基本、その場のノリと勢いで生きてます。
本日は第182話を投稿します!
東方大陸で回収して来た魔道具類を、オルガさんに頼まれて(あるいはねだられて)彼女の屋敷に運んできたウィルとアン達!
先ずは冒頭シーンからお楽しみください!
-182-
オールディス王国の王都ノルベール。1辺20キルト外周100キルトの正五角形を成す城郭都市である。都市を取り囲む城壁は二重になっており、城壁と城壁の間には堀が巡らされている。そして都市の中央は丘陵となっており、その丘陵にはまた強固な城壁が築かれ、その周囲には堀が巡らされ、中央には王城ブリシト城が、城の周囲には王侯貴族の屋敷が建っている。その一角にオルガのライナルト侯爵家の屋敷はあった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁ……こう来たか」
目の前に建つ大きな屋敷を見て思わず口を衝いて出た台詞がコレである。一緒に来たアン達やヤト達も口をポカンと開けて見入っている。流石にデカいな!? ウチの倍はあるんじゃないのか?
「わぁーっ、オルガお母さんのお屋敷ってとっても広ーいっ!」
マーユはマーユで大きな屋敷を見て燥いでいるし
「流石は侯爵位の屋敷ですね。マスターの屋敷よりも広大な敷地と建築物です」
コーゼストはコーゼストで俺の屋敷とオルガの屋敷を見比べてそう評していたりする。まあ実際昇順で言うと俺の屋敷→魚人族の宮殿→オルガの屋敷→ブリシト城と言う感じである。
「さぁ、どうぞ入ってくれたまえ!」
屋敷の主人であるオルガは先に立って俺達を玄関口へと誘う。まだ偶に男口調になるのはご愛嬌である。
大きな両開きの玄関扉が開いて屋敷の中に入ると、ウチの屋敷より広い吹き抜けの玄関ホールが。吹き抜けの天井から下がる簡素ながら重厚感のある大燭台が先ず俺達を出迎えてくれる。内装も華美では無くやはりシンプルな感じに纏まっていて、実に落ち着いた雰囲気だ。
「ようこそお出で下さりました、ハーヴィー閣下、皆様方」
そう声が掛けられて顔を向けると、そこには短めの白髪を綺麗に撫で付け、見事な白い顎髭を蓄えた老紳士が綺麗な礼を執って出迎えてくれていた。
「ウィル、皆んな。紹介するよ、我が家の家令を勤めているロルダンだ」
「ロルダン・オトゥールと申します。以後お見知り置きを御願い致します」
オルガが手を向けて老紳士を紹介し、紹介された老紳士──家令のロルダンが自己紹介をしつつ、再び綺麗な礼を執る。
流石は侯爵家の家令、ヤトやセレネを見ても微動だにしないな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とりあえず預かっている魔道具類を引き渡すのが先決と、エントランスホールから屋敷を通り、裏手に有る大きな倉庫に案内してもらう。勿論スチュワードのロルダンも付いて来ていた。
「それじゃあコーゼスト殿──ここに置いてくれるかな?」
オルガは倉庫の一角を指差しながらコーゼストにそう指示を出す。
「わかりました。それでは──」
そう言って無限収納の魔法陣を直ぐに展開するコーゼスト。瞬く間に指定された一角は魔道具類で埋め尽くされる。それを見て初めて驚愕の表情を顔に出すロルダン。そりゃあ初めてコーゼストの常識外れの能力を目の当たりにすると、普通皆んなこう言う反応だよなぁ…… 。
「いいえ、常識外れはマスターの方かと」
「ずいぶん失礼な言い掛かりだなッ?!」
いつもの如く俺の思考を読んで、一言失礼な事を宣ってくるコーゼストとそれにツッコミを入れる俺。安定のやり取りである。
「でもまぁ、コーゼスト殿の言う事にも一理あるけどね」
俺らのやり取りに横合いから笑いながら参戦してきたのはオルガ。その言葉にアン達の方を見やると盛んに頷いていて、ルストラ師匠は師匠で横を向いて素知らぬ顔である。
キミタチ、もう少し俺を支援してくれても良いんじゃないかい?!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんな事をしながらも当初の目的である魔道具類の搬入はあっという間に終わった。
折角なのでゆっくりして行ってくれ、とのオルガの言葉に甘えて、屋敷の大広間でお茶を頂く事にした俺達。オルガは「着替えてくるから」と席を外し、俺とアン、エリナ、レオナ、ルアンジェ、スサナ、コーゼスト、そして──
「うん! このお茶とっても美味しいッ!これであとは干し肉とかあれば文句ないんだけどね!」
「ヤトったら……でも本当に美味しいお茶ですわね。私としては美味しい果物も有るから満足ですわ」
ヤトとセレネの魔物コンビもすっかり寛いでいたりする。まあ魔物の2人がこうして違う屋敷にも関わらず偏見無く厚遇されているのも、オルガの人徳のなせる業なんだろうけどな。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「お待たせ」
そうこうしていると着替え終わったオルガが大広間に姿を見せた。目の覚める様な鮮やかな濃紫青の裾にかけて広がりがあるロングドレスと言う出で立ちである。
「ふふっ、まだちょっと着慣れない……かな? 女性の正装姿は990年振りだからね」
そう言って少し照れ臭そうな仕草で、その場でクルリと回転をするオルガ。
「いや、中々似合っているぞ? 美人は本当に得だな」
そんなオルガにそうさり気なく声を掛ける俺。すると頬を赤らめて「そ、そうかい?」と満更でもない様子で返事を返してくるオルガ。
「……マスターはまたサラリと殺し文句を言ってますね」
コーゼストがその様子にジト目を向けてくる。
「何だよ、殺し文句って?!」
こっちは見たままの事実を言っただけだが?! コーゼストの台詞に1人で憤慨しつつ、ふとアンに目を向けると
「全く……無自覚にも程があると思うんだけど……」
とやはり俺にジト目を向けてボソリと棘のある言葉を口にする──オイオイ?! 周りにいるエリナやレオナ、スサナや果てはルアンジェまでもがウンウンとアンの言葉に頷いている──俺が悪いのかッ?!
「ウィル……貴方いつからそんな色事師になったの? 師匠としては悲しい限りだわ……」
師匠は師匠でそう言うと顔から表情が消えていたりする──シショウモチョットマテ。
断っておくが俺は見たまま素直な気持ちを口にしただけだぞ?! それだけなのに有らぬ疑いを掛けられるなんて甚だ心外なんだが?!
「で、でも、そう言うさり気ない所がまた良いと言うか──わ、私は好きだけどね♡」
皆んなの反応を見て、1人何故か身をくねらせるオルガ──何故にキミは混沌に混沌を混ぜ込むッ?!
「い、い、いい加減にしてくれーーーっ!!」
大広間に俺の心からの絶叫が響き渡るのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁ……皆んな落ち着いたか?」
「「「「「あっ、はい、ごめんなさい」」」」」
「いやぁ、ごめんごめん。つい舞い上がってしまったよ♡」
盛大な溜め息と共にアン達にそう声を掛ける俺と、申し訳無さそうに返事を返すアン達と、悪びれた様子が無いオルガ。実に対照的な構図が展開されていたりする。アン達はとりあえず反省しているみたいではあるが……頼むから理不尽な事で責めないで貰いたいものだ。それにオルガさんや、あんたは男と偽るのを止めてからタガが外れたみたいにはしゃぎ過ぎじゃないのか?!
「私もウィルに謝らないとね。貴方のは天然なのよね……」
そしてもう1人、申し訳無さそうに謝罪の言葉を口にする師匠──何気に毒を吐かれている気がしないでもないが、まぁそれは良い。
「災難でしたね、マスター」
「いやいやいや、そもそもお前の一言が切っ掛けだったって自覚してるかッ?!」
しれっと何事も無かったかの様に宣うコーゼストに全力でツッコミを入れる俺。そもそもお前の一言がこの災難を招いたんだろが!?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ったく……それでオルガ、国王陛下へはいつお目通りが叶うんだ?」
コーゼストの余計な一言が招いた混乱が何とか落ち着きを見せたのを受け、そう改めて切り出す俺。
「うーん、そうだねぇ。先程使いの者に王城へ連絡に向かわせたから、二三日ぐらいかなぁ、と思うよ。でも下手すると明日とかも有り得るかもね」
俺の質問に頬に右手の人差し指を当てながらそう答えるオルガ。その仕草は可愛いとは思うのだが、それを口にするとコーゼストやアン達にまた何か言われそうなので自重する。
「そうか……それじゃあそれまでココでお世話になるとするか」
「あれっ? 何だい、気付いていたのかい?」
俺の台詞を聞いた驚いた顔をするオルガ。そんなに意外か?
「元々そのつもりで俺達を自分の屋敷に招き入れたんだろう? そうじゃ無けりゃ用事が済んだ俺達をわざわざ引き止めたりしないしな」
驚くオルガに俺が思い至った理由を話して聞かせる。すると彼女は困ったみたいな表情をすると「参ったなぁ、全てお見通しかい?」と肩を竦める仕草をする。
そらまあ、ここまでの一連の流れを見ていれば普通は気付くと思うんだが?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それならばと早速、遠方対話機を使い俺の屋敷の家令のシモンに此方に暫く泊まる旨を連絡する。そうでないと料理長のジアンナが俺達の分の夕食を準備してしまうからな。作られた料理が余って棄てられるのは余りにも忍びない。
「わぁーいっ! オルガお母さんのお屋敷にお泊まりだぁーーっ!」
一方マーユはオルガの屋敷に泊まれる事を素直に喜んでいるし
「グラマスの所の料理は美味しいのかしらッ!?」
ヤトはヤトで食い意地が張った発言をかましていたりする。そんなマーユとヤトの発言に周りの皆んなも苦笑するしかない──本当にキミタチは自由だな?!
そうこうしている間に王城に行かせた使いが帰って来て、謁見は明後日の上午10時となった事がオルガから伝えられた。
「それなら時間はあるな……」
俺はこれを機にエリンクス国王陛下にマディとジータも紹介してしまおうと考え、再び遠方対話機を使い、オーリーフ島に居るマディ達に都合を聞いてみる事にした。時差の関係上、此方が今午下の4時ぐらいだから、向こうは上午の9時ぐらいなので丁度良い。
『ウィルですかッ!? マディですッ!』
呼出音が2回鳴るか鳴らないかのうちに慌てた様子で遠方対話機に出るマディ──本当に素早いな?! 内心苦笑いを浮かべながら要件のみを端的に話して聞かせると
『──わかりました。それではジータにも連絡をして、明日そちらにお伺いいたしますわ』
と快く承諾してくれた。なのでこの前と同じ様に此方で午下の1時──オーリーフだと朝の6時ぐらいにコーゼスト先生に誘導して貰い来てもらう事にし、「それでは楽しみにしていますわ♡」と笑い声と共にマディは通話を終えた。
さて、と……あとはルピィも迎えに行かないとな…… 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから1時間ほど経ってから、コーゼストの転移魔導機を使い、俺はラーナルー市の冒険者ギルドに仕事を終えたばかりのルピィを迎えに行ってきた。
勿論ギルマスには国王陛下との謁見の為、二三日ルピィを休ませる旨を伝えてきたのは言うまでもない。ギルマスには「またお前は厄介事を……」とボヤかれてしまったが──それはそれで理不尽である。
「皆さんッ! お待たせしましたッ!」
ルピィはルピィで人生初の転移を経験してやたら興奮状態だったりしたが、それもすぐに落ち着いてアン達の輪の中に入ってキャイキャイと姦しくしている──やれやれ。
「そう言えば──やっぱり国王陛下との謁見なんだから今回も正装しないと不味いのかね?」
ふと頭に浮かんだ疑問をそのままオルガに問う俺。その辺はオルガの方が上位貴族だし、何より貴族の大先輩だからな。
「うーん、そうだねぇ。流石に陛下との謁見だからね、そこはやはりちゃんとすべきだろうね」
曲がりなりにもウィルも伯爵だしね、とはオルガの談である。やっぱりそうなるかぁ、はァ。
「するとアン達のドレスは明日市場で買うとするか……」
因みに俺のはいつ王城に呼ばれても良い様にコーゼストの無限収納を衣類収納庫代わりにして持ち歩いていたりする。なので買うのは師匠とマーユとアン、エリナとルピィ、レオナとスサナ、ルアンジェとコーゼストの分と、明日合流するマディ……はドレスだろうからジータの分と言う事になる。まぁそれぐらいなら良いけど。
「ウィル……私も買っても良いかい?」
そこでまたもや上目遣いをしながらお強請りして来るオルガ──アンタは本当に1300歳超えなんだろうな?! その上目遣いは破壊力がヤバいんだが?!
「わかった、わかりましたっ、ちゃんとオルガの分も買ってやるからッ!」
俺の返答を聞いて喜びで顔を綻ばせるオルガ。そして此方もアン達の輪の中に入って「どんなドレスを買おうかしら♡」とお洒落談義に花を咲かせている。
今度からアン達のドレスもインベントリに入れておくべきか、いや、ホントに!
結局オルガさんの屋敷にそのまま泊まる事になったウィル達! マディ達も呼び寄せて、次回いよいよ国王陛下との謁見となります!
それにしても何か事ある毎にアン達はウィルからドレスを買ってもらっている気が? まあ周りは女性が多いので仕方ないと言えば仕方ないんですけどね!
☆manakayuinoさんに描いていただいたメロウ族のマーユちゃんのイラストを第137部百二十九話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




