属性装備
本日第二十二話投稿します!
コーゼスト先生の工作教室をどうぞ!(笑)
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澄んだ音を立てて魔水晶を切断した超振動短剣は台にしていたテーブルの分厚い天板の隅を切断してしまった。おいおい、これは何処まで切れるんだ?! と言うかコレってテーブル弁償モノなのでは?!
『──理論上はどの様な物質も切断出来るのですが──実際は刃の構造材の強度に左右されて実用化されませんでした。唯一完成出来たのはこの短剣サイズです』
俺の慌てぶりなどお構い無いにコーゼストが自慢げに説明をする。お前も少しは損害を気にしろよ?! だがまァ、こんなのが400年前に武器として使用されていたら、それこそ本当に大騒ぎだっただろうしな……尤もここに大騒ぎする奴が若干1名居るんだが…………
「こ、こ、こ、」
……ほらな、ラファエルの様子がおかしい。
「これはッ! 何と言う素晴らしい魔道具なのだッ!! この様な魔道具が400年前に既に完成されていたとはッ!? 魔具製作者としては是非とも調べさせていただき再現したい物であるッ!!!」
その後ろに控えているノーリーンは右手を額に当てながら首を左右に振っていた。ある意味本当に自身の欲望に素直過ぎる奴である。と言うか、コイツは武器であって魔道具とは少し、いやかなり違うんだが?
とりあえず暴走しているラファエルは放っておいて、こちらの作業に集中しないとな…… 。
「…………兎に角、物凄い切れ味なのはわかった。それで魔水晶をどのくらいの大きさにすれば良いんだ?」
『大体親指程の大きさのを4つお願いします。超振動短剣をあまり長時間駆動させると刃の材質が持ちませんので』
俺は下のテーブルに注意しながら魔水晶をコーゼストの求める大きさに手早く切り出し楕円形に形を整えた。
しかし、何だかこの短剣を使っていると力が少しずつ抜かれている感覚が有るんだが…… 。
『その感覚が魔力を使っていると言う事に他なりません──魔力操作解除。主導権をマスターに返還』
不意に何かが抜けていく感覚が無くなり、同時に超振動短剣が発光を止める。成程、俺から魔力が供給されなくなったので止まったのか。そしてこの感覚が魔力を使う感覚か──等と色々と感慨に浸っていると
『次の作業に移行します』
コーゼストは相変わらず鷹揚である。やれやれ── 。
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「はぁ、んじゃ、次の作業って何するんだ?」
『切出した魔水晶に魔法術式を書込みをします。マスター、魔水晶を左手の掌を開いたまま載せてください』
「……えっと、これで良いのか?」
俺は左手の掌を開き魔水晶を載せ軽く突き出す様にした。
『それで結構です──Magic operation(魔法術式起動)』
コーゼストの声と共に俺の掌の上に魔法陣が浮かび上がる!
『Magic search(魔法術式検索)──Construction of proper operative method(適正術式構築)──』
コーゼストの言葉に合わせ、刻々と魔法陣に浮かぶ魔法文字が入れ替わり組み合わさっていく様が見える。俺達はそれをただ眺めていた。誰かが息を呑む音が聞こえる。
『Construction method completion(術式構築完了)──Start writing(書込み開始)』
魔法陣から組み合わされた魔法文字が魔水晶に次々と入っていく! すると淡い銀色の輝きを放っていた魔水晶の色が赤く染まっていく! やがて全ての文字が魔水晶に吸い込まれると──
『──Check of operative writing(術式書込み確認)──Activation simulation(起動シュミレーション確認)───Complete confirmation(確認完了)──全工程完了致しました』
コーゼストが宣言する──ここまで三分程しか経っていないのだが? アンとノーリーンはうっとりとした顔付きで「綺麗でした……」と言っているし、ラファエルに至っては完全に固まっている。まぁ静かなら良いけどな!
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そのまま残り三つも同じ作業を施し紅玉の様に紅い魔水晶2つと琥珀の様な茶色の魔水晶と翠玉みたいな緑鮮やかな魔水晶が出来上がったのだ。この加工し終えた魔水晶は属性結晶と言うらしい。しかし……ここまで僅か作業時間15分……速過ぎないか?
『では、完成した属性結晶を胸飾か垂飾にすれば完成です。何方かに御願い出来ませんか?』
「──それならば私が加工を引き受けようではないか」
いつの間にか再起動していたラファエルがそう提案して来た──しかしお前に頼んで本当に大丈夫なのか?
『ではラファエル殿が加工を引き受けてくださるならば、私が対価をお支払い致します。超振動短剣の製造方法では如何でしょうか?』
「!?!」
おい! それは流石に不味くないか?! コーゼストの台詞を聞いて、ラファエルが目をひん剥いてまた固まった。
『大丈夫です。今の魔法工学では術式は理解出来ても刃の構造材の創成は出来ません』
コーゼストが念話でしれっと宣う──相変わらず黒いな、お前は?!!
「ほ、ほ、本当であるか……?」
『如何でしょうか?』
一も二もなく高速で首を縦に振るラファエル。何だかコーゼストはラファエルの扱いが上手くなった気がする……うむむ………… 。
『では取引成立ですね。時間が限られているので先に加工を御願い致します』
「うむ! 任せ給え!! デザイン等も自在だがどの様にするかね?」
『ここは使用者に尋ねるのが一番ですね。アン、どの様なデザインが宜しいでしょうか?』
「は、はい!」
アンには紅と茶色の魔水晶を使わせるみたいである。因みに紅いのは火属性、茶色のは土属性の属性結晶なのだそうだ。
ラファエルはアンから好みのデザインを聞き出しそれに見合った台座を加工して二つの属性水晶を垂飾と胸飾にしていく。あれ? そうするとあと2つの属性水晶は誰が使うんだ?
そんな事を考えていたらコーゼストはラファエルに頼んで適当なペンダントトップと額当にそれぞれ紅い属性結晶と翠の属性結晶を嵌めさせていた。それにしても流石はラファエル、良い仕事をするな。流れる様な作業で瞬く間に四つの属性結晶を様々な台座に嵌め込んだ手腕は大した物である。
「──これでどうであるかな?」
『ラファエル様、有難う御座いました。では早速ですが私に触れてください。約束通り超振動短剣の製造方法を直接お伝え致します』
「うむ! そうであるか! ──これで良いのかな?」
ラファエルは俺の左腕の腕輪に右手で触れた。
『──では情報を送ります──・・──・──』
瞬間──ラファエルがビクッと跳ね、そのままフラフラとソファに倒れ込む様に座り込んでしまった。
「コーゼスト、何をしたんだ?」
『約束通り、製造方法を直接脳内に送り込みました。あまりの情報の量で多分脳内で処理が追い付かないのでしょう』
俺の質問にサラッと軽く答えるコーゼスト。いやいや、ヒトの頭ん中にそんなもん送り込んでどうするよ?!
「そんな事して……ラファエルは大丈夫なんだろうな?」
『ヒトが処理出来るギリギリなので大丈夫です──多分』
何か今、とても怖い事を聞いた気がするが…………
「気に病む事など御座いません。これで旦那様の性格が少し改善されると思われますので」
ノーリーンもこう言ってるし、ラファエルは放置だな! うん!
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そして手元には紅と緑の属性結晶が。
「それで……この残り二つは一体誰の分……と言っても俺しか居ないか………」
『ご明察通りです。それはマスター・ウィルの分です』
やっぱりか?! 額当は兎に角、垂飾かぁ……はぁ。見るとアンは完成したての垂飾を認識札を通してある鎖に一緒に提げて胸飾は左胸に飾っていた。
とりあえず俺も認識札と一緒に垂飾を提げて額当を額に充てがい後ろ手できっちり縛った。
「うん! 良く似合っていますよ、ウィル♡」
「お、おぅ……」
アンさんからは満面の笑みで高評価をいただいた。
『お二人共、装備出来ましたね。それでは説明に移りたいと思います』
コーゼストは淡々としている……お前、少しぐらいお世辞が言えないのか?
『先程も話しましたが属性装備は自分が苦手な属性魔法の恩恵を受ける為の装備です──アン、魔力を垂飾に集める様に意識してください』
アンは眼を閉じ意識を集中する──と垂飾に嵌め込んである紅い属性結晶が仄かに輝き始めた!
『では唱えてください。小さな火なので安心してください──『火を我に』』
「──火を我に」
アンが右手を翳してそう唱えると──翳した手の指先に小さな火が揺らめき立ったのだ。
今回は魔具制作がメインの話でした。
僅か半日程の話が長引いておりますが次回で纏めます(汗)。もう少しお待ちくださいませ!
*属性結晶……魔水晶に魔法式を封入し属性を持たせた状態を指す。
*属性装備……装着者の苦手な属性魔法を(無理矢理)使える様にする、若しくは得意な属性を更に強化も出来る所謂チート装備。
宜しかったら評価をお願いします。




