いっそ俺が世界を書いてやる!
もしこうなれっていれば…
そう考える事はやはり無意味なのだろうか。
だが希望を持ちたいからこそそう考えてしまうのだろう。
だが世の中は残酷だ。いくらそんな空想を思いついたところで何一つ変わらない。
だから辛い結果にならないよう、自分が報われるように俺は今日も戦う。
「おりゃぁぁ!」
その日俺はダンジョンの一角にいた。
ズッシリと重い、未だにひと暴れした翌日には筋肉痛に襲われる銅剣を振り下ろしながらダンジョンの最奥まで目指した。
「良い加減新しい武器でも作って貰えば良いじゃない。」
「うるせぇなエナ!その為にこの依頼を引き受けたんだろうが!」
背後で支援しつつ憎まれ口を叩く女を睨んだ。
容姿こそ緋色のカールのかかった髪に赤い瞳、また瞳と同じ赤い色をしたリボンを付け〝黙ってさえ″いれば男が何人も寄ってきそうな女だが何より口が悪い。
「もうすぐ奥に辿りつくんだから、さっさとこんな雑魚やっつけてよね。」
こんな感じのやりとりが続いたのちようやくダンジョンの最奥まで辿り着いた。
今回の依頼はそこらのダンジョンの探索と極めて危険のつきまとうものだった。
しかし想像していたより魔物も下級の物ばかりで下手な開拓済みのダンジョンに出てくる魔物の方が脅威なのではないかと疑うほどだった。
「まぁともかく報酬さえ貰えば文句はないけどな。」
特に変わった物はなかった。かつて人が生活していたであろうベットと机がクッションのような厚さの埃に覆われていた。
「特別変わった物もないわね。報告する事もなさそうね。」
エナは周囲を観察し足早に部屋を後にしようとした。
「ちょっと待て!こんな適当でいいのかよ!?」
俺は慌てて引き留めようとしたが、何も聞かずそそくさと出て行ってしまった。
だが確かに変わったものは特になく、いつまでここにいても時間の無駄のようだ。
「せめて金目の物さえあればな。」
一人ぼやきながら机を物色していると奇妙な手鏡のようなものを見つけた、
片面は闇のように黒い四角形が純白に覆われその下には何やら丸いの形くぼみ、その裏の面は刀身のように鈍く輝くであろう銀色、何処かの名家の紋章だろうか果実のようなマークもある。
これはもしや何かの財宝か何かと、心を踊らせ恐る恐るこの奇妙な物体を眺めた。
そして妙に指に吸い付く、丸いくぼみに指が触れたその瞬間、周囲に閃光が如くまばゆい光が広がった。
「うぎぃぃ!」
ようやくダンジョンの暗さになれてきた目に日差しのようにまばゆい光が目に入り、まるで魔物のような声にならない叫びをあげた。
そして光を放った魔具と思われる物体を覗き込むと何やら可憐な幼い少女の絵画と見た事もない文字が現れた。
「何やってんのよタード。早くこんなとこから切り上げましょう。」
もうだいぶ進んでいたのだろうか壁で声が反響している。
「わーってるよ!」
俺は愚痴をこぼしながらダンジョンを後にした。