琥珀と白と虹色と結びと
本日は本編通算200話目を投稿します!
エリナの両親とも何とか打ち解け、色んな話に花が咲くウィル達の様子から始まります!
-200-
そんなこんなでダン・セルウィン騎士爵──いやもう男爵か──の屋敷で、時間が経つのも忘れて色々と話し込んでいる俺達。まぁ彼の娘であるエリナベル・セルウィンとの婚約報告の為にシグヌム市に行く予定を変えて、彼女の実家があるワクト市に立ち寄ったのだが、何とか無事に婚約報告も出来て本当に色々と盛り上がっていたのである。
「──と言う感じに、最後は御主人様が私の胸に長剣を突き立ててトドメをさしたのよ! 流石は私の御主人様だけあって強かったわぁーッ」
セルウィン卿、いやお義父さん達の前で身振り手振りを混じえて俺との死闘を何故か自慢気に話すヤトさん。キミは何をそんなに自慢気に語っているんだ?!
ソレ、キミガタオサレタオハナシダヨネ?
「うむむむ、それは凄いッ! 成程、そうしてヤトはウィルの従魔になったのか?!」
だがお義父さんはお義父さんですっかりヤトの話に引き込まれたらしく、興奮した面持ちでヤトの話に何の疑問も持たずに尋ねたりしている。その辺はお義父さんもやはり男だけあって、こうした冒険譚は好きみたいである。
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そんなお義父さんとヤトの会話をエマ夫人、いやお義母さんやエリナ、アンとルアンジェなんかも何とも言えない顔で見ているし。特にアンとルアンジェはイーヴィリアードだった時のヤトと激戦を繰り広げた当事者だしな。そう言う顔にもなるわなぁー。
「そうなのよ! 私は御主人様のそうした強さと優しさに惚れて従魔になったのよ!」
そう言って見事な双丘の胸を張るヤトさん。何をそんなに威張っているんだか。
「ヤトの場合はただ単にデレているだけかと。しかもかなりのデレデレですね」
「うぉいッ?! 言い方ァ!?」
そんな様子を見て、見たまんまを口にするコーゼスト先生と、それに突っ込みを入れる俺。
だがコーゼスト、君は当事者も当事者、ヤトが従魔になる切っ掛けを作った張本人なのを忘れちゃいないだろうな?
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その時── 。
「申し訳御座いませんが旦那様」
お義父さんの後ろに控えていた侍女のイネスがそう言葉を発する。
「そろそろお昼時となりますが、此方に皆様のお食事を運びましょうか?」
「ああ、もうそんな時間か。うん、此方に運んで貰おうか」
「わかりました、では」
お義父さんの指示を受け、もう1人のメイドのニコルと応接間を出て行くイネス。聞けば屋敷には専属の料理人が居て、既に料理は出来ている筈だとの事だった。
「良しッ、手の空いているヒトはイネス達に付いて行って料理を運ぶのを手伝ってやってくれ」
俺の掛け声に氏族のベルタらが椅子から腰を上げる。男爵に正式に陞爵すればそれなりに使用人の人数も増えるだろうが、それはまだ少し先の話であり、俺達とお義父さん夫妻合わせて17人分もの料理を、メイドが2人しかいない今の体制で運ぶのは流石に大変だと判断したのである。
「いやいや、ウィル達はお客様なんだから、そこまでしなくても……」
お義父さんは困った様な、申し訳ない様な顔をするが、俺はこれが冒険者の流儀だからと言う事で納得してもらった。
「よぉし! 私も料理を運ばなきゃ! 御主人様、ちょっと行ってくるわねッ!」
そしてここに1人、お昼時と聞いて俄然張り切るヤトさんの姿が?!
いやいや、お前こそ大人しくそこにいろって!?
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結局うちの手空きのメンバー+ヤトさんの活躍(?)により、あっという間に応接間の応接卓の上に並んだ沢山の料理。どうやらお義父さんが俺達の歓迎の為に奮発してくれたらしい。
因みに厨房に料理を受け取りに行って、コックに凄く驚かれたのとはヤトさんの談である。そらまぁ、いきなり厨房の料理を受け取りに半人半蛇が姿を見せたら、普通のヒトは大混乱になるわなぁ。
尤もヤトも頑張ったお陰で手早く昼食の準備は整ったのだが。
「皆んな、料理と飲み物は行き届いたかな──では、ウィルフレド・フォン・ハーヴィー辺境伯閣下と我が娘エリナベル・セルウィンの婚約を祝し、乾杯ッ!」
お義父さんがそう言って銀の杯に並々と注がれた葡萄酒を一気に飲み干し、俺達も「乾杯ッ!」の掛け声と共に、手に持った銀杯に注がれたワインを口にする。マーユのはワインではなく薄荷水になっているのは言うまでもない。
「よぉし! 片っ端から料理を制覇するわよッ!」
ヤトが片手に皿を、片手にフォークを持って料理を前に意気込んでいたりする。
流石は我がクランの胃袋担当である。これで料理が出来れば最高なんだがなぁ…… 。
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そうして懇談を兼ねた昼食会も宴半ば、お義父さん夫妻や後ろに控えるイネスやニコルに、俺やエリナは自身の冒険譚を色々と語って聞かせていたのだが
「さて、いよいよ今度は私の話ですわね。そもそも私が御主人様と出会ったのは……」
話が東方大陸の『黄昏の城』に及ぶと、それまで大人しくリビングテーブルの奥で色んな料理を食べていた女王蛾亜人のセレネが、待っていたかの様な面持ちでお義父さん達に、俺との死闘を語って聞かせ始める。どうでも良いが何で君もそんなに自慢気なんだ?
コレモ、ケッキョク、キミガタオサレタオハナシダヨネ?
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だが俺の心のツッコミを余所に意気揚々と語るセレネ。一方のヤトはと言うと「これもこれも美味しいッ!」と美食を堪能している御様子。片やセレネの話も佳境に入っており
「──そうして自らの身を犠牲にして御主人様は私を倒す為の好機を手に入れたのですわ! そしてそこに後ろで控えていたアン達の魔法が私目掛けて炸裂したのですッ! その攻撃を受けた私は一度死んで、御主人様の忠実なる下僕として新たな「生」を受けたのですわ。もう身も心も御主人様無しでは生きて行けませんの♡」
自慢の青白い翅を大きく広げて、これまた身振り手振りを混じえて話のヤマを熱く説明していたりする。でもソレ、君の最後の場面ですよね? 何でそんなに熱く語れるんだ? そして最後の台詞が余計なんだが?!
「恐らくは、セレネはかなり自己陶酔するタイプ、所謂ナルシストかと。若しくはアドルフィーネ様やルピィ並に妄想癖が強いのかも知れませんね。あとヤト同様にかなりデレているのもあるかと」
その様子にも大きく頷きながらそんな事を宣ったりしているコーゼスト先生。
「だから言い方だって言ってるだろがッ!?」
その物言いにまたもやツッコミを入れる俺。ナルシストは兎も角、妄想癖とか言うのは止めなさいっての! しかもアドルやルピィを引き合いに出しているし!
お前はアドルは兎も角、ルピィに何か恨みでもあるのか?
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セレネの自分語りで昼食会もお開きとなり、銘々に食後のお茶を飲んで更に話は続けられる。
「そうだウィル。お父さんにアレを渡してあげて」
香茶にひとくち口を付けたエリナが、何かを思い出した様に俺にそう言ってくる。そういやお義父さんにはまだ渡して無かったな、アレ。
俺はコーゼストの無限収納から、もうお馴染みになった小箱を取り出すと
「これをお義父さんに」
と言ってお義父さんの手に持たせる。手渡されたお義父さんは
「ん? 何だいこれは?」
と言って手渡された小箱を眺め回している。お義母さんやイネス達も小箱を見て首を傾げている。俺はお義父さんに小箱の蓋を開ける様に促し、訝しみながらも小箱に手を掛けて蓋を開けるお義父さん。小箱の中にはこれまたお馴染みの虹色に輝きを放つ金貨程の大きさの半透明の硬貨が1枚、鎮座在していた。
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「う、ウィル、こ、これは一体!?」
見た事が無い虹色の硬貨に大きな声を上げるお義父さん。俺は半ば常套句となった説明を口にする。
「それは『聖晶貨』。俺達が冒険の末にドゥンダウ大陸の『黄昏の城』で見つけてきた古硬貨さ。これは訪れた先々の貴族には軒並み挨拶と共に渡しているんだ。だからお義父さん達も遠慮しないで是非受け取ってくれ」
「ッッ!?!」
俺の台詞に絶句し、その場で固まってしまったお義父さん。一方お義母さんはおずおずと
「ねぇウィル。これってどれくらいの価値があるの……かしら?」
とこれまた至極真っ当な質問をしてくる。
「ん? これ一枚で白金貨5枚──5000万フルだが?」
「「「「〜〜〜ッッ?!?」」」」
あ、俺の答えを聞いたお義父さんとお義母さんとイネスとニコルが声にならない声を上げて、その場に4人仲良く昏倒した。
「ふむ、どうやら刺激が強過ぎたみたいですね」
その様子に冷静な解析をするコーゼスト。そんな事は一々解析せんでも宜しい!
俺とエリナ達は慌てて床にひっくり返ったお義父さん達を助け起こしたのであった。
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床に昏倒したお義父さん達を全員で助け起こし、並べた椅子を簡易ベッド代わりにして4人を横たえさせると、持ち歩いている気付薬を嗅がせる俺。すると程なく意識を取り戻した4人。
「大丈夫か、お義父さん? お義母さん? イネスにニコルも」
「おじいちゃん達、大丈夫?」
「あ、あぁ……」
「え、ええ……だ、大丈夫よ」
「「……大変御心配をお掛けしました……」」
俺とマーユが気が付いた4人に声を掛け、それに力無く受け答えするお義父さんとお義母さんとイネス達。
「いきなり4人とも倒れたから吃驚したよ……」
「いや、済まなかったねウィル。伝説の『聖晶貨』を目の当たりにして、しかもその価値を聞いて目が回ってしまってね……」
「私も……あまりにも高価な物なんですもの。驚いてしまって……」
「「(コクコク)」」
俺の言葉に苦く笑いながらそう答えるお義父さんとお義母さん。イネス達は黙って首を縦に振っているし。
そらまあオールディス王国なら、家族4人で月に銀貨5枚──50000フル有れば生活出来るのだから、『聖晶貨』1枚が如何に破格か、分かるには分かるんだが、気を失うほどの物なのか?
「マスター、ダンさん達の反応が普通のヒトの反応かと」
俺の疑問に端的に答えるコーゼスト。
あれっ? もしかして俺の金銭感覚の方がおかしくなっている……のか?
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そんな時、不意にオルガが懐から水晶地図板を出すと
「おっと、もうこんな時間かい? 結構話し込んだんだねぇ。さて、と、そろそろお暇しようじゃないか、ウィル?」
俺に向かってそう声を掛けて来る。そういや結構な時間が経っているみたいだな。
実はこのまま一泊する事も考えていたのだが、エリナから「今居る全員泊まれるほど屋敷に部屋は無い」と聞かされており、ワクト市内にある宿屋に一泊する予定なのだ。宿屋を確保する為にも、そろそろ頃合いである。
「そうだな……それじゃあお義父さんお義母さん、悪いがこの辺でお開きにしようと思うんだが……」
俺がオルガの言葉に同意し、お義父さん達に許可を求める。
「いやいや悪いも何も、ウィルが辺境伯なのだし、其方で決めた事に私達は否は無いよ」
「そうですわ。何と言ってもウィルは辺境伯閣下なのですからね。貴方がお決めになられた事に異論などありませんわ」
笑顔でそう言いながら一も二もなく同意してくれるお義父さんとお義母さん。
「……有難う、お義父さんお義母さん」
俺はそう一言言うと深く頭を下げ、色々とあった懇談と昼食会もいよいよお開きとなり、お義父さんの屋敷を発つ時間を迎えた。既に竜車はマルヴィナの手で厩舎から玄関前に停められている。
「それでは──急な訪問、済まなかったセルウィン男爵」
「いいえ、此方こそ大したおもてなしも出来ませんで申し訳も御座いませんでした。ハーヴィー閣下から賜りました『聖晶貨』は大切に使わせて頂きます」
「本当に、過分な物を頂きまして有難う御座います」
俺もお義父さんお義母さんも、今はお互い「公」の立場なので、挨拶も何処と無く余所余所しく、そして堅苦しいものとなっているのはどうか勘弁して欲しい。
「ではセルウィン男爵、また会おう」
「はい、ハーヴィー閣下もお元気で」
お互いに固く握手を交わす俺とお義父さん──セルウィン男爵。本当に一番最初のド緊張は何処に行ったのか?
こうして多少の波乱はあったが何とか無事にエリナの両親に婚約報告を終える事が出来たのである。
でもこれ、あと何回しないと行けないんだっけ?!
和やかに話が出来る様になったのは良いんですが、ヤトやセレネの自慢話(?)は一体? そしてウィルはウィルで聖晶貨で案の定やらかしました! あれが普通の人の反応かと。私なら宝くじが高額当選したらその場で卒倒する自信があります(笑)
さて次回はいよいよシグヌム市です!
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルの自称唯一無二の相棒コーゼストのイラストを第173部百六十一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます!




