろうか? 何か異論があるヒトはいるかね?」
ベルンハルト元首に優しく諭すように声を掛けると、そのまま今度は俺達に尋ねて来るエウトネラ長老。エリンクス陛下やギヨーム皇帝らからは特に異論は出ず、皆んな一様に頷いていた。
かく言う俺は──良くわからんがとりあえず頷いておいたりする。
~~~~~~~~~~
「──だが出来る事なら今しばらくリーゼロッテ媛の後見として彼女を補佐して欲しいのだが、それは構わないだろうか? ベルンハルト元首?」
「それは勿論。私で良ければ一向に構いませんぞ、エウトネラ議長」
エウトネラ長老とベルンハルト元首の話はまだ続いている──と言うか、その傍ではリーゼさんがあまりの急展開に付いて行けずにワタワタしているんだが?
「あーっと、エウトネラ長老にベルンハルト元首? お2人ともリーゼさんの事を忘れてないか?」
仕方なく2人に諌言する俺。すると2人とも「う、うむ、そうであったな」と、リーゼさんの方を向き直り
「どうかなリーゼロッテ媛? この話、受けてはくれまいか? 無論君の事は我々世界評議会も全面的に支援させてもらう」
「私も。お前を出来うる限り後ろから補佐する。どうか元首を引き受けてもらえないだろうか?」
改めて彼女にツェツィーリア元首の座を継承して欲しいと、軽くではあるが頭を下げる。その様子に最初は戸惑いからワタワタしていたが、真剣な面持ちで自分に向かって頭を下げる2人を見て、目を閉じ深く数度呼吸をすると、そのまま瞑想をするかのように熟考するリーゼさん。やがて考えが纏まったらしく目を開けると
「……分かりました。私に何処まで出来るかわかりませんがツェツィーリアの元首、しっかり務めさせて頂きます」
決意のほどを口にする。
それは新たなるツェツィーリアの指導者が誕生した瞬間であった。
~~~~~~~~~~
「そうかそうか! 引き受けてくれるか! これは重畳ッ!」
「リーゼ、良くぞ決断してくれた! 父は嬉しく思うぞッ!」
リーゼさんの返答にエウトネラ長老とベルンハルト元首は喜びを口にし、他の世界評議会のメンバーも拍手をする事でリーゼさんを祝福を表す。もちろん俺もそのメンバーの中にいたりする。
「あっ、でもお受けするのにひとつだけ条件があります!」
喜びを形に表す俺達にそう言って釘を刺すリーゼさん。なんだ、一体?
「ふむ、何かね? その条件と言うのは? 余程の事でない限り、叶えられるとは思うが……」
「言ってごらん、リーゼ。どんな条件なのかな?」
そんな彼女に向かって居住まいを正して聞く姿勢をとるエウトネラ長老とベルンハルト元首──いや、もうリーゼさんに元首の座を譲ったのだからベルンハルト氏か。
俺がそんな事を考えているとリーゼさんが此方の方に視線を向けて来た──しかもやたら熱い視線を。その視線に何か猛烈に嫌な予感を感じる俺。
「こほん、えっと、その条件と言うのはですね……」
そう言いながら此方を何度もチラチラと見るリーゼさん。その様子にこの場に居たオルガは何かに気付いたらしく、額に手をやると頭を左右に振る。それに構わず、言葉を続けるリーゼさん。
「……その、わ、私とウィルさんの結婚をお許し下さいッ! それが私が元首を受け継ぐ条件ですッ!」
彼女の超爆裂魔法級の衝撃告白に、再度会議室は混沌に包まれたのである!
うぉい!? やっぱりかよッ?!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になりますのでご注意下さい!
それではお楽しみに!!




