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第一試合!!

「忘れないうちに…。マユおでこ貸して」


にゃー子はマユに前髪をあげて、おでこをだすように促した。


「こう?にゃー子」


マユは、疑問に思いながらも、にゃー子の指示に従った。


にゃー子は、静かに自分の額をマユのおでこに押し当てた。


「これでよし!さてと…」

にゃー子は、うってかわって厳しい表情で刺客が潰されている山の方へ向き直した。


愛梨沙たちもにゃー子が向いた方へ目をやった。

「え、嘘…」


愛梨沙は、自分の目を疑った。


警官が積み重なった山が噴火でもするかのように揺れながらモコモコと動き出したからだ。

「六人がかりっていったら相当な重さがあるはずよ、化け物なの?」


薫子も顔色が青ざめた。

必死でおさえていた警官たちは、暴れ馬に振り落とされるがごとく、刺客のちぎれた服の一部を握りしめたまま遠くのほうへ激しく転がっていった。


警官たちは、刺客の男に食らいついていくものの、一人また一人と、軽くつまみあげられながら空高く放られていった。


刺客の男に拳銃発砲を試みるも、全て貫通してしまい、警官は、周囲の安全のため、撃ちかたを止めた。


その間にも、男は、にゃー子にじりじりと歩み寄ってくる。


にゃー子とメイは身構えた。


と、男が急に気持ち悪い奇声を発した。


「うっ」


にゃー子たちは、耳を塞いだ。


周りにいた者たちが、バタバタと倒れていった。

愛梨沙はかろうじて意識を保ったが、マユと薫子は、買い物客や警官らと同様倒れて気を失ってしまった。


「邪魔者は寝かしたって訳か…、なら、存分にやらしてもらうにゃ、メイ!術符で…」


にゃー子が横にいたメイを見ると、メイは、下を向いて、術符を使い捨てカイロを揉むかのように両手で捏ね回していた。

心無し、メイの顔がほんのりピンクを帯びている。


「メイ!早く術符を」


愛梨沙とにゃー子は、口々にメイに促した。


「無理ですぅ~、私ぃ~できませ~ん」


メイは足でのの字を書きながら尚も術符をもみくしゃにして答えた。


「何言ってんのよ、命かかってんのよ、メイしっかりしてー!!」


愛梨沙は、声の限り叫んだ。


「あーりん、ごめんなさい。私、愛する沖田様を傷つけるなんて、死んでもできませんですぅ~」


メイは術符を放棄して、顔を隠して嫌々のポーズをとった。


「・・・」


近藤や土方なら何度か写真を見たことがある。歴史嫌いの愛梨沙はもちろん、にゃー子にも沖田はわからなかった。どうも刺客は、新撰組の沖田総司らしい。にゃー子は頭を抱えながら、

メイが沖田と名指しした、刺客の男の攻撃をかわしながら次の手を考えていた。


(神宮・・じゃなかった、術師なにやってんのさー、もー。誰か、私の声、聞こえてる?聞こえてたら、手あげて、早く!!)


愛梨沙は、耳元で言われてるような声にはっとして、周りを見渡した。メイは相変わらず、一人妄想にふけり嫌々している。にゃー子は真剣に相手の攻撃を受けている。誰もこの声に気づいていないらしい。愛梨沙は、恐る恐る右手をあげてみた。


(望づ、じゃなかった、ええと、その、あの、人間?そう、その人間さん、聞こえてるのね?よかった、私ね、…あなたたちの味方だから、安心して)


愛梨沙は、取り繕って、いちオクターブ高い声にきな臭いものを感じて、だまってしまった。


(ぅ、嘘じゃないわ、私、サトリ。サトリよ、お月さんの友達の…。あなた、愛梨沙さんでしょ、信用して、時間がないから手短に言うわ)


愛梨沙は、サトリという言葉を聞いて、半分信じてみる気になり、声に出さずに心の中で念じてみた。


(・・・半分疑ってるようね。まあ、いいわ。いきなり、いわれたら誰でもそう思うわよね。とりあえず、術師さんが落とした術符を拾って。そしておでこにあてて、念じて。私が神通力ちからをその札にいれるから)


愛梨沙は、嫌々し続けるメイの足元から、カニ歩きのカニハサミでそっと術符を拾い上げた。


(そそ、おでこにあてて)


ごくりと息をのみこんで、愛梨沙は、まぶたを閉じるとカニハサミした術符をそのまま自分のおでこにあてがった。


(今よ、飛ばして)


「飛べ!!」


愛梨沙は、サトリに言われるがまま、術符に命令を下した。すると、青白く光った術符は、ものすごいスピードで沖田の腹のあたりを貫通した。


沖田は、一旦倒れたが、よろよろと起き上り、また一歩ずつにゃー子の元へ歩き始めた。


にゃー子は、沖田を睨みながら、ロザリオに手をかけ、羽団扇を出す準備をした。


そして、にゃー子がまさに羽団扇を出そうとした瞬間、沖田は膝をつきそのまま前へ崩れ落ちるとサラサラと砂のように消えてしまった。


琴音は、琴音という「生身の人間」の中で扱える神通力ちからのキャパシティの小さいことを恨めしく思った。元の姿ならば・・・。


そして、沖田が消えると同時にそんなことを思いながら、意識を失ってしまった。神通力ちからを何時間にもわたり何種類も使い分けたのが原因だった。


琴音が、意識を失うと周りの気を失っていた者たちは、目を覚ました。









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