れべる2
その頃、京都駅に近くにある、全国展開の大手ショッピングモールNYAONの駐車場には、琴音と彩萌がいた。
「琴音。アイツ、もう、十人倒してる」
彩萌が意外そうに言った。
「なめちゃダメ。折り込み済みよ。そろそろ、面白くしてあげる。レベル2に引き上げよ」
琴音がニヤリと笑った。
そうとは知らない、にゃー子は、地主神社を爆走していた。
参拝を終えると、元来た道、石畳の上をにゃー子は、ひた走る。
「目をつぶって、しっかりつかまるにゃー」
「にゃー子、何する気!?」
良からぬこと考えている気満々のにゃー子の横顔に愛梨沙は不安を隠せない。
「恋の願い事一つ唱えて~、跳ぶよ~」
愛梨沙は、わけもわからず、宇都宮のことを思ってにゃー子に身を任せた。
体がふわっと風をうけ、すぐに軽い衝撃がからだ全体に拡がった。
「もう、いいよ。二人とも」
にゃー子はそう言うと後ろを振り返り、満足げにニマッと笑った。
「イエスっ!!」
にゃー子は拳だけの小さなガッツポーズをとった。
愛梨沙が振り返ると、恋占いの石と大きく書かれた石が遥か後方に見えた。
次いで、八坂神社前をにゃー子はひた走る。
赤く大きな鳥居が目を引く。
不意に女の子とぶつかりそうになった。
「うわぁぁぁ、何ですのん」
女の子は振り返ると、迫り来るにゃー子におののき、神社の方へのけ反って倒れた。
年格好からするとにゃー子たちと同い年らしい。
奇抜な原色のモザイクカラーのシャツにジャケット。下はキュロットという変わったいでたち。肩からポーチを提げている。
にゃー子自体は全く接触していないが、かなり派手に大きく飛んで、黒ぶちめがねがぶっとんでいった。
「メガネがないと、あっちし、なんもみえへんですのん」
女の子は、片手にこれでもかというくらいの包帯をぐるぐる巻きにしてあった。
それでも、痛がりながら這いつくばって、両手で地面をまさぐりながらメガネを捜している。
にゃー子は、急ブレーキをかけ、女の子の下へ戻ると一旦、両脇の二人を地面に降ろした。
「大丈夫?」
にゃー子が女の子に声をかけてしゃがんだ瞬間、にゃー子に被さるように人影が映った。
「にゃー子危ない!!」
愛梨沙が叫んだ。
と同時に、新撰組の格好をした刺客の顔に、にゃー子の肘が入っていた。
刺客はザッと音を立てて崩れると、再び、逆再生の如く元の姿に戻り、にゃー子に真一文字に斬りつけた。
「にゃんだ?蘇りやがった!!」
にゃー子は、予想外の出来事に不意をつかれて、よけたはずみに転んでしまった。
「土に宿りし、操り御霊よ、元の姿に環り奉らん!」
メイの声と共に神通力を纏った術符が刺客を貫いた。
刺客は、今度こそ跡形もなく消え去った。
「メイー、サンキューにゃ」
メイがにゃー子にウインクしながら、オッケーサインを出した。
「おっと、忘れてた」
にゃー子は、まだ、メガネを捜している女の子を助け起こすと、愛梨沙が拾って手にしていたメガネを女の子にかけてあげた。
「親切にありがとうですのん」
ふらつく足どりで女の子がお礼を言った。
「いえいえ」
にゃー子たちが応えた。
「あれ?手、怪我してたんですか?」
メイが、包帯している手に腕を伸ばした。
メガネをかけなおした女の子は、手を伸ばしたメイの顔を背中を丸め神妙な面持ちでじっとのぞきこんだ。
「お前…神宮寺だろ…」
包帯してる手を露骨に引っ込めて、女の子は、目を三角にして、メイに問いかけた。
「はい?」
メイは、助けた挙句、初対面の人に名前を呼ばれなぜ怒られるのかわからず、戸惑った。
「おうのれぃ、どの面下げていうとんのじゃ…あっちしは、おまんのせいで…」
今にも殴りかからんとする女の子の表情にメイは一瞬たじろいだ。
「姫子ー、何してるの、早くー」
「あいなー」
姫子と呼ばれた女の子は、尚もメイを憎々しげににらみながら、声した方へ消えていった。
「メイ。知り合い?」
愛梨沙がメイに聞いた。
「いえ、知りません。でも、あの子に話しかけた子は、うちの高校の子ですぅ、心配してあげたのに、睨まれるなんて、感じ悪いですぅ!」
首を振りながら、いかにも心外とメイは、口を尖らせた。
「変わった奴いるにゃ」
「私、どっかであの声聞いたことある気がするのよね」
愛梨沙は、首をかしげた。




