アンヘリカ
本日第十一話投稿します!
今回は完全にアンヘリカさんのターンです(笑)
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あまりの急展開に頭が付いていけない──── 。
ギルドを出た俺達は近くの食堂に場所を移していた。俺の目の前の席には満面の笑みのアンヘリカさんが居らっしゃいます。
あの後いち早く立ち直ったギルマスとアンヘリカが話し合った結果、俺の初のパーティーメンバーとしてアンヘリカが登録される事になった。
アンヘリカは満足気な顔をしギルマスはニヤニヤして、戻ってきたルピィからは小声で「ウィルさん、おめでとうございます」と声を掛けられたが──いやいや、そもそも俺の意見はどうなる?! いや、まあ、固まってた俺も悪いけど!!?
ギルマスから「あとは二人で話し合ってくれ」とギルドを追い出され今に至る──ギルマス、絶対楽しんでるだろ!!
『マスター、気をしっかり持ってください。先ずは現状をどう処理するかです』
コーゼストから至極真っ当な意見が来た………まぁ確かにそれが先決かぁ──はァ…… 。
そうこうしている内にもアンヘリカは食堂の店員と話してる。店員はアンヘリカから「私、ウィルフレドさんとパーティー組んだんですよ」と言われ驚いた顔を向けて来る。
──そんな顔するな! この俺が一番驚いているんだよ!!!!
いかんいかん! 頭を切り替えて話さないと駄目だ!
「あーっと、アンヘリカさんや?」
「はい、何でしょうか? ウィルフレドさん♡」
……いや、そんな熱い眼差しで見られても………… 。
「さっきもギルドで聞いたと思うんだが……何で俺とパーティー組む事を決めたんだ?」
うん、ここは単刀直入に聴くべきだな!
「そうですね。では改めて」
コホンと軽く咳払いしてアンヘリカが語った話は、俺の耳を疑う様な内容だった。
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先ず俺がアンヘリカに投げ掛けた言葉が心に染み入ったのだそうだ。俺としては大した事など言った記憶が無いのだが…… 。
あとクライド達に対する対応がアンヘリカの琴線に触れたらしい。俺としてはアイツらに恨まれるより恩に着せておこうとしただけの行為なのに…… 。
それと勿論自分を助けてくれたのが最大のポイントなのは間違い無い! とはアンヘリカの弁である。
それだって……ただ単に俺自身、人が蔑まれるのもするのも嫌いだからしただけなんだけどなぁ………… 。
そんな俺の思いなど気付かず、熱っぽく語り終えたアンヘリカは香茶で喉を潤す。
「そうした事も重要な事ですが、私は貴方の目を見て決めたんです。貴方の瞳の奥に視えた輝きを信じてみよう、そう思ったんです」
「なんだそりゃ?」
「それは──秘密です♡」
唇に指を当てて微笑むアンヘリカ──美人さんは何をやっても絵になりますなぁ───じゃなくて! そんなあやふやな理由でこんなかなり重要な事を決定しても良いのか?!
「君は俺に襲われるとか心配しないのか?!」
「今度はきちんと見定めました。貴方はそんなヒトではありません」
何故か自信満々に断言するアンヘリカ! まぁ、確かにそんな気は毛頭御座いませんけど! 自分で断言していて虚しいけど!
何でここまで信用されるのか、理由が解らない………… 。
『マスターはご自身に向けられた純粋な好意が怖いのですか?』
コーゼスト、そんな事を疑問形で聞くんじゃありません! こっちはコミュ障なんだよ?!
──何か既視感に囚われる。俺って押し掛けられ易いのか?
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俺は足元で惰眠を貪る子犬形態のファウストの頭を撫でると、ファウストは何事かと頭を上げた。
「……なぁ、ファウスト……お前はアンヘリカさんが仲間になったら嬉しいか?」
聞くとはなく呟くと
「ワン!」
ファウストは勿論と言わんばかりに尻尾をぶん回す。
『ファウストは異論は無いみたいですよ?これで賛成1票です』
『そう言うお前はどうなんだよ……』
『私も条件付きで賛成と肯定します』
これで賛成2票目……か。悪い気はしないんだが、何となく流されている感じが釈然としない。
「私では貴方には役不足ですか……?」
「うっ………」
アンヘリカが瞳を潤ませて俺の目をジッと見つめる──止めてくれ! その視線は攻撃力高いから!!
「はぁ──」
俺は深く長い息を吐き出すとアンヘリカに向かって「──その……まぁ……宜しく頼む………」と割とぶっきらぼうに答えた。
「──ッ! は、はい! 宜しくお願いしますっ!!」
これ以上無いくらい極上の笑顔で喜びを表すアンヘリカ。うん、やっぱり美人には笑顔が一番似合う───じゃなくて、ちょっと待て!
アンヘリカとパーティーを組むと言う事はコーゼストの事を話さなくてはいけない訳で──それはそれで問題が山積みな感じがする訳で!
くっそー、ギルマスめ! 要は逃げやがったなぁ!!
『私もそれは失念していました──』
コーゼスト! お前もボケやがって!! 何が〈世界最高の魔道具〉だ!! 俺がコーゼストへ呪詛の言葉を頭の中に並べ連ねようとしたら───
『──では私が何とか致しましょう。マスターにキチンと私の事を有益と再認識していただく良い機会です』
本当に何とかなるんだろうなぁ!? はっきり言ってもう頭の中がぐちゃぐちゃだわ!!
『まずは、きちんと食事を摂ってください。話はその後と言う事で』
言いたい事は山ほどにあるが、とりあえずコーゼストの言う通り食事をする事にした。今朝はまだ何も腹に入れてなかったので俺もアンヘリカも腹ペコなのは間違い無かったのは事実だし──── 。
本当に後でちゃんと説明してくれよ! 俺はコーゼストに懇願して料理に向き直った。
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遅めの朝食を食べた後、コーゼストに言われて宿屋に戻った。宿屋の女将さんに冷やかされながら断ってアンヘリカに俺の部屋に入って貰う。少し緊張気味のアンヘリカには「大切な話が有るから」と頼み込んで来て貰った。勿論何も疚しい気持ちは無い。断言する!!
部屋に入るとコーゼストがアンヘリカに自分に触れさせる様に言ってきた。なのでアンヘリカに腕輪に触れる様に言うと変な顔をされた。
訝しみながらも腕輪に触るアンヘリカではあったが、その瞬間眩い光が腕輪から放たれ俺とアンヘリカを包み込む! そして──コーゼストの念話が頭の中に響く。
『初めまして、アンヘリカ様。私はコーゼスト。このマスターの腕輪が私そのものです。そもそもインテリジェンスアイテムである私は──』
コーゼストはアンヘリカに俺との出会いから現在までの顛末を話した。そう言えばコイツは説明するのがくどいけど上手かったなぁ────だいぶ端折られていたのが何だけど。
兎に角コーゼストは自身の事、ファウストの事、そして共生化の事……俺も知っている全てをコーゼストはアンヘリカに話した。
それらを驚きの表情のまま聴き入っていたアンヘリカはその意味を頭の中で暫く反芻していたみたいだったが、やがて何やら納得した表情をしてコーゼストに話し掛けた。
「コーゼストさん、ありがとう御座いました。するとこの件を知っているのは──」
『はい、貴方以外だとギルマスさんとルピィさんだけですね』
コーゼストは普通の会話に切り替える。
「では、それ以外の人には黙っていた方が宜しいのですね?」
『そうして頂ければ幸いです。余計な軋轢を生まない為にも』
「───わかりました。私を信用して下さったのですね、ありがとうございます。そして──」
そう言うとアンヘリカは俺の方に顔を向けて──
「信用して下さり、本当にありがとう御座いましたウィルフレドさん。この事はこのアンヘリカ・アルヴォデュモンド、決して他言致しません。我が一族の名に掛けてお誓い致します」
「──いや、そこまでして誓わなくていいから。それに信用じゃない、これからは信頼させてもらうよ」
俺は自分の台詞が照れ臭くて頬をポリポリ掻いた。それを見て吹き出すアンヘリカ。
「ぷふっ、うふふふっ。そんなに照れないでください、ウィルフレドさん」
「──ウィル」
「はい?」
「これからは仲間同士なんだから「さん」付けは止めてくれ。俺の事はウィルで良い」
「なら私もアンと呼んでいただけると嬉しいです。信頼の証として」
「……アン、改めて宜しく頼む」
「はい、宜しくお願いしますね、ウィル♡」
俺とアンヘリカ──アンは握手を交わす。何か色々と吹っ切ったみたいなアンの顔を見ていると何故か落ち着く。
だけど翠玉の瞳で見詰められると顔が真っ赤になるのが自分でも判るから止めて欲しい!
そしてこの後、アンはファウストにも挨拶と言う名のモフりを敢行した。ファウストよ、耐えろ──
ここに初めてのパーティーメンバーと2人目のモフリストが誕生した。
アンヘリカ、完全に押し掛けです。そしてそれに抗えないウィル(笑)
何気にイチャラブしているのは……気の所為です、きっと!
*アンヘリカ・アルヴォデュモンド
ダークエルフ300歳(外見20歳)。肌はやや浅黒い。腰までの長さのロングストレートの白髪。身長160セルト(1セルト=1cm)。 胸はそこそこのCカップ(笑)
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