再始動
本日第十四話投稿します!
確認を万全に……し過ぎた感があります(汗)結構このパーティーはチートの塊みたいですが、全てはコーゼストの所為です!
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その後アンの剣の腕前を見せて貰った。流れる様な剣捌きで、あっという間に上位狗人3体を切り伏せるのには驚かされた。
尤も本人が一番驚いていたが。
これもコーゼストを介した共生化による俺とファウストの能力が加わったのと格が補完された結果だとはコーゼストの譚である。
それを聞いて俺達のレベルを確認すると、俺は42、ファウストは51でアンは38だそうだ。アンは最初に出会った時は33だったらしい(コーゼスト談)のでかなり上がっているんだなと思う── 。
その後再度、魔法の効果を確認したがアンの放った木属性の樹木短槍も、苦手と言っていた水属性の水征矢も威力を増していたのを確認出来た──主にアン、がであるが── 。
しかし、エルフ族の魔法詠唱の言霊は本当に発音しづらい………… 。
それから俺達2人と1匹の連携も確かめていたら、第一階層に粗方魔物が居なくなってしまったので流石のオレもアン共々青褪めた。
いや──あまりにサクサクと倒せたので調子に乗ってしまったのが原因ではあるが、自重すべきだった。
そそくさと第一階層をあとにする俺達………因みに全員のレベルは更に一つ上がっていた………はっきり言ってやり過ぎた。
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16日ほどで地上に戻った俺達は一度『蒼眼の新月』に戻り7日間滞在した。
その間はギルドに出向き、輝光の一件でギルドの監察部に再度事情を説明したり書類にサインしたり……あとクライド達からアンは賠償金を、俺は感謝を言われたりしていた。彼等もアンが俺のパーティーメンバーになった事を半ば驚いていた……何となく納得した顔をされたのが気に掛かるのだが──── 。
それとは別にルピィから一度落ち着いたら昇級試験を受ける様に言われた。まぁギルマスから言われた話なのだが今回は保留にした。元々、少なくともダンジョンの1/3を攻略してからアン共々受けようと考えていたので、当初の目標通りにしたいと思ったのだ。勿論アンにも了承を得ている。
蛇足だが第一階層を狩り尽くした件でギルマスからお小言を言われたのは言うまでもない。曰く「自重しやがれッ!!」だそうだ──それについては深く反省している。
そして再度、準備を整えての再探索を再開して───「魔王の庭」第四階層。
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直線距離150メルトでリッパーバイソンと対峙するアン!奴は蹄を踏み鳴らし、こちらに突っ込んで来ようと身構えている!
一方のアンは右手で弦を引き絞りながら小声で呟いていた。
「『エスプ・デュ・ヴェン・シルヴォスプレト──加護よ、矢を疾走らせよ』風精加護」
小さな詠唱が聞こえていたのか、終わるや否や突っ込んでくるリッパーバイソン!だが慌てる事無くアンは引き絞った矢を放った!
矢は鋭い風切り音を発しながら150メルトの距離を直進しリッパーバイソンの眉間に吸い込まれる様に突き刺さった!!
突っ込んで来た勢いそのままで前につんのめりながら光の粒子になってリッパーバイソンが消えていった。ゆっくりと構えを解くアンに向かって
「本当に大したモンだよ。この距離を射抜けるとはねぇ」
と軽い口調で賛辞を贈る俺。
「今のはエルフの弓術で遠距離射撃と言うんですが使えるのはエルフでも極僅かです」
頬を紅潮させながらアンが教えてくれた。何でも矢に風の精霊の加護を付与する事により遠距離を飛ばせる様にする、厳密に言うと魔法なのだそうだ。
しかし、弓と言い魔法と言い剣と言い……やはり三重職は飛び抜けているよな~と思う。
そう言えば俺の「爪撃破」も当然アンに披露したのだが、ソレを見てやたらテンションが上がったアンから「空裂斬」と言う名を貰った。何でも400年前に魔王を討伐した勇者が似た様な技を使っていたらしいのだ。その技の名前が「アギト」……そんな御大層な名前を安易に使って良いのだろうか?
アンが言うには「伝承の通りだから問題ありません!」と熱く語られたので断る機会を逸した。まぁ、400年前の話などエルフ族以外は知らないだろうし──まァ、いいか。
そしてアン達と出逢った部屋を過ぎ、第四階層最後の部屋──── 。
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「キシャアァァァ!」
50メルト四方の部屋に士卒小鬼の声が響き渡る!
突っ込んで来る1体目のゴブリンナイトの攻撃をカイトシールドで受け止める! と、その後ろから2体目のゴブリンナイトが錆びた歩兵剣を振り下ろして来た!
援護の為に放たれた矢は小盾に防がれるが動きを牽制するには役立った。
俺はその隙に剣戟を叩き込もうとするが2体のゴブリンナイトはすかさず後ろに飛び退く!
下手に追撃するとその後ろに控えている大盾のゴブリンナイトに護られている魔小鬼に魔法を撃たれかねない!
ゴブリンメイジが動きを見せたらアンが狙い撃ちする様にしているのだが、俺への援護も有り気が抜けない!
だがこの部屋の守護者はこのゴブリン達じゃない。更にその後ろに小鬼王に守護される鬼族なのである。
俺達も一旦距離を取って呼吸を整える──しかし、こうも連係されると本当に厄介だよな!
「コーゼスト、奴らの情報は取れたのか?」
油断無くゴブリン達に視線を送りながらコーゼストにそう確認する俺。
『はい。2体のゴブリンナイトはそれぞれ格は36、 順位はC。技能は連係のみ。大盾のゴブリンナイトはレベルが37、 ランクはC。技能は無し。ゴブリンメイジはレベルが35、 ランクはC。魔法属性は火属性のみ。その後方のゴブリンロードはレベル37、 ランクはB。技能は守護を保有。オーガはレベル41、 ランクはA。スキルは指揮に特化している様です』
ここで言う順位とはレベルのみならず、持っている固有技能と単純な戦闘能力から導き出される優劣の等級の事である。一概にレベルが高くても必ずしも順位が高くなる訳では無い。それにしても…………
「オーガが指揮技能を持っているなんて……」
アンの顔色が冴えない。そう言えばアンはダークエルフの筈なのに良く顔色が判るな……等と奴らから目を離さずにしながら、チラリとそんなくだらない事を考えていたら
『マスター。現実逃避しないでください』
コーゼスト!だから人の思考を読むなって!!それにアン、キョトンとした顔しないでくれ!
「あーっと、そうだな……先ずファウストの咆哮で動きを止め俺がまず2体のナイトのどちらかを倒し連係を崩す。アンは精密射撃でメイジを射て。万が一倒せなくても構わない、魔法を使わせなければ良い。あの連係を崩せさえすれば一気に押し込める。後は各々の判断で──こんな所でどうだ?」
「わかりました──私はメイジを牽制すれば良いんですね?」
アンが神妙な顔をして頷く。その後ろではファウストも小さく「グルルルゥゥ」と唸り声を上げてその意志を示す。
「──よし、奴らも動き出したし──行くぞ!!」
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掛け声と共に一斉に動き出す俺達!先行するファウストは襲い掛かろうとしていたゴブリンナイトに目もくれず部屋に響き渡る様な咆哮を上げる!コレには相手を萎縮させる能力があるんだ。
一瞬動きを止めるゴブリンナイト達!その隙を逃さず俺が突っ込んでスモールシールドを持つゴブリンナイトを縦に真っ二つにした!
続けて相棒が倒され呆然としているゴブリンナイトに切り掛る!
ゴブリンメイジの方にはファウストが襲い掛かりゴブリンナイトがラージシールドで必死に押さえ込もうとしている陰からファウストを狙うゴブリンメイジ!
だがファウストに気を向けた一瞬の隙を付いてアンの精密射撃が大盾から僅かに覗いていた頭を射抜いた!
慌てる大盾のナイトは押し倒されファウストの牙の餌食になった! ──よし!
息つく暇も無く俺とファウストはオーガに立ち向かう! 俺達の後ろからアンの手数を増やした水征矢
の群れが援護としてオーガ目掛けて放たれた!
それをスキルで防ぐゴブリンロード!ロードがオーガの前に立った瞬間にファウストの爪撃破が、それを追う様に俺が空裂斬を放つ!爪撃破を捌いた直後に空裂斬に切り裂かれるゴブリンロード!
そのまま空裂斬はオーガに到達しギャリッと耳障りな音を立ててオーガの硬い皮膚を浅く切り裂いた!
「グルゥガアァァー!!!」
斬られた痛みで怒りの咆哮を上げるオーガに向かってファウストが飛び掛かる! ファウストのナイフの様な牙がオーガに突き刺さり爪が皮膚を抉る!
苦悶の声を上げるオーガの右眼に風を纏った矢が突き刺さる! アンが風精加護を纏わせた矢だ!
片目を射抜かれたオーガにファウストが追い討ちを仕掛け右脚の膝裏に噛み付く!
巨体を支えられず右膝を付いたオーガの左眼に俺は渾身の力を込めてカイトシールドの仕込み槍を突き立てた!
その一撃で遂にオーガは身体を痙攣させながら倒れ込んだのだった。
だんだん魔物も強さを増して来て戦闘シーンが今後も増えます。
まだ出来たばかりのパーティですが強さが半端ない……
*樹木短槍……腕ほどの樹の槍で穿つ精霊魔法。
*水征矢……高圧水流の矢を複数生み出し放つ精霊魔法。
*風精加護……風の精霊の加護を矢に纏わせて放つ遠距離射撃の精霊魔法。
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