回想 月千代3
月千代の胸のうちを誰より理解していたのは、長寿であった。長寿も元は誰かしかの飼い猫であったことから、飼い主がいかに愛情深く猫を愛してくれるかよく知っていた。なればこそ、月千代の胸の苦しみは誰よりも理解できた。
長寿は、月千代の良き相談相手であった。そして密かに長寿は月千代に恋心を抱いていたのであった。
当の月千代は、長寿が相談に乗ってくれるので感謝はしていたが、清兵衛の心配で頭が一杯なので正直それどころではなかった。
それぞれが、思い思いの気持ちを胸に月に手を伸ばしてみる・・・。
しかし、それは、はるか遠く届くことのない痛いほど淡すぎる思い。
そのことは、長寿にも分かっていた。自分の気持ちがたとえ、月千代に届かなくても、長寿は何とかして月千代を救いたいと思っていた。
時の流れをせき止めるために長寿は身を焦がした。
約束の日が来た。
月千代が水を汲みに行った隙だった。
月千代が戻ってくると清兵衛は、のどをやられ虫の息だった。そばには、長寿がいた。
月千代は長寿がやったと直感した。月千代は怒りで、猫又となり、長寿に跳びかかった。
長寿は、月千代のためといった。月千代を生かすためだといった。
月千代には理解できなかった。月千代は長寿を仕留め、清兵衛のもとへ駆け寄った。
最後の最後で、恩をあだで返してしまった。涙があふれてきたその時、珍しくも来客が清兵衛のもとに来た。
中の様子を見た客人は、悲鳴を上げると、一目散に逃げ出した。すぐに村人たちが鍬や鎌を手に駆け付けた。
清兵衛は、村人たちに息絶え絶えで違うというそぶりを見せたが喉をやられていてうまく伝わらない。
そのうち、村人の一人が月千代に襲い掛かった。
清兵衛は、月千代を抱き寄せた。そして声にならない声で逃げろと叫んだ。清兵衛は月千代を最後の力を振り絞って突き飛ばした。
そこで、清兵衛は息絶えた。
襲い掛かってくる村人を払いながら、あふれ出る涙をこらえながら、必死で逃げた。訳も分からず、ただひたすら。
月千代は清兵衛殺しの犯人に仕立て上げられてしまった。




