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あーりん思いのほか活躍す

「メイは防御を、にゃー子は攻撃に力を集中して!!」


突然の指示に愛梨沙以外のその場の者たちは、一瞬動きが止まった。


「にゃー子、言うとおりにするのよ」


愛梨沙の剣幕ににゃー子とメイは何かを感じ、阿吽の呼吸でそれぞれ構えを取った。


彩萌と華閻がかく乱を狙い別々の方から襲い掛かった。


「上と右から蹴り、次両方とも左から突きと蹴り」


愛梨沙の指示通り、メイは術による壁を作り出し、彩萌たちの攻撃を防いだ。


その後も次々と矢継ぎ早に出される攻撃を愛梨沙の指示通り防いでいく。


攻撃に集中できるようになったにゃー子は、華閻のすきをついて、蹴り飛ばした。


次いで、横にいた彩萌に回し蹴りを加え、弾き飛ばした。


彩萌は、愛梨沙の傍の室外機まで飛んできた。


彩萌は室外機の横ヘリを使って、反動し、勢いをつけてにゃー子に反撃しようと試みた。


ところが、足がズッとすべってうまく力が伝わらずバランスを崩した。


おまけに着地した床もなんだかよく滑る。


「なんだい、これは」


イラついた、彩萌がよつんばいで床を触る。


彩萌の手についたぬめっこいもの、匂いからしてワックスだった。


それは、いてもたってもいられなかった愛梨沙が磨いていたモップについていたものだった。


彩萌は、上履きを脱ぎ捨てると、走って、にゃー子の元へ飛び込もうとした。


「させないわ」


愛梨沙は、持っていたモップを彩萌にぶん投げた。


くるくると弧を描くモップは彩萌に一直線に飛んでいき、彩萌の足に絡みついた。


彩萌はそのまま、にゃー子たちの手前でうつぶせで倒れこんだ。


「今よ、メイ!!彩萌を押さえて!!」


「わかりました」


メイは、術符に神通力を纏わせ、彩萌を完全に封じ込め身動きできない状態にした。


「今度こそ逃がしません」


何本もの土くれの腕が完全に彩萌を羽交い絞めにした。


「おのれ、貴様ら・・・」


華閻の目が赤く光る。


「あーりん・・・。にゃー子も同じ気持ちだよ・・・。」


「にゃー子?」


にゃー子は、いつものにゃー子の言葉使いに戻っていた。何が私と同じ気持ちなのか・・・。にゃー子の言葉に愛梨沙は、戸惑った。


「藤崎が・・かわいそう。仲間を思うあーりんの気持ち。同じ気持ちだよ。にゃー子が助ける。藤崎を絶対助ける」


「にゃー子・・・」


同じ気持ち。愛梨沙は、にゃー子と二人追試を受ける羽目になった時のことを思い出した。頑張れば道は開ける。


仲間を思う気持ち。愛梨沙は、修学旅行のにゃー子を思い出した。一人置き去りにされたマユのために必死で走ったにゃー子のことを。



「にゃー子!!」


「にゃ~、っしゃ~」


愛梨沙の叫びににゃー子は踏ん張るような姿勢で気合を入れなおした。体からは、青白い妖気が再び湧き上がる。


「神通力、華炎放射鬼かえんほうしゃき


華閻の正拳突きから炎の塊が無造作に乱れ飛ぶ。

「風を纏いし水の御霊よ、炎のつぶてを鎮め奉らん!!」


にゃー子はそういうと左手の羽団扇を胸の前で水平に打ち払った。


水の御霊と炎の御霊が激しく正面からぶつかり合う。互いに一歩も譲らない。


徐々ににゃー子が押し始める。


すると、それまで、伏せをしていた銀狼が主人の危機を察したか大きくいななき、にゃー子に襲い掛かろうとした。


「あぶない」


愛梨沙は、とっさに自分の右足首にてをやると、ブチッとなにかを引きちぎって両手で構えた。


そして、サトリの声を頼りに声の限り叫んだ。


「魔除けの殺生石よ、悪しき狐の御霊をその身に封じ、我らにご加護を与えたまえ」


愛梨沙が言い終わると、殺生石が光り輝き、薄暗い異空間を昼間以上に明るく照らし出した。


銀狼のすべてを吸い込まんが勢いで風のような唸り声を上げた。


ひきずりこまれまいと必死で地面に爪を立てもがく銀狼。


愛梨沙は、自分が引っ張られているのか、逆に弾き飛ばされているのかわからないぐらいの風圧を感じた。



見えない風の壁が愛梨沙に向かって、ぐいぐいと押し込んでくる。


自慢の前髪ももはやなす術がない。


にゃー子と同様じりじりと愛梨沙も銀狼を引き寄せ始めた。


愛梨沙は、息苦しさに耐えた。何度も手を放したい衝動にかられながらも目を瞑って耐えた。


イジデモ ハナサナイ


愛梨沙は死への恐怖からそう思ったのではない。この状況の中で銀狼を吸い込む過程で愛梨沙の思考からそれは完全に消え去ってしまっていた。


仲間のために・・・。


琴音のために・・・。


今、愛梨沙は、殺生石を両手で握りしめ意地でも離さない。


銀狼の後ろ脚がふわっと浮き始めた。


それでも、地面のわずかなくぼみ、傷に爪を立て引き込まれんとする銀狼。


だが、いよいよ耐え切れなくなった。銀狼の屈強な爪も殺生石の風圧の前では、小枝同然。銀狼は、断末魔の雄叫びとともに殺生石の中に封じ込められていった。


吸い込む間のまるで、ごつごつとした岩石のような感触がいまだ残るしびれた手。それを見ながら、愛梨沙は、大きく肩で息しながら、その場にしゃがみこんだ。


「おのれ、取り上げたはずの殺生石。なぜ、貴様が持っていたのだ」


華閻は、にゃー子との攻防の手を休めず、愛梨沙を睨みつけた。


「狐を化かせるなんて、私も大したもんでしょ。彩萌が石に目を付けたときから、手は打ってあるの。ペンダントは、偽物のただの石。本物は足にしてたの。アンクレットも立派なおしゃれでしょ」


愛梨沙は、華閻にあかんべをした。


「ならば、望み通り、貴様から死ぬがよい」


愛梨沙は、その展開は、想像してなかった。


カミサマ タスケテ


華閻が、にゃー子の横をすり抜け、愛梨沙に向かって上から急降下する。


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