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ぷろろーぐ

 日も暮れかけた公園。そこに二人の子供がいた。

 一人は女の子の様に愛くるしい顔の少年。もう一人は外見、服装共に大人びた雰囲気の少女だ。

 少年は愛らしい顔を歪ませながら泣きじゃくり、少女はそれを見て困ったような表情を浮かべている。


「ぅぐ……ひっく。ほ、ほんとに、ひっこしちゃうの……?」

「……うん、ごめんね。私も渚と一緒にいたかったんだけど……私にはどうしようもないから」

 渚という少年の泣きながらのたどたどしい問いに、少女は諦めたような苦笑で答えた。

 少女にとってはいまさらの質問で、とうに覚悟を終えていた問題だったが、少年にとってはこの世の終わりのように信じられない出来事のようだった。

 現に先ほど引っ越しの事実を教えてからずっとこの調子で、泣きやむ気配がない。

 瞳を何度も擦り目が腫れてしまった少年の痛々しい姿に、少女の瞳も潤みそうになる。

 こうなることなんてわかっていたはずなのに。これは一月前にわかっていた事実を今の今まで黙っていたツケなのかもしれない。

 少女はそう思うが、いつ言ったとしてもこの少年は悲しんだだろうとも確信していた。

 少女は純粋で心優しいそんな少年のことが大好きだった。だからこそ泣いてほしくなどなかったのに。


「もうあえないの……?そんなのやだよぅ……」

 更に顔を歪ませ大粒の涙を零す少年。

 渚の泣いている姿など見たくないのに。どうしたものか、と自身の涙がこぼれないように、自然と上向きになった頭で思案する。

 わがままかもしれないけれど、私は大好きな渚に笑顔で見送ってもらいたい。けれど、いくら慰めの言葉をかけても引っ越すという事実はなくなりはしない。なら、どうすればいいのか。

 と、思考の渦にはまりかけたところで、ふと思い出した。

 渚に伝えたいことがあったのだ。


「ねぇ、渚」

「……うん」

「私たちはもう二度と会えないって訳じゃない。いつになるか分からない、でも私は渚に会いに戻ってくるよ」

 少女は少年の肩に手をやりじっと目を合わせる。

 その言葉はその場凌ぎの慰めではなく、本心から出た言葉だった。

 渚とは離れたくはない。でもそれはどうしようもないことだ。だからいつか自分から渚に会いに行こう。

 引っ越しが決まった日に考えていたことは、少年のことばかりで、出た結論がそれだった。

 少女にとって唯一の気がかり。臆病で泣き虫で少女の後ろばかりをついてくる少年のことが少女は誰よりも心配だった。

 ずっと一緒にいるのだから変わらなくても問題ないなんて自分勝手にも思っていたが、私がいなくなれば渚は一人になってしまう。

 渚に厳しいことを言うのは嫌だ。思いっきり甘やかしたい。でも、渚が一人で泣いているのはもっと嫌だ。

 だから、いなくなる前に伝えなければいけない。


「でも、ね。渚がそんな泣き虫なままじゃ安心して行けない。だから、私と約束をしない?」

「やく、そく……?」

「そう、約束」

 渚の言葉に満足そうに頷き、笑いかける。

 渚という少年は単純で、色んなことを同時には考えられないと少女は知っている。今はもう少女の約束という言葉が気になって泣き止んでいた。

 少女はそれを見て話を続ける。


「私はまた渚に会いにいく。でも、それまでにすぐに泣いたりしない男の子になること。何でもかんでも人に頼ろうとするんじゃなくて一人でどうにかすること。まぁ、簡単に言えばもっと男らしくなることかな。それが出来るなら私は渚にもう一度会いに行くよ」

 出来なくても会いに行くけれど、とはけして口に出さない。

 この少年にとって簡単なことではないとはわかっている。

 それでも、少年のことを信じて問いかける。


「どう?できる、渚?」


「もちろんっ!ぼく、もっとおとこらしくなる!」

 考えるまでもない、というような即答。

 渚の瞳は決意に燃えており、先程まで泣いていたのが信じられないほど活力に満ちていた。

 少女もそんな燃える少年の姿に嬉しくなり笑う。


 これならきっと大丈夫だ。


 少女は少年に小指をさし出す。

 それに少年は嬉しそうに小指を絡ませた。


「じゃあ、指きりしよっ」

「うんっ!」


「「ゆびきりげんまん――――」」





 ――――これはよくある少年と少女の別れと、使い古された再会の約束。



 これは変わった男の子と、変わらない女の子の始まりの物語。









どうも、TSと申します。

これはシリアスではありません。ラブコメです。

更新遅めになるかもしれませんが頑張りますので、よろしくお願いします。

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