サファイアゴーレム
本日第十六話投稿します!
今回は難敵との戦闘のみです!! ウィルのボケと掛け合いは一切ありませんのでご容赦ください!
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部屋の奥に聳える様に立つ宝石岩人形だが、部屋の扉が閉まったのに何の動きも無い。これはある程度近付かないと駄目なのか? それなら出来るだけ準備を整え直すか…… 。
俺はコーゼストの無限収納から2.5メルトは有ろうと言う斧槍を取り出した。使い慣れて無いが打撃力を優先した為だ。それと念の為、縦横1メルトの大盾も装備する。
アンは長剣を刺突剣に変え装備したが、今回は弓と魔法主体になるだろうし今まで使わなかった魔力回復薬を何本かとリットン商会謹製の螺旋矢を矢筒ごと持たせる事にした。
この螺旋矢は防御が硬い魔物を倒す為に防御貫通力に特化した矢で、今回ダンジョンに潜る前に買っておいたのだ。尤もジュエルゴーレム相手に何処まで効果が有るかはわからないが。
「良しコーゼスト、護りは任せたからな」
『お任せ下さい』
コーゼストには俺達全員を自動防衛システムとやらできちんと護って貰う様に厳命する。こんな所で手抜きをされたら目も当てられない。
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ひと通りの準備が整った俺達はジリジリとジュエルゴーレムに近付く。少し暗めの魔導照明の中、青みがかった巨体が見えて来た。
こいつは宝石でも水宝玉か蒼玉か? そんな事を思った瞬間──!
不意にジュエルゴーレムの目が鈍く輝き2体のゴーレムが床が盛り上がる様に現れた! コイツらが俺達の前に戦っていた冒険者の情報にあった配下ゴーレムか?!
「コーゼスト! あいつらの情報は確認出来たか?!」
俺は即座にコーゼストに確認を取る。コーゼストは確認出来た相手の情報を俺とアンに公開する。
『はい。配下ゴーレムは岩石人形。格は30、 順位はC。技能は無し。ボスのジュエルゴーレムは蒼玉ゴーレム。レベルは40、 ランクはAランク。スキルは配下召喚と鉄壁です』
「?! 蒼玉でAランクだと! 厄介だな!!」
その情報に思わず唸る俺! 基本ゴーレムはその身体を造る材料で当然防御力が違ってくる。一番弱い泥から木、岩石、黒鉄、星銀、そして宝石である。宝石は黄玉から水宝玉と順位が上がり蒼玉、そして金剛石と防御力が増すのだ。
サファイアはダイアモンドより1ランク下がるが、それでもかなりの強敵なのは間違いない! サファイアと同じ防御力だと後は紅玉と翠玉がいるが単なる属性の違いだけである。
その上だと伝説の剛鉄と神鉄……らしいが記録だとアダマンは400年前に、オリハルコンに至っては1000年前に記述されているのみだ。
──兎に角、先ずは小手調べして見るか。
俺はファウストに念話で指示をする。と、ファウストは先制の爪撃破を放つ!
爪撃破は寸分違わず2体のストーンゴーレムを両断しサファイアゴーレムにぶち当たった! 甲高い硬質な音を立てて弾かれる爪撃破!
流石はサファイア、硬いな──!
すると間を置かず床からストーンゴーレムがせり上がる様に再度出現する! 奴等の相手はファウストに任せて俺は真っ直ぐサファイアゴーレムに向かう!
サファイアゴーレムが反応して左腕を振り上げた瞬間に、アンの放った風精加護が魔法付与された螺旋矢が左腕に命中する! 矢は突き刺さりこそしなかったが腕を大きく弾き上げる!
その隙に斧槍を大振りに振り回しガラ空きの胴体を狙う! 硬い物同士がぶつかり合う甲高い音が響き、ほんの僅か斧槍の刃がくい込んだ! これでも駄目か?!
幸いゴーレムの動きは遅いので、すぐさま後ろに下がる! 俺達がサファイアゴーレムから10メルト程離れると相手の動きが止まった。ここが境界線なのか?
直接的な攻撃では殆ど効果が無いみたいである──が、魔法ならどうだろう? だがサファイアの属性は確か水のはず──アンとは相性が悪そうだ。
「アン、再確認だが火炎属性の魔法は使えないんだったよな?」
10メルト以上後ろに下がった俺は、後ろで弓を構えているアンに確認を入れる。
「はい、火属性と土属性は殆ど使えません。あのサファイアゴーレムとは相性が悪いです……」
アンもしっかり自分の弱点を把握している。そして──
「確かに水属性には火属性が有効だと思われがちですが……実は意外と木属性も有効なんです。それに風属性にも同じ水属性にも使いどころがあります」
──その弱点を補う事も把握している。
「よし──試して見るか」
「わかりました!」
おぉー、アンが張り切っているな……ここは任せてみよう。
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再度体制を整えてサファイアゴーレムに向かう!やはり10メルトを越して接近すると途端にストーンゴーレムを召喚してくる。
すると後方からアンの詠唱が聞こえて来た──!
「『エプス・デュ・アラバス・シルヴォスプレト──樹の根よ束縛せよ』樹根呪縛!」
その詠唱が唱え終わるや否やストーンゴーレム達とサファイアゴーレムの足元の床を割って太い樹の根が生えてきてゴーレム達の足元からはい登り絡みついた!
根に絡み付かれたストーンゴーレムの身体には徐々に罅割れが拡がっていくのが目に映る──物凄い力だな!! サファイアゴーレムも身体を締め上げられて動けないでいる。
「今です!」
アンが叫ぶ!
俺は斧槍の柄の下をしっかり握り締めると大きく振り回しながら脆くなっているストーンゴーレム達に攻撃を加えた! 音を立てて崩れるストーンゴーレム!
今度はファウストがサファイアゴーレムに飛び掛り攻撃を仕掛けた! ゴーレムの右肩にファウストの大きな牙が食い込む! あのサファイアの身体を穿つとは大した顎の力である!だがサファイアゴーレムもやられてばかりでは無く、巨大な手で掴み掛かりファウストを引き剥がし壁に向かって投げつけた!
そのまま投げ棄てられるかと思われたファウストだが、華麗に身を翻し壁に着地する! そしてそのまま壁を蹴り距離を取るファウスト!
サファイアゴーレムの右肩にはファウストの牙が大きく穿った跡が残っている! 思いの外ダメージがあったらしく、どうやら右腕を上げられないみたいだ──ここは畳み掛ける!
俺はストーンゴーレムを打ち崩すと、斧槍を強く握り締め直しサファイアゴーレムに突っ込んでいった! 狙うはファウストが穿った右肩のみ!
サファイアゴーレムの左腕のみの攻撃を避け、突っ込んだ勢いのまま斧槍をゴーレムの右肩に振り抜く!! 斧槍の刃は穿れた跡に激突し、遂にサファイアゴーレムの右腕が肩口から破砕された!!
先程より軟らかく感じたのはファウストの牙が穿った所為だけで無く、アンの使った魔法が効力を現して身体に罅が入り始めているからである。
続けて左腕も同じ様にファウストと俺の波状攻撃で捥ぎ取った!
これならいけるか?! そんな考えが頭の片隅に生まれると同時に、それを見透かしたみたいにサファイアゴーレムが突如地響きの様な叫びを発した!
『ヴォオオオオオオオオオオオ!!』
サファイアゴーレムの双眸が激しく輝き身体から魔力が溢れ出す! すると破砕され落ちた両腕に魔力が纏わり付き、時間が逆戻りするみたいに両腕がくっつき復元していく! それだけじゃ無く俺やアンが付けた傷すら元通りになっていく!!
「ウソだろ………」
俺は呆然とその様を眺めていた──後ろに退避する事すら忘れ──── 。
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「ウィル! 戻ってください!!」
「ヴァンヴァン!」
アンとファウストの声で我に返り慌てて10メルトの境界線まで急いで下がる!
三度、部屋の床が盛り上がりサポーターゴーレムがサモンされる! だがそれは今までのストーンゴーレムでは無く黒ずんだ茶色……黒鉄か?!
サファイアゴーレムもだが、配下ゴーレムも強くなっている感じがひしひしとする!
「コーゼスト! 確認もう1回!」
『──・──確認完了。サポーターゴーレムは黒鉄ゴーレムに変わりました。レベルは33、ランクはC。スキルは剛力。ボスはサファイアゴーレムと変わらず。レベルは40と変わらず、但しランクがAランク+に変化。スキルはサポーター・サモンは変わらずアイアンガードが再生に変化しました』
「!?! Aランク+……だと……?」
ランクに+が付く──それは限りなく上位個体に近い事を示す。幾ら何でも増強し過ぎである!
ファウストが警戒の唸り声を上げる中、俺とアンは呆然としてしまっていた────── 。
一度倒せそうだったのにパワーアップして負けてしまうパターンに陥り……ません!次回にご期待ください!
*ゴーレムの強度について
泥→木→岩石→黒鉄→星銀→宝石→剛鉄→神鉄
☆宝石は更に黄玉→水宝玉→蒼玉紅玉翠玉→金剛石と上がっていく。
*樹根呪縛……木の精霊に働きかけ太い木の根で相手の動きを封じ場合によっては締め付けで粉砕する木属性魔法。
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