あなたとなら、闇堕ちできるよ、ジャンヌ、あなたとなら。
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死んだ空
見上げてましろな芳しい
横顔さらした 魔女に純愛
今日私の友達が死んだ
友達なんて いないんだけどね
佳き夏の
大三角をおそわった
昔愛した人が死んだ
友達の為に死んでも良いと思った
友達なんて いないんだけどね
かわりに死にたかった
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っていう詩を詠んだのは
若すぎた、浅はかな、絶望気取り、そんな夏。
でも、
いまから考えると、
ほんとうは、代わりに死にたくなんか、なかった。
神様に裏切られて、ね、
絶望のうちに死んでいった魔女の悲しみを
私くらいはわかってあげられると思っていた。
けれど、いつの頃からか、
死後、何百年かが経ち、
教会の偉い人あたりに、
聖人と認定されたあとの貴女は、
私には遠い人になってしまった。
貴女の心は、
それはそれは美しいもの、
だったでしょう。
けれど、信じていた人達に無実の罪で
その敬虔な詩を刻み込んでいた貴女の命を
ラクガキした紙切れを燃やすみたいに容易く
火炙りの刑で殺される直前、
それでもまだ、その心は、美しく、
一筋の闇もなく、白く輝いていただろうか?
私には、わかっている。
貴女はそれでも、神を信じようと血の絶叫を
青空に投げかけた。
その、最期の言葉さえ
誰にも届かなかった鉄の現実に。
貴女は、悔しさのあまり、
闇堕ちしてはいないだろうか?
私には、わかっている。
だから、いったでしょう?
私の好きな人はみんな闇がかりの人だけなのさ。
今日、私の友達が生まれ変わった。
あの人の、美しい心を、美しいまま、持った、
まだ、なにものにも裏切られるまえの、
清冽なジャンヌダルクの生き方を貫く凛とした顔。
だから、惚れないって。
そんな綺麗だけの聖女になんてさ。
なんども、いってるでしょ?
私の好きな人はみんな闇がかりの人だけなのさ。
だからさ、私には、友達なんてさ、いないのさ。
夏も過ぎ、秋も去り、苛酷な寒い心がやって来た。
友達って、必要?
友達ひとり持たない私は、
それでも震えながらでも、
ひとりっきりで、生きてっちゃうよ。
ジャンヌだって友達じゃない、
友達だった人が、
生まれ変わって、友達じゃなくなった。
あんなに綺麗になられたら、
もう、触れられないじゃない?
友達なんかじゃないってば。
生きてくことって、今も昔も、
やはり、それは、辛いものでしょう?
そのなかで、ひとつくらいは、
決して揺るがない希望があったりするわけですが、
それは、貴女がもう一度、
闇堕ちしたあと、教えてあげるね?
それまで、私とは、
こんな穢れきった痩せっぽっちの
プライドの高い野良の蛇なんかとは、
知り合いじゃないままで
生きて行ったが良いよ。
くだらない過去なんか、ぜんぶ忘れて、
貴女の最大の美点の
前だけ向いて歩いて行こう、よ。
ね?
でも、それで闇堕ち、どこでする?
(あなたとなら、どこでも、いつでもOKよ)
ウレシ。




