とある日常の風景 ~普通では無い一日~
本日、第二十五話投稿します!
ウィル達のありふれた(?)1日を追いました。
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朝っぱらからギルドに向かう。
昨夜は『蒼眼の新月』で、昇級試験合格を何処からか聞きつけて来た女将のリネットさんに嫌と言う程飲まされて、お陰で俺は二日酔い気味だ── 。
アンはケロッとしているが。聞けばエルフ族は酒には強いのだそうだ──正直羨ましい。それにしても頭がガンガンする………… 。
「ウィル、大丈夫ですか?」
アンが心配そうに顔を覗き込む。キミはお酒に強いから良いよね…… 。
『──Detoxification(解毒)』
コーゼストがそう唱えると頭の痛みや吐き気が不意に収まった。おぉ! これは?!
『酒による所謂二日酔いとは一種の中毒症状ですから』
成程……確かに酒は酒毒とも言うからな。それにしてもまさか解毒魔法が効くとはな。何にせよ助かったぜぇ!
『それにしても──マスターは酒に対する耐性が低いのですね』
「うるせぇ! ほっとけッ!」
前言撤回! 折角感謝したのが台無しだ!
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途中で『黄金の夢』で朝食を摂ってからギルドに入った。ギルドではルピィが待ち構えていて、すぐさま水晶地図板追跡盤の所まで連れていかれた。そこでは水晶地図板を持ったギルマスが今や遅しと待っていたのだ。
「良く来てくれたなウィル、アン、そしてコーゼスト殿」
ギルマス、あんたは何時から待っていたんだ?
「早速だが、これが今の所、最深部まで潜った冒険者の物だ」
俺の疑問など差し置いて手にした水晶地図板を差し出すギルマス。ずいぶんとコーゼストに期待しているんだな?
『では早速追跡盤の情報更新を行います。ウィル、右手に水晶地図板を持って追跡盤に左手で触れてください』
「うん? こうか?」
俺はギルマスから水晶地図板を受け取り、コーゼストに言われた通りにした。すると水晶地図板と追跡盤両方に魔法陣が浮かび上がり目まぐるしく魔法文字が書き換えられて行く! やがてそれが収まると──
『──終了しました』
コーゼストからそう終了を告げられた。大体10分ぐらいだったか? ギルマスが呆気に取られているが本当に作業が早かったな! 部屋の隅でルピィとアンが、ファウストとデュークをモフりまくっていたのだが「もう終わりなんですか?」みたいにこちらを見ている。
ファウストは兎に角、デュークはどうやってモフっていたんだ?
「こ、コーゼスト殿。これでもう使えるのか?」
『はい。現在達している最深部までの各階層の地図と距離と方角を現在の標準に合わせて表記される様に調整しました。また任意の水晶地図板の位置も選択表示出来ます』
そう言ってギルマスに操作方法を簡単に説明するコーゼスト。何でも追跡盤に水晶地図板毎に付いている符号を書き込むと選択出来るのだそうだ。
確かに水晶地図板には裏に0から9の数字を使った6桁の番号が書いてあるがこれが符号なのか。えーっと、すると組み合わせは──
『100万通りになります』
しれっとコーゼストが念話で宣う。わざわざ教えてくれてありがとな!!
何はともあれコレでギルマスとの約束は果たされた。この後は修練場を借りてデュークの技能の確認をするとしよう。
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ギルド裏にある修練場に来た。ギルマスに借りたい旨を話したら「Aクラス以上は自由に使って良い」のだそうだ。「魔王の庭」第五階層で遭遇以来ずっとデュークはちっこいままでアンの抱き人形と化していたので改めて本来の強さを確認出来る訳だが……さて、始めるか………… 。
「よし……デューク!」
俺の声と共にデュークが光に包まれる。
『──虚数変換。デューク顕現化します』
光が見る間に膨れ上がる──と、あっという間に城壁ほどになり、やがて光が収まると身の丈3メルトも有る白銀に輝く巨体が現れた──えっ? これって金剛石じゃないか?!
「……なぁ、コーゼスト。俺にはデュークが金剛石に見えるンだが?」
俺は恐る恐るコーゼストに確認を求める──まさかそんな事は無いよな?
『その通り、ダイアモンド・ゴーレムですね』
だが俺の期待に反して平然と答えるコーゼスト。
「いやいやいや! デュークは蒼玉ゴーレムじゃ無かったっけ?!」
『マスターと共生化をした結果、進化した模様です』
そう軽く宣うコーゼスト先生。そんなあっさりと進化して良いのか?! いや、ファウストも強くなっていたけど!?
「へぇー、あの時戦った時より強くなっているんですねぇ」
アンは素直に喜んでいるみたいである。そう言えばアンは俺やファウスト達の強さには素直に喜びを表すなぁ──エルフ族特有のモノなのか?
『何か不都合な点でもありますか?』
コーゼストは平然と言い放つ。いや、強くなった分には不都合とか無いけど………… 。
「……兎に角デュークの技能の確認をするか……はァ」
色々諦めて本来の目的に戻って確認すると……先ず元々持っていた配下召喚と再生と剛力はそのままで、城壁と言う鉄壁の上位互換技能と金属化と言う対象とした鉱物を文字通り金属化する技能を新たに会得していた。
城壁はアンも会得した防御系魔法と同質のものらしく、召喚した配下ゴーレムにも使用出来、再生と剛力も配下ゴーレムも使えるのである。
因みにデュークが召喚出来るゴーレムは星銀ゴーレムに進化していて、デュークと同じ大きさなら最大6体まで召喚出来る様になっていた。正直3メルトもの巨体が6体も並んだ様は正に城壁の様相であった。
デューク達の攻撃手段として岩槍を金属化で強化した金属槍を放てる様になっていた。これではまるで攻防一体の要塞みたいである。
流石にコレは人に見られなくて良かったと思う─── 。
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デュークの力をひと通り確認してギルドの出た。勿論デュークにはまた縮んで貰ったが。ギルドの隣に併設されている酒場で軽く昼食を摂り、約束通りドゥイリオの待つガドフリー武具店に向かう。建付けが悪い扉を開けて店内に入り、下げてあるノッカーを叩くと奥からドゥイリオが姿を表した。
「おぅ、待ってたぜ」
ドゥイリオがにこやかに出迎えの言葉を告げる。
「約束通り、受け取りに来た。宜しく頼む」
「昨日試着したからな、調整はバッチリだ。とりあえず二人共自分のを装備してみてくれ。最後の微調整をするからな」
俺達はドゥイリオに言われるまま昨日購入した武具を身に付ける。胴鎧や篭手の当たり具合や剣の握り具合等の違和感をその場で馴染む様に調整して貰い、そのまま装備する事にする。すると──
「ウィルよ、こんな時にだが……いや、こんな時だからこそ頼みがある。お前達が使っていた付与付き装備を俺に売ってくれないか?」
ドゥイリオが真面目な面持ちでそう持ち掛けて来た。まぁ無限収納に仕舞いこんでしまうだけだし勿体無いと言えば勿体無いんだが………… 。
『別に構わないと思います。アレらには、大した付与はされていませんし』
コーゼストが念話で俺の決断を後押ししてくれた。よし── 。
「──わかった、売るよ」
俺がそう告げるとドゥイリオは本当に嬉しそうに顔を綻ばせ「そうかそうか! なら早速金を用意するからな!」と奥に引っ込み、再び戻って来た時には手に皮袋を下げて来た。
「それじゃあ買い取りの代金だ。受け取ってくれ」
そのまま皮袋を差し出すドゥイリオ。俺はそれを受け取り断って袋の口を開けて確認させて貰うと……袋の中から金貨15枚が出てきた──えっ? こんなにか?!
「これは……貰い過ぎじゃないのか?」
「いや、これで妥当だと思うが? そもそも魔法付与されているのは筋力強化と敏捷強化の2つなんだろう? 普通は魔法付与はせいぜい筋力強化か敏捷強化のどちらかしか付与出来ないし出来なかった。だから2つもの魔法が付与されているその武具を研究させて欲しい。出来れば俺自らで打ち直ししたいしな」
成程、要は研究材料としての価値か……なら妥当なのかな? と俺は納得した。
「わかった。それじゃあ有難く受け取らせて貰うよ」
「おぅ、そうしてくれ!」
俺達はホクホク顔のドゥイリオに見送られてガドフリー武具店を後にした。
さて、明日はのんびり過ごすかな………… 。
ありふれた、そして決して普通では無いウィル達の一日を描きました! 確か、暫くのんびりすると言っていた筈……(汗)
そしてデュークの技能もハッキリしました!コイツも大概チートでございます(汗)
*配下召喚……デュークの固有 技能。自身より数ランク下のゴーレムを召喚出来る。
*再生……デュークの固有 技能。真核さえ無事なら周りの鉱物を取り込み何度でも再生する。
*剛力……ゴーレム全般の技能。文字通り剛力を発揮する。
*城壁……デュークの固有 技能。自身を含む召喚したゴーレムの防御力を底上げして文字通り城壁と化す。
*金属化……自身が身に付けた、若しくは触れた鉱物を純度の高い金属に変換する土属性魔法。
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