初めての魔法 ~火と風と~
本日、第二十三話投稿します!
ウィルもアンも(かなり)パワーアップしますが……ここまで未だ半日、長い一日です(汗)
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「つきました!」
指先に灯る小さな火を見てアンがはしゃぐ。今まで使えなかったんだから仕方ないが──大したモノである。
「これでアンはどの位の魔法を使いこなせる様になったんだ?」
『今使用したのはIgnitionですがFlame explosion──「炎爆」迄使用可能かと』
「……因みにもう1つの属性結晶は確か土属性だったよな? そっちはどうよ……?」
『デュークの能力の恩恵を有効に使用する為の物ですが──アンが慣れればRampart──「城壁」も使いこなせると思います』
……元々アンは風・木・水の三属性だったのだが、これで火と土属性が加わり五属性使いか…… 。
確か王国の現宮廷魔法士が五属性使いだった筈でアンの実力はそれに匹敵すると言う事で……これは知られたら確実にトラブルに巻き込まれる!
「ウィル、どうかしましたか?」
ふと気付くと、アンが心配そうな面持ちで俺の顔を覗き込んでいた。
「あ……いやな、実は──」
俺は懸念をアンに正直に話した。すると彼女は俺の懸念は大した事じゃないみたいに微笑んだ。
「ウィルの懸念は尤もだと思いますが……そもそも私は森精霊族です。森精霊族には私と同じく五属性を使える人は何人か居ますし、一族の長の貴森精霊様は全属性を使いこなされるんですよ」
……何気にエルフ族って半端ないな! 皆んなパーティメンバーに欲しがる訳もわかる。俺はひとり納得するのだった。
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「ところでウィルの属性装備は確認しないんですか?」
アンが小首を傾げて問い掛ける。おっと、すっかり忘れていた。
『では引き続きマスターの装備について説明致します』
相変わらずコーゼストは淡々としている──まァ良いけどな!
『垂飾の機能はアンに準じていますが、マスターは未だ魔力操作も出来ませんのでそこから覚えていただきます。その為には最初に属性装備の額当を使いこなす事から始めたいと思います』
「それはどうやるんだ、ってかそもそも俺が使いこなせるシロモノなのか?」
『御安心ください。最初は私も補助します。それに先程 超振動短剣使用時に感じたあの感覚を思い出していただければ間違い無い筈です』
チラッと視線をずらすとラファエルの額に濡らしたタオルをノーリーンが充てがうのが目に映る。俗に言う知恵熱でも出したのか? 俺も頑張ったらああなったりしてな…… 視線を戻すとアンが期待を込めた目で見つめているのと目が合った。
「……はァ、それじゃあどうやるんだ?」
『先ずアンと同じ様に額当の属性結晶に意識を集中してください。意識して自身の内側に有る魔力を流す様に。先程の感覚を思い出してください』
──さっきの感覚ならまだ覚えている。俺はコーゼストに言われる通り目を閉じ額に意識を集中する。すると先程より明確に自分の中に有る何かを感じる事が出来た。恐らくこれが魔力なのか──?
それを意識出来た瞬間、額に何かが集まる感じがしてコーゼストが次の指示を出す。
『──では私に続いて詠唱してください。『疾き風よ加護を。迅風増強』』
声を出すと集中が途切れそうなので、黙って頷くとコーゼストの言った言霊を詠唱する。
「──疾き風よ加護を。迅風増強」
フッと身体が軽くなる感覚とまた力が抜ける感覚がして俺は閉じていた瞼を開けると──何となく視界が翠色に感じる。何だ? 自分の手を視ると薄ら翠色に輝いている! えっと、これは?
『上手く起動しましたね。これは迅風増強と言う身体強化魔法です。マスターには今後ダンジョンに潜っている間はこの状態を維持していただきます』
「つまりこれを纏って行動しろと?」
『持続する事により魔力操作と魔力増大の両方を強化するのが目的です。「続ける事は成功の父」とも言いますしね』
コーゼスト先生はそう宣う。俺も魔法が使える様になるなら異存は無い。
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俺は集中を解いて魔法を解除するとアンの方に向き直る。アンはキラキラした瞳で俺を見つめていた……何か前にもこんなのあったよな?
そのままラファエル達に向き直るとラファエルは相変わらず、ぐったりとソファに腰掛けたまま額に濡れタオルを充てていた。まだ復活出来ないのか?
「ウィルフレド様、我が主人がこのような様で申し訳ございません」
ノーリーンが深々と頭を下げる。とりあえず用事は済んだので帰ろうと思ったのだが……これは放置していても大丈夫なのか?
俺の逡巡を見透かしたみたいにノーリーンは「旦那様の事はお気になさらずに」と言ってくれた。そして契約書通りに今日の分の金貨一枚と更に二枚、合わせて金貨三枚を渡してくれたのだ。何でもコーゼストがラファエルに渡した情報の分なのだそうだ。それを有難く受け取りそのままラファエル側に支払った。
「それじゃあ、俺達はそろそろ帰るが……」
すると、今までソファでぐったりしていたラファエルがガバッと起き上がり「是非とも! また! 近々来てくれたまえ!!」と叫び、立ちくらみを起こしたらしく再びヘナヘナと座り込んでしまった。ノーリーンが「……全く、凝りませんね………」とブツブツ呟いていたが──本当に自分が正直な奴である。
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とりあえずラファエルの屋敷を辞して西区に向かった。デュークの技能の確認は明日ギルドの訓練場を借りて確認するとして折角なので装備を一新しようと思ったのだ──主にアンのであるが──── 。
俺のは隠し部屋で見つけたので賄えるしな。本当ならリットン商会に行こうとしたのだが今回は西区に数ある武器屋や防具屋を覗く事にした──主にコーゼストの主張で。その前に遅い昼食を摂る事にしよう。
「ほれ、ブラッドブルのステーキ定食二人分お待たせ……」
イヴァンの親父さんが熱々のステーキが載った鉄皿二枚と黒パンの入った籠を器用に持って来てテーブルに並べていく。後から従業員のポリーが野菜スープの皿を持って来て同じく並べる。
「ファウストにはブラッドブルの生肉な」
しっかりとファウストにも生肉の載った皿を提供してくれる。流石は大衆食堂『黄金の夢』、サービスが良い!
「よし、んじゃ早速いただきますか」
俺達はカチャカチャと食事を始める。相変わらず親父さんの料理は美味いな。
俺達は食事をしながらイヴァンの親父さんと昼前に有った事など色んな話をしていた。
「防具や武器を新しくし直すってか?」
何気なく言った一言に親父さんが反応した。
「あぁ、無事Aクラスにも成れたし、アンのお祝いを兼ねてと思ってね」
「そうかそうか。そう言う相棒への気遣いは大切だよな……なぁアンちゃん?」
「は、はい! そ、そうですね! ポッ♡」
アンさん、そんなにデレデレしないでくださいね? 何か気恥しいです!
「それなら、俺のお勧めの武具屋が有るんだが……どうだ?」
良くよく話を聴くと──親父さんお勧めの店は武器と防具両方を取り扱う数少ない武具屋で、昔親父さんが現役だった頃に良く世話になった場所なのだそうだ。
その頃から店で取り扱う武具は店主の半侏儒が厳しく品定めした逸品揃いらしく、また店主自らが鍛え上げた武器や防具も割合格安で販売されているのだそうだ──中々の穴場である。
「それで、その武具屋って何処にあるんだ?」
「おぅ、店の場所はな───」
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『黄金の夢』で食事を済ませてイヴァンの親父さんが勧める武具屋に向かう事にする。ここは南区の西の端なのだが西区の北の端でギルドの裏から道なりに進むと行けるのだそうだ。
そしてイヴァンの親父さんから聞いた通りに歩いて来て目的の店の前までやって来たのだが──── 。
先ず外観が一言で言うとボロボロである。本当にこれで店をやっているのか心配になるレベルである。デュークを抱いたアンも不安そうだ。傾いた看板の掠れた文字を詠み辛うじて「ガドフリー武具店」と書かれているのを確認した。間違い無い、親父さんから聞いた名前である。
意を決して扉のノブに手を掛けて引き開ける──と、建付けが悪い扉らしく軋みながら開き俺達は店の中に入った。すると外観とは違って店内はやたら小綺麗にされていて様々な防具や剣や槍等の武器が整然と陳列されていた。これは初見客は知らないとスルーするな…… 。
俺達は半ば茫然としていたが気を取り直して扉の内側にあるノッカーを叩いて来客を告げた。
やがて店の奥からヒトの大人としては小柄な、ドワーフとしてはやや大柄な店主と思しき男性が現れた。
「………何だ。久々に客か?」
「あんたが、ガドフリー武具店の店主か?」
「おぅよ、ここは俺の店だ。そして俺が店主の──ドゥイリオだ」
これが店主──ドゥイリオとの初めての、そして先の長い付き合いの始まりであった。
ウィルもアンも人生初の魔法で浮かれ気味です。特にウィルは魔法の適正が皆無だったのに……それもこれもコーゼストの所為(笑)
*イヴァン……60歳。男。元Aクラス冒険者。引退後、大衆食堂『黄金の夢』を開く。現役冒険者達の良き相談相手。
*ポリー……14歳。女。『黄金の夢』の従業員。
*Ignition……小さな火を灯す、ただの点火魔法。火属性魔法。
*Flame explosion……標的を中心に激しい炎の渦を伴う爆発現象を広範囲に巻き起こす爆裂魔法。火属性魔法。
*Rampart……術者の任意の方角に巨大な石壁を形成する魔法。石壁は魔法強化されている。土属性魔法。
*迅風増強─Gale Enhances……身体の周りに薄い風の膜を纏い、主に身体反応速度と敏捷性を強化する魔法。風属性魔法。
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