準備と確認と…… (☆イラスト有り)
本日第十三話投稿します!
何事にも入念な準備とキチンとした確認が必要ですが……コーゼストがやらかします(笑)
*ヒロイン・アンヘリカのイラストを掲載しました。
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アンの装備も揃い、市場で必要な物資の買出しを済ませた俺達は昼食を屋台で済ませギルドに向かった。
前日、俺とアンのパーティー登録は認められたが手続きが未だだったからだ。昨日に引き続きルピィが受け付けてくれたのだが……何でこんなにニヨニヨしている?!
「──はい、ではお二人分の新しい認識札をお渡ししますね~、ニコ☆」
「………お、おぅ」
古いのを返して受け取った真新しい銀の認識札には名前・所属ギルド・クラスが記載されており、新たに『パーティーメンバー名』が付け加えられていた。
アンにも同様の新しい銀の認識札が手渡される。
因みにこの認識札はクラスにより違っていて初心者のEクラスは木、Dは鉄、Cは銅で俺やアンはBの銀、この上にはベテランのAを示す金と最高位のSを示す星銀になる。
「そう言えばウィルさん、まだパーティー名は決めてないんですね、どうしてです?」
「……昨日いきなりパーティー結成されたし、そんな余裕があると思うか……ルピィ?」
ジト目をしながら問い掛ける、とルピィは視線を思いっきり逸らした。こっちをちゃんと見ながら言えないのか?!
「え~、良かったじゃないですかぁ~念願のパーティー結成ですよ? しかもエルフの女性とか!」
だから、俺の目を見ながら話なさいって! ルピィは俺から視線を外したまま「メンバー募集の張り紙剥がしておきますねぇ」と宣う。
結局、有耶無耶にされたまま俺達は例のオークジェネラルの魔核の買取金を受け取った。勿論クライド達の罰金差し引いた分であるがそれでも金貨2枚になった。
受け取りにサインをしてから他に用が有るかルピィに確認する。当然ある筈も無いので、ダンジョンに潜る旨を話しギルドを出る事にした。背中からルピィの「お気を付けて~」の声に送られ、俺達は「魔王の庭」入口に向かった。
入口を警護する領兵に声を掛け入宮手続きを済ませ、門を潜ると管理端末の水晶に手を乗せ第一階層から再探索する事を告げる。
本当なら第四階層から再探索出来るのだが、俺としては新しいメンバーのアンの実力を見定めたかったからだ。あとファウストを含むお互いの連携も確認するのも目的だ。
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そして、「魔王の庭」第一階層──── 。
眼前に上位小鬼の群れが迫る!その後方には既に矢で射抜かれて絶命したボブゴブリンが二体。俺は身を屈め左脇から来た斬撃をカイトシールドで受け止め右手のショートソードで薙る!
崩れ落ちるのを確認する間も無く続けて襲いくるホブゴブリンに向き直る! と俺の横を掠める様に後ろから放たれた矢がホブゴブリンの眉間に突き刺さった!
錆びた剣を振り下ろす事無く光の粒子になって消えていくホブゴブリンを見て、一頻り感心する。アンの後方支援はかなり有効だった。
特に弓での射撃術は優れた腕前を披露してくれる。何と言っても今の所一度も的を外してないのだ。これでもまだ微調整中らしい。
俺は後方支援との連携をする為に長剣から歩兵剣に変えてある。そしてファウストはアンの護衛として傍らに付いていた。
流石に戦闘中にはモフらないよな~と、俺は変な感心をしていたらアンが駆け寄って来た。
「どうでしたか? さっきよりも少しストリングの張りを変えてみたんですが──」
「あぁ、大したモンだな。今のは少しヒヤッとしたが……あんな技術も使えるんだ」
「あれは精密射撃と言うエルフの弓術のひとつです」
流石エルフ、弓と森が友とは良く言ったもんだな! 俺はニッと笑いながら「次は魔法を見せて貰おうかな」と告げると、アンは頬を紅潮させて「任せてください!!」とやたら張り切って答えた。
コーゼストの探知によると、ここより150メルト東の部屋に魔物の反応が複数有るらしい。ではそれを次の目標にするか──── 。
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探知通り、部屋には上位狗人が3体とホブゴブリンが2体居た。ここはファウストに牽制しておいてもらうとして今度は俺がアンの護衛に付いた。
さて、アンの魔法の腕前はどうだろう? アンは右手を前に突き出し眼を閉じる──と身体の周りで魔力が高まるのが視える。
俺は昔から魔法を行使出来ないが、こうして魔力を視る事が出来るのだ。なので魔法適正は無くても魔力が高い。
それにしても普段魔法士が魔法を行使する時とは何か違う気がする──何かこうフワフワしたモノが纒わり付く感じなのだ。
そんな一瞬の後アンが眼を開けると言霊を口にする。
「『エスプ・デュ・ヴェン・シルヴォスプレト──風よ、全てを切り裂く刃となれ』旋風刃!」
詠唱が終わるや否やアンを中心に旋風が巻き起こる! 旋風はファウストを飛び越えると魔物達をズタズタに切り裂いた!
凄い威力だ……しかもファウストには害が無いとか便利な魔法だな……ん? アンが驚いた顔をしているが?
「どうしたんだ、アン?」
何事かとアンに尋ねる俺。何か不具合でもあったのか?
「い、いえ……私は風魔法が得意なので数も居た事ですし多数に効果が有る旋風刃を使ったのですが以前より威力が増してた気がするんですが……」
『それは増幅指輪が正常に機能している証拠です』
アンの台詞を受けコーゼスト先生が宣う。
「えっ?だ、だけれどそんなに増幅される物なのですか?」
『あの増幅指輪は元々の魔力を実質3倍に増やし魔法の威力を2倍に増幅し、更に魔力の効率を上げ使用する魔力を1/2に軽減します』
「……ヲイ」
何だ?!その壊れた性能は?!! アンも唖然としてしまったじゃないか!!
『あの指輪はちゃんと完成された物です。試作品の時はそんな性能はありませんでしたから』
「……因みにその試作品の性能って…………?」
『魔力と魔法の威力を際限なく増幅出来るのですが同時に魔法を使用した場合、一発で魔力が枯渇します。』
「それダメじゃなくね?!」
これを創った古代魔族は何考えていたんだ?! そんな極端な性能付けやがって!!!! 加減を知らないのか??!
『今使用している増幅指輪は適正に制御されているので安心してください』
「当たり前だ!! そんな危険なモノ使わさせられてたまるか~~ッ!!!!」
見ろ! あまりの事にアンが硬直しているじゃないか?!
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『そんな事よりアンさんの魔法の評価は良いのですか?』
またしれっと話をすり替えるコーゼスト。コイツは本当にィ!!──はァ。
俺は頭を振って気持ちを落ち着ける。コーゼストに憑かれてから本当に血圧が上がり易くなっているみたいである。そのうち俺も血圧の薬が必要になるかもしれん。
はぁ……落ち着いた所でアンも現実に戻してやるか………… 。
「アン? アン?!」
「?!ッ、はっ? 今、何か聞いてはいけない事が聞こえた気が……」
「安心しろ。聞き間違いじゃない……」
「……何か凄い話でしたよね……コーゼストさんは本当に500年前に創られた有知性魔道具なんですねぇ……はぁ」
アンがどっと脱力している。判るぞ、その気持ち。
「それで? 他にはどの属性魔法が使えるんだ?」
気持ちを無理矢理切り替える意味も込めて質問する。
「私は──いえ、私達森精霊族は精霊魔法を使います。私は風と木の精霊に愛されています。あと水の精霊もいるんですが風は兎に角、木が水を呑んでしまうのであまり得意ではありません」
アンが力無く笑う。それでも属性的には3属性使える事になるんだから大したモンだと思うんだが。
「まぁ、魔法はここぞと言う時の切り札として温存するのが一番良さそうだよな……」
「そうですね。幾ら魔力が増幅されているからと言っても流石に連続起動させる訳にはいきませんし」
アンも慎重な自己判断を述べる。冒険者は臆病な方が一番良いんだ、とは嘗て冒険者に成り立ての頃ギルドの教官から聞かされた訓戒である。
それを守ってきたからこそ俺はここまで来れたのだと思う。
俺はアンに眩しいモノを見た気がした。
「さて、と。とりあえず後は剣の腕前を見させて貰うとするかな」
俺はわざと戯ける様に話し掛ける。するとアンは一瞬キョトンとした顔をして、直ぐに頬を紅潮させながら「が、頑張ります!!」と両手を握り締めて胸の前で小さくポーズを取った。
それを見てファウストは相変わらず尻尾が振り切れる程ぶん回している。俺は恐らく一番出来の良い笑顔をしながら歩き始めた。
『私を無視するとは良い心掛けですよね』
コーゼストの文句はサラッと流して──── 。
勿論ちゃんと魔核は回収したのは言うまでもない!
アンはかなりのチートかも知れません!
何でこんな娘があんな事に?と言う疑問には何処かで答えたいと思います(汗)。
そして自重を忘れてるコーゼスト…… 。
☆アンヘリカのイラストはnyazさんの作品です! nyazさん、ありがとうございました!
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