偏屈魔法士と辛口メイド(☆イラスト有り)
本日第二十話投稿します!
またもや新しいキャラが絡んできますが…濃いキャラなのでご注意ください(謝罪)
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「はい! ではお二人分の新しい認識札をお渡ししますねぇ~ッ。ニコニコ☆」
「おおぅ……あ、ありがとう」
ルピィが満面の笑みで金の認識札を渡してきた。ナニこのやり取り……以前もした様な………まぁ、これで名実共に俺とアンはAクラス冒険者の仲間入りだな~と何か感慨に耽っているとルピィが満面の笑みで話し掛けて来た。
「それにしても、『黒の軌跡』ですかぁ~。パーティー名も決まって何よりですよね~」
そうなのだ。今回昇級したので決めかねていたパーティー名をアンと話し合って決めたのだ。名前の由来は……言わずもがな、だ。
「それと~、ここからはAクラスになられた冒険者の方々にお話している事なんですが──」
ルピィは姿勢を正して話し出した。それによると…………… 。
まずAクラスになると、ギルドで制限を掛けていた迷宮の凡百情報を提示してくれる事になるのだそうだ。それに伴いギルドの勅命には否応無しに従わなくてはならなく成るのだが……あと、今までよりも魔核の買取金額にイロをつけてくれたり色々優遇してくれるらしい。
それと──これは俺にはあまり関係ない話だが──パーティーメンバーを六名以上集めると氏族を拓く事が出来るのだそうだ。氏族自体、全ギルド所属冒険者でも数える程しか居ない存在だ。まァそんなの拓く気も無いが…… 。
デュークのギルドへの登録もきちんと済ませた。デュークにはファウストと同じ識別用のプレートが付いた腕輪を渡された。勿論伸縮自在である。
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要件も粗方済んだのでギルドを出る。勿論ルピィには明日再び来訪する旨を告げてであるが、帰り際「そうそう! 装備を見直すならリットン商会をご贔屓に♡」とウインクをされた。まぁ俺の装備は隠し部屋で見つけたので一式揃えられるが……アンの装備だけでも新調するか……等とぼんやり考えていたらコーゼストから話し掛けられた。
『装備は兎に角、アンの強化やデュークの技能の確認も必要かと』
………あぁ、そっちも必要、か。
「んじゃ、まず何からするのが一番良いと思うんだ?」
『先ずは高品質の魔水晶を購入するか、信頼が於ける魔道具屋に行く事を推奨します。その後防具を選定すべきかと』
「信頼出来る魔道具屋かぁ……」
あまり、と言うか魔道具屋とは売却以外ほとんど交流が無いから思い当たらないが……アイツなら信頼出来るか……?
「……それなら一人だけなら心当たりが……魔道具屋じゃないが上手く行けば高品質の魔水晶が安く手に入るだろうし……」
『その人とは?』
「ラファエル・アディソン──魔法士だ」
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俺達は北区まで来た。ここは鍛冶師が主に集まる区域なのだが危ない実験を繰り返す魔具製作者も作業所をここに置くのだ。尤も作業所と住居を同じにして住み着いているのが大半ではあるが。
「ウィル。その……ラファエル・アディソンって方はどんな方なんですか?」
アンから至極真っ当な疑問を聞かれた……まぁ気にはなるよな普通は………… 。
「うーん、魔法士なのは間違い無いんだが……魔道具創りもやってる変わり者……かな。古代魔導文明の研究をしていて魔法よりそっちが詳しいな。あと魔物やエルフ族にも興味があるとか何とか……」
何かアンの頬が引き攣って見えるのは気の所為か? そんなこんなしていたら北区の外れにある大きな屋敷の前まで来た。相変わらず見た目は小綺麗ではあるが………… 。
「あの……本当に大丈夫なんですか?」
玄関のノッカーに手を掛けるとアンが不安そうに呟いた。
「大丈夫だ。偏屈者だけど悪い奴じゃないから」
「──人様の玄関先で人様を偏屈者扱いしている者は誰かね?」
いきなり扉が開き目の前に180セルト程のひょろっとした単眼鏡の男が立っていた。
「久しぶりだな、ラファエル。今日は用事が有って来たんだが……」
「貴様は何時も用事が有るから訪ねて来るのだろう? 興味を持てる用事なら大歓迎するがな───!?」
ラファエルの柘榴の視線は俺の足元にいたファウストに注がれた! そして───
「こっ、これはヘルハウンドでは無いのか?! ヘルハウンドの幼生体とは珍しい! ウィルフレド、良く捕まえて来た!」
しゃがみ込みファウストをしげしげと眺めるラファエルに追い討ちを掛ける。
「それだけじゃないぞ。蒼玉ゴーレムもいるんだ。それに──」
ダークエルフの女性も居ると言おうとするや否や、アンが胸に掻き抱いているデュークに早足で近付き、またしげしげと眺めて「な、何とサファイアゴーレムの幼生体までもとは……!?」と呟きながら更にアンと目が合い「うぉっ?! ダークエルフの女性もか?!」と更にしげしげと眺める、正直言って鬱陶しい。
「──旦那様、何を玄関で騒いでいるのですか? ちゃんとお客様を招き入れてからにしてください。 ウィルフレド様、ご無沙汰しております。お連れの方もようこそいらっしゃいました」
ラファエルが開けっ放しにした玄関から濃紺の女中服で身を包みプラチナブロンドの短髪をホワイトブリムでキッチリ押さえた女性が現れ会釈する。
「やぁノーリーン、久しぶりだな」
「今回も迷宮からの無事なご生還、おめでとうございます」
ノーリーンはそう告げながら微笑む。彼女はラファエルの屋敷に住み込みで働いているメイドさんである。
「さて──旦那様。いい加減ウィルフレド様方を部屋に招き入れて差し上げませんと──」
「う、うむ、そうであるな。ウィルフレド殿ようこそ来られた。まずは入ってくれ」
ノーリーンに促され慌てて俺達を招き入れるラファエル。お前この屋敷の主人なんじゃね?
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俺達は客間に通された。ラファエルが主席に付くと促され俺達も席に座る。因みにファウストは俺の足元でデュークは相変わらずアンの胸に抱かれていた──正直羨ましいと思わなくもない。
「それで? わざわざ私を訪ねて来るとは、どの様な要件かな?」
ラファエルは単眼鏡を掛け直しながら尋ねて来た。俺は先ずアンを紹介しながら
「──その前に、約束してくれないか? これから話す事は他言無用だと」
ラファエルの目に真っ直ぐ視線を合わせると確認をとる。そうでないと話を進められないからだ。
「……ふむ、何やら事情があるのか。良いだろう、我がアディソン家の名に誓って約束しよう。ノーリーンも良いな?」
「畏まりました。私も私の命に賭けて他言しないとお誓い致します」
そう言ってノーリーンは客間の扉を閉めた。勿論窓もである──よし
「では、話して貰おうか? ウィル」
「──わかった。コーゼスト」
俺の呼び掛けに不意にコーゼストが光り輝く! 嘗てアンに説明した時と同じ眺めである。
『──初めましてラファエル・アディソン様、そしてノーリーン様。私はコーゼスト。ウィルフレド殿の左腕にある腕輪が私と言う存在そのものです────』
コーゼストの念話に驚愕した二人はそのままコーゼストの話に聞き入っていた。やがて─── 。
『──その様にしてサファイアゴーレムのデュークを共生化し仲間としたのです』
どうやらコーゼストの長い話も終わりみたいである。
「──詳しいお話をありがとうございました、コーゼスト様。そうした事情がお有りなのですね。このノーリーン、改めて他言しないと堅く誓わせていただきます」
コーゼストの話を聞き終えたノーリーンは、少し頬を紅潮させつつ神妙な面持ちでそう言葉にした。一方ラファエルはと言うと、ソファの肘掛を両手で掴みながらワナワナと「……………素晴らしい……」と一言呟き────
「素晴らしい話だ! 400年前に創り出された有知性魔道具だと?! このコーゼスト殿にはどれだけの叡智が秘められているのか?! そしてその能力! 人と魔物の意思を繋げるとは! そして互いの能力を補完しあいながら格にも作用出来るとは! これぞ正に人の有史最強最高の魔道具である!!!!」
『恐れ入ります』
…………ラファエル……お前興奮過ぎじゃねぇの? それにコーゼスト、お前もそれに乗るな! 俺がそんな事を考えていたら
「………旦那様、今はそんな事はどうでも宜しくありませんか? 今大切なのはウィルフレド様とコーゼスト様の秘密を厳に守れるかどうかでは?」
ノーリーンから何故か闘気がゆっくり立ち昇るのが見える……するとラファエルは慌てて「そ、そうであるな!うん!!」と首をカクカク首肯する。どうでも良いけどお前、本当にこの屋敷の主人か?
「オホン──では私も改めて我がアディソンの名に誓わせて貰おう。それで今日来訪した理由は何かね?」
咳払いをして改めて尋ねて来るラファエル──今の流れではイマイチ締まらないよな…… 。
「魔水晶が欲しい。出来れば高品質のを」
ラファエルは顎に手を当て一瞬思慮すると俺達に問い掛けた。
「何に使うか問わねばならないのだが……良いだろう。だが条件が有る」
ウィル達のパーティー名は黒の軌跡となりました! 但し今後変わる可能性は……あります(確信)
そして新キャラのラファエルは濃いと言うより鬱陶しいです(笑)その手綱をとるメイドのノーリーンの過去は今の所謎であります(笑)
この二人は今後も絡みまくります!
*ラファエル・アディソン……30歳。茶髪。瞳の色は柘榴。身長180セルト。ウィルの知り合いの魔法士であり古代魔導文明研究者であり魔具製作者でもある。また魔物研究者としての顔を持つ。常に単眼鏡を掛け上から目線であるがノーリーンには頭が上がらない(笑)
*ノーリーン……25歳。プラチナブロンドの短髪。瞳の色は蒼玉。身長160セルト。ラファエルの家に仕えるメイドさん。住み込み。メイドとしては優秀だが毒舌家。日頃からラファエルをおちょくるのは日課である(笑)
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルの腐れ縁ラファエル・アディソンとラファエル家の毒舌メイド、ノーリーンのイラストを掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
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