狷介なる者
本日第二十四話投稿します!
長い一日も漸く終わります! 今回は新キャラ・ドゥイリオ中心の話です。
職人気質を描くのは至難の業です(汗)
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「………成程、イヴァンの紹介か……」
目の前の髭面の小男がそう呟いた。ガドフリー武具店の店主ドゥイリオ、その人である。
しかし……初めて半侏儒を見たが本当に小柄な男性にしか見えない。だが凄い髭と上腕部だよな──特にあの腕の太さと言ったらアンの腰よりあるんじゃないのか?!
「ん?何だ、ハーフドワーフを見るのは初めてか?」
ドゥイリオは自分の髭を撫で付けながら不機嫌そうな声色で問い掛けて来た──おっと、じっと見過ぎたか─── 。
「あ……いや、すまん」
「まぁ、当然だわな……何、怒っている訳じゃ無い……これが地でな」
ドゥイリオの声色から不機嫌さが消えた。
「来る奴来る奴、皆同じ様な顔をして見られるのに少し辟易していてな……謝るのは俺の方だ。それで必要なのは防具か?武器か?」
「色々と見させて貰わないと何とも言えないが……出来れば両方揃えたい」
「ふん……それじゃあ聞かせて貰えるか? 剣は良く切れるのが一番か、折れぬのが一番か、どっちを選ぶ?」
「………………切れなければ剣じゃ無い……だが戦闘中にすぐ折れてしまうのも剣じゃ無い。もし求められるなら先ず折れず、そして切れる剣を求めたい。だが、両立出来ないならば折れぬ剣だな」
俺は少し考えてからそう答えると、ドゥイリオはニヤリと笑い「合格だ」と機嫌良さげに話す。どうやら俺は彼が満足いく答えを答えられたみたいである。
「その若さで必要な事を知る……それは一番の長生きの秘訣だ」
ドゥイリオがぽつりと呟く。
「俺はな、俺が手渡す武具は人を長生きさせる為だと思っている。死に急ぐ奴には売る気はこれっぽっちも無い。冒険者も騎士も死と隣合わせだが最後に勝つのは生き残った奴だからな。それに──」
ドゥイリオはそこまで言うとペチッと額に手を当てて
「おっと悪いな。彼此200年も生きているとついつい愚痴っぽくなっていかん」
少し自嘲気味に苦笑いを浮かべながら頭を搔く。
「それで……俺達には武具を売ってくれるのか?」
「おぅよ! お前達なら長生きしそうだ。この俺が良く見繕ってやる!」
ガハハと大声で笑いながら背中をバンバン叩いてくる。そんな力で叩くな! 背中に手形が付いたんじゃないのか?!
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「それじゃ、先ずどっちが何を選ぶんだ?」
そうだな……今回は俺も武具一式揃えてみるのも良いか……先ずは………… 。
「なら、まずは彼女の装備から頼む。胸当てと篭手と脛当、篭手は左腕のみで右手は弓を射る為の専用手袋を頼む。あとは迷宮内で取り回しが良いコンパクトな弓も有れば頼みたい」
「……長距離の後方支援装備か。すると剣はあくまで自衛用になるのか? それに頭を守る防具は必要だぞ?」
「もしエルフに使えるのが有るなら頭のも頼む。今下げている細剣は一応魔法付与されているんだが……良いのが有ればそちらも頼む」
ドゥイリオの指摘にそう答える。すると「その辺もちゃんと見繕ってやるよ」との返事が返って来た。
まぁそこはその道の専門に任せよう。
「それじゃあ………すまん、まだアンタらの名前を聞いて無かったな」
ドゥイリオが気まずそうに聞いて来た。俺もついうっかりしていた………… 。
「ウィルフレド・ハーヴィーだ──ウィルで良い。彼女はアンヘリカ・アルヴォデュモンド──アンと呼んでくれればいい。二人共に今日の朝にAクラスに昇級したばかりなんだ」
「わかった。それじゃあウィルフレド、お前さんの装備はどうするんだ──と言っても、その胴鎧も篭手も脛当ても魔法付与されている代物なんだろう?」
ドゥイリオは意地悪っぽい顔で俺に問う。アンの細剣の事を言った時点で気付くか……… 。
「これらもアンの細剣も俺が迷宮の隠し部屋で見つけた物なんだが……あんたが勧める武具の方が優れているなら買い換えるつもりだ」
「………その装備のお陰でAクラスにまで上がれたんじゃないのか。俺は買ってもらえるなら構わんが前のはどうするんだ?」
「だが同じ使いこなせるなら、より優れた物を選ぶべきだろ? それに今の装備はまた仕舞いこんでおくさ──元々400年前の代物だし、打ち直せる職人が居れば別だけどな」
それにコーゼストやファウスト達が居るしな。
「……成程、な」
何か一人で納得しているみたいだが………… 。
「兎に角、ウィルフレドも武具一式揃えると言う事で良いんだな?」
俺は首肯し要望を告げる。胴鎧・前当て・草摺・篭手・肘当て・肩甲・脛当ての一式と新しい盾と両持剣を見繕って貰う。
ドゥイリオに頼む一方でコーゼストに念話で武具をまた見定めて貰う様に話しておく。
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「よし、それじゃ2人共こっちに来てくれ」
そう言ったドゥイリオに奥に案内されると、意外にも広くなっており様々な武具が陳列されていた。外観のみならず入り口付近のも偽装なのか………… 。
その中から手早くドゥイリオは武具を見繕って来た。最初のは勿論アンのである。胸当てはやや大きめで寧ろ胴鎧に近く、左腕の篭手と右手の専用手袋と両脚の脛当てに、新たに頭を守る小冠みたいな防具と右肩に装備する小振りの肩甲だ。小冠はダイアデムと呼ばれる防具なのだそうだ──全ての材質はダマスカス鋼の薄い板を星銀で鍍金したドゥイリオのオリジナルらしい。
弓は今までより小振りなコンパウンドボウでリムは折り畳み式、新型のカム機構で弦の引きが少なくても威力はかなり有るのだそうだ。
コーゼストに似たような武具を視て貰ったがドゥイリオが揃えた物が一番性能が高いのだそうだ。
そのまま俺の装備を見繕って貰う。胴鎧・前当て・草摺・両腕の篭手・右肘の肘当て・両肩の肩甲・両脚の脛当てはアンのと同じ素材製でかなり軽く出来ている。しかも各部位にはリッパーバイソンの革が噛ませてあって音が驚く程小さいのだ。こちらもコーゼストが確認済である。
引き続き俺とアンの剣が見繕われたが──アンの細剣は兎も角、俺は両持剣ではなく長剣を勧められた。迷宮内での取り回しが良いのとどうやらお勧めのが有るらしい。俺としてはいざと言う時に盾にも使えるバスターソードが欲しかったのだが、ここはドゥイリオに素直に従うとするか……… 。
細剣は全長85セルト身幅2.5セルトの刺突と斬撃両方に使える様になっておりダマスカス鋼の刃で鋒に星銀が使われている逸品だった。一方俺が勧められたのは見た目は普通のロングソードと同じく全長90セルト身幅6セルトだったのだが刃の材質が特殊らしいのだ。何でも刃に硬いダマスカス鋼を使い、それを柔らかめ鋼で挟んで鍛えられた剣なのだそうだ。
この製法は東方諸国に伝えられている技術らしい。ドゥイリオはかなり研究したらしく、このロングソードは一応の完成形なのだそうだ。俺が少し躊躇すると「使われない剣など唯の飾りにもならんからな」と笑い飛ばしていたので有難く使わせて貰う事にした。
盾は今まで使っていたカイトシールドよりやや大きめなヒーターシールドが渡された。これもロングソードと同じ材質が使われていて盾の芯にはダマスカス鋼が外側を鋼が使われた品だった。
ひと通り見繕って貰い、更にコーゼストに高評価を受けた俺とアンの武具一式の金額だが──アンの装備一式で金貨3枚と銀貨7枚、俺の装備一式で金貨5枚と銀貨6枚、合わせて金貨9枚と銀貨3枚なのだがドゥイリオがかなり負けてくれたので金貨7枚と銀貨5枚で支払いは済んだ。
防具は全て試着し剣も自身の手に取って僅かな違和感を伝えた。それらの調整で受け取りは翌日になり俺達は明日再び来店する旨をドゥイリオに伝えガドフリー武具店を後に宿屋に戻った。
明日が楽しみである───── 。
狷介とは頑固とか一徹と言う意味です。ドゥイリオは正に狷介な職人気質に溢れる親父さんであります。
そしてその腕と匠の眼は間違いありません。
今回もコーゼストとファウスト達の存在が空気(笑)
*ドゥイリオ……半侏儒。年齢200歳だが見た目ムキムキの小柄な親父。身長151セルト。石盤色の髪と長い髭を持つガドフリー武具店の店主。
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