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化け猫じゃない、猫又!!そこ、重要なとこ

かえでが心の闇と闘っている頃、和馬は、鼻唄まじりで帰りの途に着こうとしていた。


山小屋は、あらかた燃えた。


証拠もない。


異空間を解き、小屋を背にした時だった。


和馬は、背中にとてもよく突き刺さる視線を何本も感じ恐る恐る小屋の方を振り返った。


もしや…。


まさか…。


そんなはずはない。


その狭間を心のメトロノームがいったりきたりする。


音を立てて燃え盛る小屋の前に人影が5つ。


真ん中の3つが直立不動の仁王立ち。


右端の2つはしゃがんでいた。1つはもう片方をかばうようにしている。


「言ったろ?縛られるのがキライだって。しかも、ボクのお気に入りの服、どうしてくれるんだい」


「約束守らないやつ最低にゃ。黒扇丸返してもらうからにゃ」


「あんたなんか、にゃー子たちにぶっとばされればいいんだから」


「女の子を縛った挙げ句手をあげて火ですか?最低を通り越して人間のクズです」


姫子だけは怪我している上に縛られて痛みの限界からかグロッキーである。


「お前らどうやって抜けたんや。神通力かかった縄やぞ。抜けるわけないやろ」


和馬は、間抜けな鳩時計の鳩のような格好でわめき散らす。


「かえでさんが私と姫子の縄を緩めておいてくれたの。ただの人間と怪我人だったからね」


愛梨沙は、にゃー子の小さな背中に身を潜めた。

「かえでのやつ余計なことしおってからに」


和馬は、舌打ちをした。


「もう、お前に勝ち目はにゃいぞ、素直に土下座して謝れ!!」


「アホぬかせ、女の四、五人ごときにわしがやられるかい。浪速の総大将いわれたわしやぞ、それに羽団扇もあるんや」


和馬は、これ見よがしに羽団扇を広げてにゃー子に見せた。


「浪速の総大将…。カッコわるっ」


「ネーミングセンス疑うな、ボク」


「ダサっ」


「見かけ以上に寒いですぅ」


明らかに生理的にムリといった軽蔑の眼差しをにゃー子たちは和馬にむけた。


「どうでもいいわ、そんなこと。目にモノ見せたるわ」


和馬は、羽団扇を持った手を高々掲げた。


和馬がニヤリと笑った。


「お前に、黒扇丸はあつかえにゃい」


今度は、にゃー子がお返しとばかりにニヤリと笑う。


「化け猫、吠え面かくなよ」


和馬が何事か唱え出す。


「にゃー子…」



不安そうに愛梨沙がにゃー子の背中にしがみつく。


「あーりん、大丈夫にゃ。心配にゃい」


すがる愛梨沙を優しく背中から離すとにゃー子は、メイに愛梨沙を預けた。


「おい、天狗!!一言だけ言っとく」


「なんじゃ」



「化け猫じゃない。猫又にゃ」


「同じやろ、どうでもええわ、そんなこと!」


「同じじゃない。そこ大事なとこ」


にゃー子は不敵な笑みを浮かべた。

睨みあう和馬とにゃー子の間に風がよぎる。


間合いを先に読んだ和馬が羽団扇に命令を下した。


「風よ、嵐よ、雷よ…」


ごうっという大きな音がこだまして辺りがにわかに暗くなる。


が、何も起こらない。


にゃー子は、頭のうしろで腕組なんぞしてニタリと余裕をかます。


「なんでや」


和馬は、必死に羽団扇をブンブン振り回して命令する。


「そんなに怒ったら黒扇丸が可哀想にゃ」


にゃー子が首を振り、両手を前に差し出してダメダメする。


「黒扇丸、黒扇丸ってモノにペットみたいな名前つけおってからに。あたまきたで」


和馬は、羽団扇を脅すように睨みつけるとイラついた口調で命令した。


そよ風チョロチョロがにゃー子たちの間を吹き抜けた。


にゃー子は、一人はらを抱えて笑い転げる。


「ええ度胸や。バラバラにしてもやされとうなかったらおとなしく命令きけや、おう?」


堪忍袋の緒が切れそうな和馬は、穏やかな口調で羽団扇に語りかけた。脅しが効いたのか渋々、空に大きな竜巻を伴った雷が発生した。


一同身構えるが、にゃー子だけはやはり、動じる気配はない。


「ざっとこんなもんや。びびったか、化け猫」


にゃー子は、首を横に静かに振る。


「へへ。そうかい。せいぜい強がってろや。ーよし、今や、行け!!あいつらを貫け!!」


竜巻はその場から動かない。


和馬が何度命令しようがなだめようが、すかそうが、おどそうが竜巻は、留まったままだ。


「ええかげんせんかい」


和馬は怒りに任せて、地面に思いきり羽団扇を叩きつけた。


その瞬間、羽団扇は、ゴムまりの如くバウンドし、和馬の顔にベタッと張りついた。


「おう?」


いきなりのことで動転した和馬は、引き剥がそうと必死に引っ張るが吸い付いたかのように剥がれない。


息苦しさにのたうち回る和馬に真面目な顔になったにゃー子が言う。


「にゃ、お前には、黒扇丸はあつかえにゃいだろ?」


にゃー子が右手を自分の肩口の高さほどにかざすと羽団扇は、サッと和馬から離れ、その手の中におさまった。


「おのれ、こけにしおって…。カラスども、いつまで寝とるつもりや、起きんかい。コイツらぶちのめすんや!!」


カラスたちは、起き上がったものの、嫌そうに和馬とにゃー子たちを見比べている。


さっき、嫌というほど彩萌に叩きのめされているからだ。


かといって主の言うことを聞かねば後で痛い目にあうのはわかりきっている。


どうしたものか、カラスたちはまごまご、もそもそ落ち着かず、二の足をふんでいる。



「そうかい。お前らわしの言うことを聞けんちゅうわけやな」


しびれを切らした和馬は、近くにいた一匹のカラスの首根っこを押さえて地面に叩きつけた。


「こうなりたいなら何もせんでもええぞ」


「お前、自分の手下じゃないか!!」


さすがに敵とはいえ、カラスが不憫。にゃー子は、和馬を指差した。


「じゃかしいわい!カラスども、やれ!!」


仲間のやられたようすを見てカラスたちの目付きが変わった。


鋭いダミ声を発すると一斉ににゃー子たちに空から襲いかかってきた。



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