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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
名声と風評の狂騒曲編!
213/322

婚約報告(其ノ壱) 〜まずは女騎士〜

本日は第199話を投稿します!

今回は目前でガチガチに緊張しまくっているエリナの父親ダン・セルウィン騎士爵とウィルの対面から話がスタートします!

 -199-


 シグヌム市の手前にあるワクト市、そこは俺の婚約者の1人であるエリナベル・セルウィンの出生地であり、彼女の両親もまたそこに暮らしていた。今、目の前にはエリナの両親が侍女(メイド)達と銘々(めいめい)に礼を()っていたりする。


 そらまあ曲がりなりにも俺は辺境伯だし、オルガは侯爵だし、2人ともに騎士爵であるエリナの父親からすると、滅多に接点の無い上位貴族だから緊張するのはわかるのだが──余りにも緊張し過ぎである。


 ガチガチになって直立不動のままで挨拶の口上を述べたエリナの父ダン・セルウィン騎士爵は、自分が臣下の礼を執ってない事に気付くと慌てて右手を左の胸に当て、右膝を音が聞こえるくらいに地に着き、(こうべ)を深々と()れる。


「た、た、大変申し訳御座いませんッ! 両閣下に対して不敬な態度を取ってしまいましたァァァッ!」


 そのまま前に転倒するかの勢いで頭を下げて謝罪の言葉を口にするセルウィン卿。いやいや、そんなに(かしこ)まらなくてもッ?!


「いやいやセルウィン卿、どうか顔を上げてくれ! 俺も冒険者上がりで無作法なんだ、そもそもそんな事でいちいち目くじらを立てたりしないから!」


「そうだよセルウィン卿。私も今回はハーヴィー閣下の()()()みたいなものなんだ。そこまで畏まらなくても良いからね」


 慌ててセルウィン卿にそう言葉を掛ける俺とオルガ。と言うかオルガさんや、君の一体何処(どこ)がおまけなのか、一度じっくりと話し合おうじゃないか。


 兎に角俺達2人の言葉を聞いて「は、はい、で、では」と(ようや)く臣下の礼を解いて立ち上がるセルウィン卿。その様子に俺の後ろで額に手を当てて「お父さん……」と(つぶや)いているのは娘のエリナさん。

 誰だっけ? 「そんなに性格が堅くないから」と言っていたのはッ?! 滅茶苦茶緊張してるじゃん!


「と、兎に角だ! こんな玄関先で立ち話も何だし、中に案内してはくれないかな? 詳しい話はそこでする事にしよう!」


「はっ?! こ、これは気が利きませんで大変申し訳御座いません!」


 俺の言葉にまたもや頭を深く下げて謝罪の言葉を口にすると、慌てて屋敷の中に案内するセルウィン卿。


 どんだけいっぱいいっぱいだったんだッ?!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 漸く屋敷の中に通された俺達。やれやれ、やっとこれで本来の話をする事が出来る…… 。


 そのまま応接間まで通されると応接卓(リビングテーブル)の椅子に銘々腰掛ける。因みに席順だが俺が上座に、その右隣にエリナが座り、その右隣にオルガとアン達、そして氏族(クラン)のメンバーがずらりと。従魔(フォロー)のヤトとセレネは一番下座の席を陣取る。


 俺の向かいの席にはセルウィン卿が、その左隣にはエマ夫人が座り、イネスとニコルの侍女(メイド)2人はその後ろに控える。4人とも俺の話を今か今かと待ち構えているのをひしひしと感じる。セルウィン卿、さっきの狼狽(うろた)え振りは何処にいった?俺は軽く咳払いをすると


「えへん。あーっと、最初に聞いて欲しい事があるんだ。セルウィン卿もエマ夫人も昨日メイドのニコルから聞いているかと思うんだが、改めて俺の口から言わせて欲しいんだが……」


 そこまで言葉にし、一度大きく息を吸うと──俺は自分の思いの丈をはっきりと言葉として(つむ)ぐ。


「セルウィン卿、いやダンさん、エマさん、娘さんを俺にください」


 そう言って俺はテーブルに手をついてダンさん達夫妻に頭を下げるのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「差し上げるも何ももう娘は一人前の大人です。娘がハーヴィー閣下を選んだのなら私に(いな)やはありません」


「そうですわ、むしろ閣下に貰われる娘を誇りに思います」


 頭を下げた俺に一瞬驚いた顔を見せたが、そう言って笑顔を見せるダンさん──セルウィン卿とエマ夫人。本当についさっきの狼狽え振りが嘘の様である。大切な事なので2回言わせてもらった。まぁその辺はやはり父親母親だからなんだろうな、等と俺が考えていると、セルウィン卿とエマ夫人は俺の隣に座るエリナに向かい


「エリナ、お前が選んだお前自身の人生だ。幸せにおなり」


「そうですよ、ハーヴィー閣下と共に幸せな家庭を築きなさいな」


 そうそれぞれに言葉を送る。その言葉を聞いて「はいっ、お父さん、お母さん、必ず……」と言って目に涙を浮かべるエリナ。その返事に大きく頷くと、再び俺の方へと向き直り


「「ふつつかな娘ですが何卒(なにとぞ)(よろ)しくお願い致します」」


 と頭を下げてくるセルウィン卿夫妻。俺はそんな2人に対して


「娘さんはきっと幸せにしてみせます」


 と少々陳腐(ちんぷ)な台詞ではあるが、素直な思いを口にするのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「すると、私はハーヴィー閣下の義理の父親なのです、か……何か妙な気持ちですなぁ」


 その後も(なご)やかに懇談(こんだん)は続き、他の婚約者達の紹介とマーユの紹介は元より、クランのメンバー達との出会いやエリナとの()()めから婚約に至る経緯をセルウィン卿夫妻に語って聞かせる俺。


 と、ここで不意にセルウィン卿からの今の発言である。だがまあ言いたい事はわかる。自分は一代貴族の騎士爵だが、娘は冒険者として成功して子爵となり、更には王侯貴族の一員である辺境伯の婚約者となったのだ。(はた)から見ても、何かバランスがおかしい関係に見えなくも無い。まぁそれを言うなら一介の冒険者だった俺が成功して伯爵となり、果ては辺境伯なんて爵位を(たまわ)る事だって傍から見ると奇妙な話なんだが。まあそれはそれとして。


 そこで俺は予めオルガとエリナ2人と話していた事をセルウィン卿に話して聞かせる事にした。


「そこでセルウィン卿に相談があるんだが……聞いてもらえるだろうか?」


「はい、私で良ければなんなりと」


 俺の言葉にそう返事を返すセルウィン卿。良しッ、言質(げんち)は取ったぞ!


「実は今、俺は自分の家臣──つまり直臣(じきしん)を募っていてね、セルウィン卿には是非とも俺の直臣になって欲しいんだ。勿論その対価は用意してある。直臣となった暁には陞爵(しょうしゃく)して男爵に()いてもらう事になる。どうかな? これを受けてもらえるかな?」


 返事を返したセルウィン卿に向かい、はっきり言って爆裂魔法(エクスプロージョン)並の衝撃発言を言って聞かせる俺。


 実はこの話、オルガから「辺境伯は直臣に子爵まで与えられる権限を有する」と教えて貰った事に端を発するのだ。そして更に言うとエリンクス国王陛下には遠方対話機(テレ・チャット)(すで)に許可を取り付けていたりする。身内贔屓(びいき)と言うなかれ、これがこの場合の最良の方法だと考えに考えた結果なのである。


 セルウィン卿はあまりの驚きに、ただただ唖然(あぜん)とするだけだったが。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうだろうセルウィン卿? この話、受けては貰えないだろうか?」


 ここで駄目押しとばかりにセルウィン卿に声を掛ける俺。ここは何としても彼に「(はい)」と言って貰わないとな!


 俺の声に目を(つむ)り考え込む事(しば)し、セルウィン卿は閉じていた目を開けると一言


「……わかりました。私で良ければ、微力ながら頑張らせていただきます」


 はっきりと迷いなく言葉を発する。


「有難うセルウィン卿!」


 そう言うと俺は右手を差し出し、その手をしっかりと握るセルウィン卿。これで少しはバランスが取れれば良いのだがと、俺は密かに期待をしつつ


「……あとやはりケジメとしてセルウィン卿を「義父(おとうさん)」、エマ夫人を「義母(おかあさん)」と呼ぼう、と思うんだが……」


「ですが爵位は閣下の方が(はる)かに上、義父と呼ばれるのは……先程も言いましたがやはり妙な気持ちですな」


「私も主人と同じ気持ちで御座います……」


 俺がもうひとつの個人的問題を口にすると、至極真っ当な意見を返してくるセルウィン卿夫妻。そらまあ爵位が男爵に陞爵しても、普通のヒトの気持ちとしては納得できない所なんだろうが……うーん。


「それなら公私を使い分けてみては良いんじゃないかい? 「(こう)」の時は男爵と辺境伯と言う立場で、「()」の時は義父義母と義理の息子としてお互いに振る舞えば良いと思うよ?」


 思い悩む俺とセルウィン卿夫妻にそう助言(アドバイス)をしてくれるのはオルガ。


「なるほど……それなら良いかな?」


「そう……ですね。私もその方が宜しいかと」


「私もそれなら宜しいかと思いますわ」


 オルガのアドバイスに納得する俺とセルウィン卿夫妻。流石はオルガ、そう言う所は知恵が回る。


「それで……私達はハーヴィー閣下を何とお呼びすれば?」


「ウィル、で良いよ。陛下を始めとした皆んなからはそう呼ばれているからな、お義父さん、お義母さん」


 俺がそう言うとピキリと固まるセルウィン卿──お義父さんと、エマ夫人──お義母さん。


 ん? 俺、何かやらかしたか?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 初っ端から変なトラブル(?)があったが何とか「お義父さん」「お義母さん」「ウィル」とお互いに呼び合う事が出来るようになった俺とお義父さん夫妻。


 聞けばお義父さん達がさっき固まった(フリーズした)のは、陛下が俺を愛称(ニックネーム)で呼んでいる事を聞いて吃驚(びっくり)したのと、何の前触れも無く俺が「お義父さん」「お義母さん」と呼んだ事で二度吃驚したかららしい。


「お義父さん、それってそんなに驚く事なのか?」


 それとは当然、陛下が俺を愛称(ニックネーム)で呼んでいる事である。


「……逆にそれを驚かない方がどうかしていると思うんだがなぁ、ウィル」


 俺の言葉に苦笑いを浮かべてそう答えるお義父さん。


「本当にウィルだけよ? 権力に一切()びないのは……」


 国王陛下に対しても友達口調ですもんね、と苦笑するのはエリナ。


「あらあら、そうするとウィルはお父さんとは真逆なのね」


 エリナの台詞にコロコロ笑ってそう言うのはお義母さん。お義母さんの話によると、お義父さんは所謂(いわゆる)あがり症で、昔から自分より身分が高いヒトと会うと、傍で見ていても可哀想なくらいド緊張するのだそうだ。成程、それで最初に会った時にあんなガチガチに緊張していたのか、と合点がいく俺。


「確かにマスターとは真逆のヒトですね。と言うか、マスターは「緊張」と言う言葉を知っているのでしょうか?」


 俺らの話を黙って聞いていたコーゼストが、お義母さんの話に乗っかってそんな事を(のたま)ったりする。それに連られて周りからドッと笑いが起こる。


 キミタチ、本当に失礼だな! 俺は緊張が顔に出ないタイプなんだよ!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「お父さん、お母さん達、お話は終わったの?」


 俺が独り悶絶していると、俺の(そば)に来てそう尋ねてくるのはマーユ。先程お義父さん達に簡単に自己紹介した後は、応接間の奥で俺とお義父さん達の話の邪魔にならない様にヤトやセレネと遊んでいたのである。と言うかあの2人に子守りの才能があるとは思わなんだ。


御主人様(マスター)ァ、何かシツレイな事考えてない?」


「そうですわ御主人様(ダーリン)、ヤトの言う通りですわよ?」


 そんな事をつらつらと考えていたらマーユに続いてヤトとセレネも俺の傍にやって来たりする。キミタチも中々に鋭いなッ?! とりあえずここは無表情(ポーカーフェイス)を装う事にして、ヤト達からの上手く追撃を(かわ)す事にして


「お義父さん、お義母さん。先程は簡潔に紹介したが、この子が俺の婚約者の1人である魚人(メロウ)族の女王マデレイネの1人娘のマーユ、まあいわゆる俺の継子(けいし)なんだが、エリナにとっても義理の子供にもなる訳だ。マーユ、このヒト達がエリナお母さんのお父さんとお母さんだ、ご挨拶しなさい」


 お義父さん夫妻に手を向けてマーユにそう話す俺。するとマーユは


「はいっ、お父さん! エリナお母さんのお父さん、お母さん、初めまして! 私マーユって言います! よろしくお願いしますッ!」


 花が咲く様な満面の笑みでお義父さん達に挨拶をするとペコリと頭を下げる。その様子に


「おお、うんうん、初めましてマーユちゃん。私はエリナの父親のダン・セルウィン。君にとっては義理のお祖父さんになるのかな? 宜しくな」


「貴方ばかり(ずる)いですわ。初めましてマーユちゃん。私はエマ・セルウィン。エリナの母親よ。貴女から見ると義理のお祖母さんね、宜しくね」


 目尻を下げてマーユに答える2人。するとマーユは急にモジモジしたかと思うと、恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに言葉を発する。


「はい、えっと、私ね、おじいちゃんとおばあちゃんが初めて出来たの。だからダンおじいちゃん、エマおばあちゃん、これからもよろしくねッ♡」


 お義父さんとお義母さん2人が完全に骨抜きになった瞬間である。


 ()もありなん。



物凄いあがり症だった事が判明した義理の父ダンさん! なので最初と途中の態度に大きな落差が(笑)

まぁ彼から見ればウィルやオルガさんは雲の上の存在ですからね、仕方ないと言えば仕方ないかと。それでも何とか話が出来る様になっただけでもかなりの進歩ですね!

そして案の定マーユちゃんの可愛さに骨抜きになってました(笑)

さて、このまま和やかに話が進むか? 次回もお楽しみに!


☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルの自称唯一無二の相棒コーゼストのイラストを第173部百六十一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!


いつもお読みいただきありがとうございます!

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