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にゃー子と琴音最終決戦開始!!

「ついてきたのか・・・」


「あ、あったりまえでしょ。にゃー子を一人になんてできないわ、あたし何にもできないけど…」


「そうです。わたしも藤崎さんのことは許せません」


愛梨沙もメイもにゃー子の口調から本気モードに入っていることは容易に想像できた。


メイなら一緒に戦うこともできるが果たして勢いでついてきてしまったものの、愛梨沙はどうしていいかわからなかった。


とりあえず、見学しときます、と言って相手の妖怪どもが「はい、そうですかわかりました」と言ってくれそうにはとても思えない。まして、愛梨沙だけが命を狙われないという都合のいいことも…。



愛梨沙は、いざという時のため、廊下に放り出してあったモップを握りしめた。


にゃー子は鋭い目つきで、五感を働かせながら、ゆっくり屋上の方へ向かった。


相手の妖気を探っているのだ。


どうやら、琴音は妖怪としての存在をすでに誇示しているようだ。


その妖気をたどりながら、にゃー子は迷うことなく屋上のドアを開けた。


にゃー子たちの目の前にはフェンスに座っている彩萌とそのフェンスに寄りかかっている琴音の姿があった。


異空間が一気に広がった。


あたり一面が真っ暗になった。それ以外は、現実世界と何ら変わりのない造形物が広がっている。そして、真っ暗であるにもかかわらず、非常に見渡しがよい。


不思議で不気味な情景に愛梨沙は、一人あたりを見回してしまった。


(これが異空間なんだ)


愛梨沙は、息をのんだ。もしかしたら生きて帰れないかもという不安がよぎった。


「狐、二度目はないと申したはずじゃ」


にゃー子の言葉には答えず、彩萌がフェンスから飛び降り、琴音の前に二、三歩、歩み出た。


「ムカデもお前らの仕業か・・・」


「ムカデ?そんな下等な生き物、私がしもべにすると思って?そんなことよりも初めに言っておくけど…」


琴音がそこで言葉を切った。虚ろで、すべてを見下したかのような表情を浮かべている。


薄紅色の妖気が二度、琴音の体を足の方から頭に向かってくるりと旋回した。


それを見届けると琴音はさらに言葉を続けた。


「私は狐ではないわ。狐は、彩萌よ。ただ、九尾の狐ではないけれど。さっきこの娘には約束してあげたの。あんたたちをぶちのめしたら憧れの九尾の狐、銀狼に会わしてあげるってね」


「そなたが何者かは知らぬが、その体から離れよ!!その体は、藤崎琴音のものぞ」


「嫌よ、大事な人質ですもの。あんた、私がこの体に入っている以上、本気で闘えないでしょ?悔しかったら無理矢理引きずりだしてみれば…。猫又さん」


にゃー子の体から青白い炎の妖気が立ち上った。

メイも術符を左手のひと指し指と中指の間に挟み身構える。


四人がお互いの出方を探り、じりじりと間合いをとりながらにらみ合いを続ける中、愛梨沙だけが蚊帳の外に置かれた。

それをいいことに愛梨沙は、屋上に設置されているエアコンの室外機の物陰に隠れ、顔だけだしてそっと闘いの様子を覗き見た。


にゃー子が動いた。


青白い炎をまとった拳で琴音の顔を殴りにかかった。


琴音は、斜に構え、右手の平でそれを包み込むように押さえた。


「猫又、お前には三つ罪がある」


琴音は、そう言うと、拳をつかんだまま、にゃー子の体をズズッと二メートルほど押し返した。


薄紅色の妖気と青白い妖気が混ざりあってにゃー子と琴音の体にまとわりついた。


琴音の口調も変わった。


「一つは、わが飼い狗、九尾の狐の銀狼に手負い傷を負わせたことじゃ。あの晩、深い痛手を負って帰ってきた銀狼の哀れな姿、未だに忘れられぬ。聞けば、猫又どもにやられたというではないか。猫又は全部で五匹。うち三匹は、銀狼が仕留め、一匹を生け捕りにして帰ってきたものの、逃げた一匹は行方知れずと言うではないか。お前の名を吐くまで来る日も来る日も生け捕り猫をなぶり通してくれたわ、気の済むまでな、ここで巡りおうたが最後。覚悟せよ、月千代!!」


琴音は、更に力を入れて踏み込んだが、今度は動かない。

「なぶり殺した、と?まて、それでは、あの時誰ぞ生きていたと申すのか?誰じゃ、名を何と言った、申せ!!」


にゃー子は、琴音に叫んだ。


「そんな腐れ猫一匹の名前なぞ、とうに忘れたわ、我慢強い若き雄猫だったわ」


にゃー子は、一瞬目をつむった。長寿の姿が頭をよぎった。


そして、再び目を開くと唇を強く噛みしめ、琴音をにらみ返した。


「狐の方から挑んできたのじゃ、猫又の神通力を奪うためにな。確執があったとはいえ、皆かけがえのない仲間であった。その仲間の命をなぶり殺しにされたとあってはこちらも黙っているわけには参るまい。覚悟せい」


にゃー子は、握られた拳を振り切ると左足で鋭い蹴りを琴音の右脇腹に叩き込んだ。


力を入れ、不意をつかれた琴音は、まともににゃー子の蹴りを喰らい屋上の床を派手に転がっていった。


にゃー子は琴音を追撃しようとした。それを見て、メイと対峙していた彩萌が跳んだ。


にゃー子の後ろから背中に蹴りをお見舞いしようとしたのである。


「させません!!」


メイが床に手をやり術符を這わせると硬い床が生き物のように波打ちはじめた。


彩萌のところへ到達すると大きな土くれの手となり、彩萌の足を捕まえ、倒した。


「あなたの相手は私ですよ、彩萌さん!!」


メイは、網を手繰り寄せるようなしぐさをした。


大きな土くれの手は、振りほどこうともがく彩萌をメイのところまで引きずっていく。



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