新キャラ続々
始業式の前に担任がわかってしまう。あのワクワク感を削がれてしまったにゃー子たちは、戦意喪失のような歩き方で会場の体育館にむかっていた。
マユが先にトイレにいってくるというので会場の入り口でにゃー子たちは、待つことにした。
次々押し寄せる人波に負けないよう、邪魔にならないよう待っていると、マユが甦った不死鳥のように小躍りしながら走ってきた。
「ビッグ…ニュース!!」
「どうしたの?」
マユの興奮した様子に一同覗き込む。
「イケメン先生と転校生が…キター」
まさに、絵文字そのもののようにマユは、高らかに宣言した。みんなの惜しみ無い拍手。それは、まるで長い冬を越え、ようやく訪れた春の到来を喜びあう歓喜の歌のよう。
にゃー子たちは、笑顔で体育館の中へ入って行った。中では、男子たちが何やら鼻の下を伸ばしてそわそわ、にやにや・・・。携帯片手に何かを撮影する者までいる。
「なーに、このいやらしい感じ・・・」
愛梨沙は、気持ち悪い雰囲気に辺りを警戒した顔で見回す。他の女子たちもうんざり顔だ。
「あーあれですよ、きっと」
メイが呆れた顔で壇上を指差した。新任の先生の中にひときわ目立つセクシーな女性。20代前半だろうか。Tシャツの上からもわかる豊満な胸、ミニのキュロット、白衣姿。カールされた髪を両手で揉みながら時折、生徒に向ける視線は色っぽすぎる。目が合った生徒に、にこやかに手まで振る始末だ。
「保健の先生だわ・・・」
呆れてはいるものの、マユの目線は羨ましげに胸にいっていた。
「あんなの、いいでありんす。で、例のイケメンは?」
焦れたように姫子がマユをせっつく。マユがお気に入りの本でも探すように端から壇上に指差しながら探していく。意外と先生に埋もれてしまうと見つけにくいものだ。
ーーーと、マユの指が止まった。横一列のはずが他の先生に遠慮しているのか壇上の奥へと追いやられていく。しまいには、壇上のカーテンの後ろの方へと件のイケメンが消えていく・・・。原因は、数学担当でだるまのような体格の大男、田淵のせいであった。
「こら、田淵邪魔だ、どけー!!見えねじゃねーか」
業を煮やしたマユが心にとどめていればいいものをそのまま吐き出してしまった。一瞬、ざわついた会場が凍りつく。マユは、無表情を装った。
「・・・・・・」
壇上の田淵は少し、怪訝な顔をしたが割とあっさりはじっこの方へとその巨体を滑り込ませた。その代わりに細身の優しい笑みをたたえた男性が押し出されるように前に出てきた。切れ長の目としわ一つない紺のスーツが見事にあっている。が、よろけながら出てきたその姿はどことなく憎めない。
「かわいいー」
男子に変わって、女子の黄色い声援が新任の紺スーツに飛んだ。
やがて、式が始まり新任各々のあいさつや担任発表で盛り上がった。
「保健の柏崎 雪乃です。怪我したら遠慮なくいらしてね。女子の皆さんには恋のお悩みもご相談受け付けますわ」
で、男子が大盛り上がり。
「堅苦しい挨拶は抜きで楽しくやりましょう。生物担当の上杉 伊知郎です。よろしく」
で、女子が大盛り上がり。
まさに三毛根高校は春爛漫。
教室に帰ってからもなお盛り上がるにゃー子たちの前に本日のメインディッシュ、ホームルーム。
「じゃ、転校生を紹介するわね…。ええと…」
薫子が教壇から教室をぐるりと見回す。
生徒たちもつられる。
しばらく、沈黙のうち…。
「しまった!俺だった。すっかり忘れてた」
いきなり、ナオトとリュートに挟まれた一人の男子生徒があわてふためきながら席を立った。
「ナオト、知り合いじゃなかったのか…」
「いや、リュートのダチかと思ってた…」
リュートもナオトも今の今まで話し相手が転校生だと気づいていなかった。そればかりか、周りのみんなやにゃー子たちさえもである。
リュートもナオトも今の今まで話し相手が転校生だと気づいていなかった。そればかりか、周りのみんなやにゃー子たちさえもである。
見てきたはずの情報局マユまでもうっかりしていた。
「えー、今日からお世話になります、犬養ワタル、みんなよろしくな」
あまりに、フレンドリーにクラスに馴染んでいたので一同呆気にとられていた。
しかし、理解したのちは、クラス一同から祝福と拍手の大喝采。
ワタルは、席に着いた。にゃー子にウィンクを残しながら…。
「にゃー子、あんた知り合い?」
「知らにゃい」
愛梨沙は、不思議に思い、にゃー子に訊ねた。あれは、明らかににゃー子にラブラブ光線を送っているサインだ。
だとしたら、おかしい。にゃー子は、神通力で人から嫌われず、好意を持たれるよう設定している。
しかし、ナオト以外の男性にはラブまではいかないようまこと都合よく設定されているのだ。
恋心を向けられるということは、にゃー子が神通力を解いている疑いがある。
愛梨沙は、問い質してみる。にゃー子は、とんでもないと首を横に大袈裟に振る。
300年以上待ち続けた恋物語を頑なに守り通したにゃー子が、そんなよこしまなことをするはずがない。
愛梨沙とにゃー子は、犬養の様子をただ、眺めていた。




