ある意味、みっしょんいんぽっしぶる?
本日は第190話を投稿します!
今回はいよいよ対コボルト及び対ゴブリン戦の開始です!
-190-
巡行に出た先にある村シュシェシに迫る驚異、子鬼族と狗人の群れ! その村を訪れた俺達はその驚異を取り除く為に氏族を二手に分けて対処する事にした。
南のゴブリンの群れにはベルタやユーニスらがスサナの案内で討伐に向かい、俺は残りのメンバーとシュシェシ村を治めるエリック・ローズ男爵と共に、西に巣食うコボルト達を討伐に群れが居る原野にやってきたのだ。
目前20メルトと無い距離の先には、格50の狗人王に率いられた80匹を超えるコボルトの群れが、すっかり油断してのんびりとしている様が見てとれる!
「良しッ! 行くぞ!」
左腰に下げた神鉄拵えの刀の柄に手を掛けると、そう鋭く檄を飛ばして岩陰から飛び出し、一直線にコボルトの群れへと突っ込んで行く!
「「「「「おおーーッ!」」」」」
「はい」
「はいッ! うおぉぉーーッ!」
少し遅れてアン、エリナ、レオナ、ルアンジェ、マルヴィナ、そしてデュークが声を上げ、ほぼ同時にエリックも鋭い気合いの声を上げて岩陰から飛び出した!
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「はぁーい御主人様、先ずは私に任せてッ♡」
最後にセレネが白い翅を羽撃かせながらそう言うと宙を舞い、俺達を背後から追い越してコボルトの群れの上空に一気に達した──速いッ!
不意に空から現れたセレネに気付いた何匹かのコボルトが「グルルルルルーーッ!」と威嚇の声を上げるが
「うふふっ、可愛いワンちゃん達ね♡ほぅら、アナタ達の相手は目の前に居るわよォ♡」
空中で羽撃きながら、そう愉しげに声を発するセレネ。同時に黒一色の眼が怪しく輝き、セレネと目を合わせて威嚇していた何匹かのコボルトが、不意にフラフラとしたかと思うと、近くに居た別のコボルトにいきなり手に持つ武器で攻撃をし始めたのである!
『アレは──技能「魅惑」ですね。セレネはコボルトを魅惑し同士討ちをさせている様です』
その様子に後方でオルガやルピィ、そしてマーユをファウストと共に護るコーゼストが念話でそう解説をしてくれる。
そうしている間にも俺達とコボルトとの彼我の距離が縮まって行き、そして!
「うおぉぉぉぉぉッ!!」
先頭を駆ける俺は群れに近付くと同時に、鞘から刀を抜き放ち、セレネの「魅惑」で混乱の極みにあるコボルトの1匹を一刀両断にする!
少し遅れてエリナ、レオナ、ルアンジェ、エリックが群れに到達し、それぞれの武器でコボルトに攻撃を仕掛ける! アンとマルヴィナは少し後ろから、それぞれ魔導小火砲『リュシフェル』による援護射撃と防御の聖魔法『光の神壁』を唱え、前に出た俺達の援護に回っている!
2人とも、背中は任せたぞ!
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「ウォリャーーッ!」
俺に続いてエリックも長剣で怒涛の如くコボルトを斬り伏せる! こうして見るとエリックの剣の腕はかなりの物である。
そんな事に感心しつつも俺は周囲に注意を払う。彼我の戦力差はアンも含めて約1対11、今はセレネが混乱させているから良いが、それでも対多数戦かつ乱戦である事には変わりはない。こうなると此方としては素早く立ち回り、コボルト達に連携させない様にして各個撃破して行くのが最善の策だと言える。相手が平均レベル37前後のコボルトとは言え、油断は禁物だ。
それに立て続けに何匹か斬っていると、剣身に斬った相手の脂が付着して斬れ味が落ちるのにも注意しなくてはならないのだ。
「はあぁぁぁーーッ!」
「せいやーーっ!」
「たぁーッ!」
エリナやレオナ、ルアンジェもその辺はわかっているので、今は各個撃破に努めている。特にこうした時に囲まれたりすると厄介なので、そうならない様に上手く立ち回っているのだ。
そうした乱戦の中、何匹目かのコボルトに斬り掛かったエリックの背後から、別のコボルトが錆びたロングソードを振りかざし斬り掛かって来た! 次の瞬間、振りかざしたロングソードの剣身部分が根元を残して突然と折れる! アンが『リュシフェル』の魔力弾でブレイド部分を撃ち抜いたのだ!
「──ッ?! アン殿か、かたじけないッ!」
エリックはそう言うが早い、最初に斬り掛かったコボルトを一刀の元に斬り伏せると、返す剣で振り向きざまに唖然としているコボルトの身体を横に薙る! 身体を上下に両断され息絶えるコボルト!
その横ではエリナのロングソードが炎を剣身に纏い、コボルトに突き立てられる! 胸板を穿たれ炎に包まれ、断末魔の絶叫を上げるコボルト!
「流石、やりますなッ! エリナ殿!」
「ローズ卿こそッ!」
互いの健闘を讃え合うと、それぞれ別のコボルト目掛けて斬り込んで行く2人! エリナもエリックとは同じ騎士として通じる物があるのだろう。意外とウマが合うかもしれん。
と言うか、エリナがさっき使ったのって魔術刃だよなッ?!
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「シッ!」
群れに突撃してから数分後、辺り一面にコボルトの骸が無数に転がり、残りも僅かとなった。
そして今、レオナが士卒狗人2体を相手に立ち回っている! 1匹のコボルトナイトの攻撃を掻い潜り、長い顎にレオナの得意技の掌底突き──破砕掌が炸裂する! 破砕掌を真面に受けたコボルトナイトは後頭部を破裂させて一瞬で息絶える!
「そりゃあァーーッ!!」
そしてもう1匹のコボルトナイト目掛けて『正拳砲撃破』を連続して放つレオナ! レオナの拳から猛射された『正拳砲撃破』にコボルトナイトは身体中の骨が砕け、瞬く間に唯の肉塊と化す!
残りのコボルトはルアンジェが目にも留まらぬ速さで一対の鎌剣でその生命を刈り取り、デュークが自身の身体から生み出した剛鉄製の巨大な長槍で何匹も纏めて串刺しにし、それから生き残ったコボルトも宙を舞うセレネが風魔法で生み出した風槍でその身を次々と穿たれて行く!
(あとはコボルトロードのみッ!)
その中を抜き身の刀を手に、群れの奥に居るコボルトロードに向かって駆ける俺! 神鉄の薄い金色の刀身が頭頂に差し掛かった陽の光の中、ぬらりと輝きを放っている。
「グルルルルゥゥゥーー、ヴアォーーンッ!」
俺の姿を認めると両手を広げて憤激の雄叫びを上げるコボルトロード! そのまま右手にロングソード、左手に丸小盾を握り締めると、俺に目掛けて一直線に向かってくる!
そのコボルトロード目掛け俺は炎の空裂斬──『炎精斬波』を繰り出す!
自身目掛け飛んでくる炎の斬撃波を、慌てて左手のバックラーで受け止めようとするコボルトロード!
だが斬撃波は前に構えたバックラーごとコボルトロードの身体を、炎と共に頭から両断して行く!
断末魔の叫び声を上げる間もなく、哀れコボルトロードはその身を2つに断ち斬られると、左右に分かれた半身がそれぞれ豪炎に包まれ、瞬く間に灰燼と化す!
こうしてシュシェシ村に迫る驚異のひとつは、俺達の手で無事排除されたのであった。
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「ウィル殿! お見事ですッ!」
残心を解いて大きく息を吐き、金色の刀を鞘に戻していると、そう声を張り上げながら駆け寄ってくるのはエリック。見ればアン達も駆け寄って来ている。
「なんのなんの。そう言うエリック殿こそ、大した腕前だったじゃないか」
そう言って笑顔で話を振る俺。実際のエリックの剣はかなり実戦で鍛えられた様に俺には見受けられたのだ。
「本当に素晴らしい剣筋だったわッ! ローズ卿!」
俺の台詞に乗る様にエリナもエリックの剣術を褒め称える。
「いやぁ、まだまだ自分は未熟だと今日の事で思い知らされました」
頭を掻いてそう謙遜するエリック。中々の男っぷりである。
「ウィルッ!」
そうしている間にアン以下他のメンバーも近くに来た。
「アンもレオナもルアンジェもマルヴィナもご苦労様、皆んな良くやったな」
俺はそう彼女らに労いの言葉を掛けるのだった。
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「御主人様、私はどうだったかしらァ?」
そんな風に皆んなと話していると背後から抱き着いて来て、何やら愉しげに尋ねて来るのはセレネ。実際今回は彼女のスキルに助けられたのは間違いない。
「ああ、勿論セレネも良くやってくれたよ、本当に有難う。デュークも良くやったぞ」
そう従魔の2体(1人と1体)にも労いの言葉を掛ける俺。
「うふふっ、御主人様に褒められたわァ。嬉しい♡ねぇ、デューク?」
「ええ」
セレネもデュークも嬉しそうである。このメンバーなら問題無いとは思っているが、何せ勝負と言うのは時の運だからな。完全にケリが着くまで油断はしないつもりではいたが。
そうこうしていると、岩陰に居たオルガやルピィにマーユも、コーゼストやファウストと共に此方に向かって歩いて来るのが見えたのだった。
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「お父さぁーん! 凄かったぁーーッ!」
合流したマーユがそう声を上げながら俺に抱き着いて来て、キラキラした目で俺を見上げる。そんなに言われると、何だかこそばゆいんだが?
「ずっと前に「しーすこーぴおん」を倒した時もかっこ良かったけど、今日もかっこ良かったよ!」
目を輝かせたままそう口にするマーユ。そういやマーユやマディと知り合う切っ掛けになったのは海蠍の討伐だったなぁ。
そんな事を思っていると、マーユが俺から身体を離して「お母さん達も凄かったよーーッ!」と口にしながら今度はアン達の方に駆け寄って行く。
「「「「「マーユ、有難うォ♡」」」」」
そんなマーユにアン達の声が見事に重なる。本当にキミタチは仲が良いなッ?!
マーユと共に居たオルガらは生暖かい目でその光景を見ているし、マーユを護っていたファウストは「立派に役目を果たしたぞ!」と言わんばかりに尻尾をぶん回している。
「私もしっかりとお役に立てました。是非とも労いの言葉のひとつでも掛けて頂きたいものです」
コーゼストはコーゼストでドヤ顔でそんな事を宣ったりしている。
「えらく上から目線だなッ?!」
その様子に思わず突っ込まずにはいられない俺だった。
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そんな風にアン達の様子に苦笑を浮かべつつ、コーゼストにツッコミを入れていると、腰に下げた腰袋から軽やかな鈴の音が聞こえた。ポーチに入れた遠方対話機の呼び出し音である。俺はポーチからテレ・チャットを取り出すと釦を押して耳に当てる。
「ウィルだ」
『ウィルさん、ベルタです!』
テレ・チャットで連絡を寄越したのはゴブリンの群れの討伐に向かったベルタからだった。君も本当にいつも元気だな?
「ベルタか、そっちはどうなった? こっちの方はついさっきカタがついた所だ」
『それはご苦労様でした! 少し時間が掛かりましたが、此方も無事に開拓村跡に居着いたゴブリンを討伐出来ました! 此方の組は全員無事です!』
「わかった。詳しい話はシュシェシ村の屋敷で合流してから頼む」
『はい、ではッ!』
そうベルタとの話を締めると、俺はテレ・チャットでの通話を終えるのであった。しかしベルタは分隊を任せるといつも張り切るなァ。
「ベルタも意外とマスターの寵愛を狙っている節がありますね」
傍で一連のやり取りを見聞きしていて恐ろしい事をしれっと宣うコーゼスト。
寵愛言うなやァ!?!
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その後シュシェシ村に戻った俺達は、ベルタ達とエリックの屋敷で合流し、南に居たゴブリンについて報告を受けた。
居着いていたゴブリンの数はリーダーである将子鬼を含めて53匹、そいつ等はスサナの偵察通り、開拓村の跡地の廃屋に群れを成していたらしい。村の跡地はそんなに広くなく、それを見てとったベルタはチーム全員で四方から包囲する作戦を執ったのだそうだ。具体的にはフェリピナとアリストフにはスクルドを護りとして付かせ、ベルタ、ユーニス、スサナ、ルネリート、ヤトが主力の包囲戦である。
此方も時間的にゴブリン達の寝込みを強襲する形となり、殲滅自体は割と楽だったらしく、寧ろ包囲するのに時間を取られたらしい。正直に言うと──高ランクの魔物であるヤトが居る事でゴブリン達に接近を感付かれるかとも思ったのだが、ヤトは見事なまでに気配を遮断し、ゴブリン達に気取られる事は皆無だったらしい。
ベルタのその説明に傍でドヤ顔をするヤトの頭を、愛情を込めて撫でくりまわしたのは言うまでもない。
こうしてシュシェシ村の南と西に在った2つの驚異は無事に排除する事が出来たのである。
最後にエリックが出していたゴブリンの討伐依頼は、俺がテレ・チャットでラーナルーのギルマスに連絡し取り消してもらっておいたが。
まあコッチが本職なんだから当然と言えば当然なんだがな。
とりあえず難なくコボルトの群れとゴブリンの群れを討伐する事が出来ました! ウィル達のレベルなら余裕なのはわかっていましたが、ちゃんと気を抜かず最後まで尊重なウィル達は偉い!(自画自賛)
あとエリックも中々に強かったですね! 流石は騎士の出です!
☆manakayuinoさんに描いていただいたサブヒロインの1人、自動人形のルアンジェのイラストを第47部四十四話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




