古代魔族の遺産と難敵
本日第十五話投稿します!
前回のオーガは前振りでした!少し明らかになる古代魔族の話に繋がります。
何か段々話がシリアスになって来ている感じが……
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俺達は「魔王の庭」第五階層に達した。
結局あの第四階層のAランクの鬼族はコーゼストが調べたのち共生化はしなかった。コーゼスト曰く『共生化をして戦力となり得るのは知性を宿す魔物のみ』なのだそうだ。結構選り好みが激しい……まぁ質の良い魔核を手に出来たから良かったが。
「それで? あのオーガを調べてみて何かわかった事はあったのか?」
俺はファウストと共に辺りを警戒しながらコーゼストに問い掛ける。何であんなにあのオーガに固執したのか気になるのだ。
『はい。結果から言えばあのオーガは造られたモノでした』
「? なんじゃそりゃ?」
造られたって、誰が造ったってんだ?
『端的過ぎましたね。あのオーガには因子が操作された痕跡がありました。』
「えっと……その因子の操作って……何ですか?」
今度はアンが疑問を口にする。
『そもそもこのダンジョン「魔王の庭」は古代魔族の『実験場』でした。『実験場』では主に魔物を戦力にする実験が行われていたと私の記憶領域に記録されています』
「あの言い伝えは本当だったんだ……」
てっきり与太話かと思っていたんだが…… 。
『そこで行われていた実験に、従来の魔物の因子を操作して特定の技能を持たせると言う実験が行われていました。あのオーガはそうして造られたのだと推察した次第です』
「……魔物を戦力にする為にそんな事が行われていたなんて……」
アンが驚きから思わず言葉を漏らす。俺だってこれでも驚いている。
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「なぁ、そもそもその因子ってのは一体何なんだ?」
ふと感じた疑問をコーゼストにぶつける俺。そもそも因子などと言われてもさっぱりわからん!
『因子と言うのは魔物のみならず動物や植物にも有るその生命の姿形や性質や性格、果ては技能や能力まで決定する──言わば生命の設計図です。勿論マスターやアンの様なヒトも例外ではありません』
……結構壮大な話が出てきた。そんな古代魔族に良く400年前にヒトが勝てたな! 俺が続けて質問しようとしたらアンが先に疑問を口にした。
「だとしたらコーゼストさんは、あのオーガみたいに造られた魔物がこのダンジョンにまだ存在すると考えているんですよね?」
『あの部屋に居たオーガはたまたまアソコに住み着いていた個体と思いますが──恐らくは個体数としてはかなり少ないと考えられます。根拠としては遭遇例が報告されていない事です。個体数が多いならそれ相応の報告がギルドに為されている筈ですから』
「すると運が良ければ会わない訳ですね」
『運が悪いと連続で遭遇する場合が有りますが』
「ちょっと待てよ? そもそも造られた魔物がそんなに長生きなのか?」
そうである。幾ら造られたからと言っても400年も生きている訳が無い──魔物の寿命が何年なのか知らないけど。
『──これは推測ですが、恐らく冷凍保存されていた個体か……生産設備が何処かで生きている可能性が有ります。可能性としては前者ですが──後者だと厄介になり得ます。かなり確率は低いですが』
どちらにしても可能性が無くはない……か。貧乏くじは引きたくないなぁ…………はぁ。
「まァ、コーゼストも言ったみたいに遭遇報告が無い以上、その冷凍保存? って方だと思うけどなぁ」
『可能性として覚えておいた方が良いですけどね』
そんなに不安を煽るな!アンが黙り込むじゃないか?!全く…… 。
それにしてもコーゼストは本当に400年前に創られた有知性魔道具なんだな……まさに歴史の証人ってヤツだな………… 。
あれ?そうするとコーゼストが創り出された理由って、やはり魔物を戦力として使う為なのか?!
何か言い知れぬ不安を感じたが、まさかコーゼストに問い質す訳にもいかず──俺は釈然としない気持ちのままダンジョンの奥に向かって歩を進めるしか無かった。
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その後、幾つかのパーティーに出会ったり魔物の群れを倒しながら俺達は第五階層の最後の部屋の手前の待機所と思しき所まで来た。
コーゼストの感知能力だと現在、俺達の前に別のパーティが戦闘を繰り広げてるらしい。そしてまた結界により中の魔物の詳しい情報は取れなかった──つまり守護者である。
これは戦闘が長引くかな──と思っていたら待機所の床に突如魔法陣が出現したかと思ったら5人のパーティーが魔法陣の中に姿を現した!これは転送か?!───
俺達の前で呆然と佇む5人組。俺はその内の1人に話し掛けた。
「おい! 何があったんだ?!」
「あ……あぁ、ここは何処なんだ?」
戦士と思しき男が呆けた顔で逆に尋ねて来る。
「ここは守護者部屋の手前の待機所だ」
「待機所……? そう……か、俺達は戻されたのか……」
「一体何があったんだ? 一体何と闘っていたんだ?!」
俺は重ねて戦士の男に問い掛ける。
「……岩人形だ」
聞かれた戦士は力無く答えた。
「只のゴーレムじゃない。あれは宝石だ……宝石ゴーレムだった……」
「それだけじゃない、配下のゴーレムを産み出せるマスタークラスだ……」
他の男達も口々に言い募った。そして口々に「アレには勝てない……」と零す。
兎に角、疲弊し切っている彼等に精霊魔法の治癒風をアンに掛けて貰って回復させる。幾らか落ち着きを取り戻した彼等から改めて情報を集めると──
まず守護者のジュエルゴーレムはAランク相当で部屋の奥ほどを陣取り全く動かないのだそうだ。剣による斬撃も槍の刺突も魔法の攻撃にもビクともしない……らしい。
それだけじゃなく二体の配下ゴーレムを産み出して攻撃してくるのだそうだ。この配下ゴーレムは大した強さは無いのだが、こちらが倒す度に新たに産み出し続けるので兎に角こちらが疲弊してしまったそうのだ。
だがそんなゴーレムが圧倒的な状態であったにも関わらず彼等は突如として転移させられてしまった。まるで彼等に用は無いと言わんばかりである。
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『コーゼスト、これってもしかしたら──』
俺は1つの仮定が頭に浮かび、思わず念話でコーゼストに話し掛けた。
『はい、間違い無くそのゴーレムの仕業ですね。どうやら何か闘う基準を見定めているのかも知れません。』
俺の言葉にコーゼストが答えを合わせる。何というか面倒事になりそうな予感がする。
『やっぱり、そうか──』
『だとしたら、私達も同じ事になりませんか?』
そこにアンも念話に参加してきた。
『そればかりは直接ゴーレムに当たらないとわからないけどな……少なくとも最悪の場合は外に出されるのは間違い無さそうだと思う。コーゼスト、彼等の格は判るか?』
『一番高い格は40、後は順に39、38、38、35。パーティ全体ではレベル40は確実にあるかと』
『そうか──決して低くは無いよな……』
俺は念話を一旦切り上げて、ファウストを見て驚いているパーティーの彼等に向き合う。
「それで、あんた達はこれからどうするんだ?」
「……俺達は一旦地上に戻るよ。回復薬も底を尽いているしな……それに疲れた。折角ここまで来たけど……な」
リーダーと思しき男が力無く答えた。他の男達も同じ思いだったらしく誰も反対の声を挙げなかった。
「そうか……」
こういう時は何も言わない方がいい。彼等は彼等なりにここまで頑張って来たのだから……だからせめてこれだけはしてやろう。
俺は無言でポーチから小さなコアを取り出しリーダーに握らせた。
「これは……」
「地上まで帰る為の転移陣用のだ。使ってくれ」
「……すまん。恩に着る」
リーダーとメンバーが頭を下げる。俺は「気にしないでくれ」と言葉にした。
「あんた達はどうするんだ?挑戦するのか?」
リーダーが聞いて来る──まぁ当然だよな。
「とりあえず一度挑戦してみるつもりだが……駄目なら追い返されるだろうしな」
俺は何の気負いも無く答えた。リーダーは軽く頷きながら「頑張れよ」と肩を叩いてメンバーと共に地上への転移陣の方に向かっていった。さて、と─── 。
「それじゃあ、ご対面と行くか……」
「大丈夫なんでしょうか……」
『支援は任せてください』
「ヴァン!」
アン、大丈夫だ! 何とかなる──多分…… 。
コーゼスト……お前は今まで碌な支援してないよな?!
逆にファウスト!お前は頼りにしているからな! 本当に!!
そんな事をしていたら守護者部屋の扉が重々しく開いた。俺達は気を引き締めて恐る恐る部屋に入る。
部屋の中を照らす魔導照明に浮かび上がる巨体──これが守護者のジュエルゴーレムか───!!
体高3メルトは有ろうかと言う城壁の様なジュエルゴーレムの様相を前に、俺達は不覚にも立ち竦んでいたのだった。
そして今──ジュエルゴーレムとの戦闘が始まる。
ちょっと壮大な話になって来ています……次に現れたゴーレムは間違い無く強敵です(フラグ)
いよいよ次回は戦闘メイン回です!
*治癒風……回復効果の有る風で範囲にいる者を癒す範囲治癒魔法。
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