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目にものをみせてやる

運命の修学旅行がやってきた。


新幹線に揺られて、二時間半。


にゃー子たちは京都にいた。


秋とはいえ、京都が紅葉するにはまだはやい。それでも、夏の盛りとは違って山々や寺院の様子などはどっしりと重みを増した風情となってきている。


京都は秋晴れが広がっていた。修学旅行中も特に心配なさそうである。


修学旅行の日程は、三泊四日の予定だ。



一日目は、制服のまま全体行動。バスで、移動を繰り返し清水寺などを見て回った。


そして、二日目、三日目が自由行動となり、各自が設定したプランによって見学する運びとなっている。


ここからは、私服だ。散策がメインなため、女子と言えど自然スタイルはある程度決まってくる。


にゃー子たちは、色合いこそ違えど、歩きやすくカジュアルな秋らしい

スーツやパンツルックで統一した。


もちろん、思い思いの個性は、散りばめられているのだが。


二日目は、メイの提案で新撰組ゆかりの地を散策しながら見て回ることにした。


光縁寺と呼ばれる寺から出発した。


「ここは、新撰組の屯所近くで、隊士18人のお墓があるとこなんですぅ。山南敬助とか・・・」


メイの解説はとどまることを知らない。ほかの三人はただ、羅列される単語をぽかんときいているだけしかできなかった。

続いては、壬生寺。


「ここは、地蔵尊が重要文化財で、近藤勇の像が・・・」


この調子で、メイのガイドさんより詳しいガイドを延々三人は聞かされながら、八木邸、新撰組記念館、七条油小路辻、池田屋跡を見て回った。


難しいことは、よくわからなかったが、とにかく真剣に生きた人々の熱いドラマの息吹だけは三人にも伝わった。


八木邸の刀跡は、それを如実にあらわしていて、三人とも見入ってしまった。


こうして、歩き通した修学旅行二日目は無事終了して、宿泊しているホテルに四人は戻ってきた。


大きなエントランスに、赤い絨毯調の床。


年季は、入っているものの修学旅行にしては、なかなかのホテルである。


さすがに国際と銘打つだけあって、修学旅行生相手でも抜かりない。



「楽しかったけど疲れた」


マユがふくらはぎをたたきながらロビーに着くなり言った。


「もうちょっとまわりたかったですぅ」


メイは、疲れた様子もなくさびしそうだった。


「明日が本番にゃ」


にゃー子は明日に向かって前向きだった。


「ふ~ん、あんたたち、ナオトたちと見学してまわるの?」


振り向くと、琴音と彩萌がたっていた。


「あんたに関係ないでしょ」


愛梨沙が琴音を睨みつけて言った。


「あるわよ。二日間私たちと見学の予定だったのに、一日すぽっかされるんですから」


「あ、そう」

愛梨沙は、勝ち誇ったように琴音に言った。


「恋は止まらんのにゃ」


にゃー子が琴音と彩萌に捨て台詞を吐いたところで、愛梨沙たちは、ロビーから退散した。


ロビーには、琴音と彩萌が残された。


恋は止まらないんだってさ、琴音、どうする?」


不敵な笑みを浮かべた彩萌が頭の後ろで手を組みながら言った。


「上等じゃない。じゃ、止まりたくても止まらないようにしてあげるわ。見ものだわ」


「あーあ、琴音を怒らせちゃった、ボク、知~らないっと」


彩萌は、組んでいた手を万歳するとそのまま、自分の部屋の方へ歩いて行った。


「見てらっしゃい」


あとに残された、琴音が鋭い目つきでもう一度言った。


そうとは知らないにゃー子たちは、三日目の朝を迎えた。


気持ちいい青空が広がっていて、絶好の観光日和となっていた。


リュートが準備に手間取っているとのことで、にゃー子たちは先に二条城のあたりに来ていた。


「宇都宮の奴、こんな時に桜林の足ひっぱって・・・」


愛梨沙が少しイラついて時計を見ながら言った。


「いいよ、待とうよ。それよか、あーりん。パレードやるみたいだよ」


大宮通を使って新撰組関連の仮装行列をするようだ。沿道にも人だかりができている。


「ラッキーですね」


メイもスマホを片手に構えて、見ていた。


「そろそろはじまるみたいだね・・・、私なんか喉かわいちゃった、みんなは?」


マユが三人の顔を見回した。


間髪入れず、全員でじゃんけんの合図がかかった。


マユが一発で負け、ジュース買出し係に決定した。


「なんかここんとこ、負け癖ついてるし・・・」


マユは、あたりを見渡したが、ジュースの自販機が見つからなかった。


通りを挟んだ向かい側にコンビニを見つけて、遠いな、と舌打ちしながら走って行った。


残った三人は、再びパレードに目をやった。


ぐにゃりと空間が歪み一瞬あたりが暗くなった。


にゃー子とメイはその異変に気付いた。

メイ」


「様子が変ですよ」 


「何が?」


愛梨沙だけが三人の中で気づかない。


「きゃー」


パレードの反対の方から20人ほどの異質な集団が、一糸乱れぬ足取りで行進してきた。格好は、新撰組と思しきいでたちである。武骨で粗暴だがあまりにも似合いすぎている。


関係者が止めようと割って入ったのだが、投げ飛ばされてしまった。警備員や警察も異変に気づいて集団に止まるよう促した。


が、その時、彼らは鞘から刀を抜いた。そして、びゅんと風を切って露払いをすると、にゃー子たちの方へ走り出してきた。




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