ルイン・ロア
本日第十七話投稿します!
前回から引き続いたサファイアゴーレム戦の決着です!
詳しくは本編をご覧下さいませ!
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「ヴォオオオーン!!」
ファウストの咆哮で呆けた心が目覚めた! 見ればアンも同じだったみたいで慌てて樹根呪縛を再発動させる! 再度、樹の根の拘束で動きを封じられるゴーレム達!
『マスター、アン。しっかりしてください』
コーゼストからまさかの激励をされてしまった。お前は本当にいつも冷静だな! 兎に角今のうちに作戦を練らないとな──── 。
「アン! すまん!」
「──ッ! 大丈夫です!」
アンが更に魔力を篭める──これで時間が稼げる筈だな。俺は構えを解いたアンに向き直りながら魔力の残りを確認する。
「どうだ、アン。魔力の残量は?」
「大丈夫です。今、魔力回復薬を飲みましたのでほぼ満タンになっている筈です」
……いつの間にか手に魔力回復薬の空の小瓶が……素早いな! まぁ良い──── 。
「わかった──アン、コーゼスト。何か良い策は無いか?」
正直手詰まり気味である──何か良い手が欲しい所だ。
「兎に角まず現状確認だ。アン、あの魔法はどのくらい持たせられる? それとコーゼスト、敵のサファイアゴーレムには魔法の技能は確認出来なかったんだな?」
アンとコーゼストに早口に尋ねる俺。
「はい。樹根呪縛は持続性魔法なので……あと10分かと。ただ、あのゴーレム達の力により変わると思います」
『再確認しましたが、あのサファイアゴーレムには魔法の技能は確認出来ませんでした。それで──マスターとアンに作戦を提示したいと思いますが宜しいでしょうか?』
「是非お聞かせください、コーゼスト先生!!」
俺は割と必死に──それこそ苦しい時の神頼みでコーゼストに尋ねる。
『サファイアゴーレムの弱点に攻撃を集中して倒します。云わば一点突破です』
「!? コーゼスト、あいつの弱点がわかるのか?!」
──それならそうと早く言ってくれ!
『あのサファイアゴーレムの弱点は魔核──より正確には真核です。あの配下召喚も再生もそれを司る真核あっての事です。それを破壊出来れば我々の勝利です』
コーゼストは事も無げに言う──が、問題が山積みである。
「ちょっと待て?! そもそも、その真核が何処に有るのか俺達は知らないぞ?」
「それに例えマスターコアの位置が判っても……そんなに簡単に破壊出来る場所なんですか?」
アンも思い付いた問題点を口にする。
『問題ありません。マスターコアの位置の特定は既に完了しています。胸部の中央より左寄り──ヒトの心臓の位置に酷似しています。体表面より約25セルトの深さです』
「だから! 場所が判ってもあのサファイアの身体をどうやって打ち貫くんだよ!!?」
『それについては、ファウストの新しい技能が役に立つかと思われます』
コーゼストの台詞に思わず横に居たファウストの顔を眺める。アンも同様にだ。
『ファウストの新しい技能は───』
それを聞いた俺とアンは思わず息を飲む! 一方のファウストは心做しか自慢げであった。それなら──── 。
俺はコーゼストの話を聞いて思いついた作戦を手短にアン達に話した。アンからも有効だと思われる魔法が有る事も聞き、見えなかった光が見えてきた。
尤もコーゼストには成功の確率とやらは聞かなかったが──だがきっと上手く行く筈だ!
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「よし。アン、ファウスト、頼むぜ!──行くぞ!!」
俺達は行動を開始した! 先ずは手始めにアンの魔法が炸裂する!
「『エスプ・デュ・ディユー・シルヴォスプレト──重き霧よ、彼の者を打ち薙ぐれ』圧爆霧!」
アンの前に30セルト程の霧の球が3つ産み出された! 3つの霧の球はそれぞれ三体のゴーレムに向かってふわふわ飛んで行く! ゴーレムに当たった瞬間、物凄い轟音と共に霧の球が爆発した!! 正に火属性最強の爆裂魔法かと思わせる様な爆発である!
絡みついていた太い樹の根をも吹き飛ばす爆発でゴーレム達は軒並み尻餅をつく様に、後ろに倒れ込む! その身体には幾つかの罅が入っていた──よし、次だ!
「ファウスト、今だ!!」
『グゥルル──ヴァオォォォォォォォォォォォォォーーン!』
ファウストが咆哮を放つ──だがそれは今までの咆哮とは違い耳を劈く様な轟音と共に放たれた息吹だった!! これが───!
『これがファウストの新しい技能、〈破滅の咆哮〉です。激しい咆哮に衝撃波を乗せて相手を粉々に粉砕します』
コーゼスト先生、的確な解説ありがとう!
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ファウストの破滅の咆哮をもろに浴びる形になったゴーレム達の身体は更に罅割れ、遂に黒鉄ゴーレムの身体がガラガラと音を立てて崩れて行く!
サファイアゴーレムの身体にも細かい罅が無数に走っているのが一目で判る状態になっていた!
因みに30メルト四方有る部屋の壁にも無数の罅割れが──はっきり言ってコイツは強力過ぎるスキルだ!
そこにアンの放った風精加護を重ねがけした螺旋矢が、よろよろ立ち上がったサファイアゴーレムの罅割れた左胸に突き刺さる!
矢は罅割れたゴーレムの胸板を深く抉り、その穿った奥に紺碧の魔核が────見えた! あれがマスターコアか?!
再びサファイアゴーレムの双眸が激しく輝き、再生が始まった! だがこの好機を逃す訳にはいかない!!
「コーゼスト!!」
『──物理結界展開、出力最大へ。』
「うぉおおおおおお!!」
俺は大盾を手放し、斧槍を両手持ちに構えると斧刃とは反対の鉤爪を振り翳し雄叫びと共にサファイアゴーレムに向かって駆け出した!
ゴーレムは迎え撃とうと両腕を振り上げたが、上げきった瞬間アンの放った魔法付与付きの螺旋矢を右腕に受け弾き上げられる! そしてファウストは左腕を噛み砕く勢いで飛び掛り押さえ込む!
守る物も無くマスターコアを晒したゴーレムに俺は助走付きで跳躍し、その胸に──紺碧のマスターコアに目掛けハルバードのピックを振り抜いた!!
マスターコアはピックが激突した所から罅が入り、やがて大きな亀裂となり砕け──様とした次の瞬間にゴーレムの身体がかつて見たチカチカした輝きに包まれた! これは───?!?
『──Confirmation of submission(服従化確認)』
『隷属術式構築』
『個体 : サファイアゴーレムへ魂の刻印完了』
『素体質量、虚数変換開始』
『変換完了、収納』
──そこにはしれっとサファイアゴーレムを収納するコーゼストが居た!
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『おめでとうございます。無事倒せましたね』
主の居なくなった部屋にコーゼストの声が響く。俺もアンも戦闘の緊張から解放されてその場にへたり込んだ──やれやれ。それにしても────
「ソイツは仲間にするんだ……」
俺はコーゼストにそれとなく呟く様に問い掛けた。
『あのサファイアゴーレムには間違い無く知性と自我がありました。マスターコアが砕かれる刹那、私の問い掛けに応じ共生化を受け入れましたので』
しれっとコーゼストが宣う。あんな目まぐるしい展開の最中に良くそんな事出来ていたな!? まァ倒せたので良かったが……それにしても、とうとうゴーレムまでもが仲間とは……頑丈そうだから助かるけど…………ん? アンがこちらを唖然とした面持ちで見つめているんだが?
「はぁ……話には聞いてましたが、ファウストもこうして使役したんですね……」
感心とも呆れとも言えない溜息を漏らすアン。わかるぞ、その気持ち──俺は水晶地図板をポーチから取り出し今の時間を確認する。外はまもなく日が沈もうとするみたいだ。
「さて……と。それじゃあ一旦第六階層まで下りてから転移陣で地上に戻るとするか……久しぶりに宿屋のベッドでぐっすり寝たい気分だ…………」
「そうですね……私も賛成です」
アンも疲れた顔で同意する。幾ら冒険者とは言え女性が何日も拭取タオルや清浄魔法だけでは堪らないからな。そろそろ沐浴もしたいだろう……俺もだけどな!
『では私は新しく共生化したゴーレムを最適化しています。それとお二人とファウストのレベルですが──マスターは44、アンは40、ファウストが52になりましたので報告致します』
…………またレベルが上がってた。そろそろ休養でもしようかな……アンにも聞かないといけないが……
俺は新しい仲間になったゴーレムの命名する事をすっかり忘れてそんな事を考えていた。後で苦労する羽目になるのに─── 。
前フリ通り、サファイアゴーレムを仲間にしました!
しかし……ファウストとアンは益々チートだ……ウィルが霞みます(汗)そしてしれっとしてますがコーゼストの目覚めも順調です!
*圧爆霧……霧を高密度に圧縮し目標に接触した瞬間、一気に解放して爆発現象を引き起こし周囲にも被害を与える水属性の精霊魔法。爆発力は爆裂魔法に匹敵する。
*破滅の咆哮……ファウストの新たな技能。凄まじい咆哮に衝撃波を併せて解き放つ息吹。効果範囲の物体を粉砕する。
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