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術師覚醒

にゃー子は、ひざの土を払いのけると、ボーリングのスペアでもとってきたかのような無邪気な笑顔で両手タッチを求める姿で愛梨沙のもとへ駆け寄ってきた。


「すごい・・・。すごいよ、にゃー子」


愛梨沙は、にゃー子とハイタッチすることも忘れて、棒立ちのまま感想を述べた。


「なーに、こんなの朝飯前にゃ」


鼻の下を三回ほどこすって、にゃー子がどうだという顔をした。 


その時、ざざざっと木々が大きく揺れる音がした。


誰かが怒りにまかせ、揺らしているそんな感じの響きだった。


再びにゃー子の目つきが鋭く変わった。


「おい、化け猫野郎!! てめえ、人の境内にわで何暴れてやがんだ、

ぶっとばしてやるから覚悟しやがれ」


ワンワンとひびきわたる、がらっぱちな声に二人は一瞬思考が停止した。


聞き覚えがありすぎる。


ありすぎるが違いすぎる。


全く別人としか言いようのない話し方だ。


まさか・・・。

そのまさかなのだ。


まさかという言葉がまさにぴったりの現実が二人のはるか前方にあった。


バトる気満々の殺気だった、メイが直立不動でこちらを威嚇していたのである。


「あーりん、まだそっから動いちゃダメ!!」


とっさににゃー子は愛梨沙を制した。


が、自分自身どうしていいかわからなかった。


相手はメイである。


傷つけるわけには到底いかない。


かといってあの様子では、おそらく自分の身も危うい。


にゃー子は、一応の戦闘態勢だけ整えて、メイの出方をうかがうことにした。


「こっちからいくぞ」


メイがなにごとか唱えると、地面が水面のように波打ちそのしぶきが瞬く間ににゃー子の足元へ到達した。


にゃー子は飲まれぬように素早く木の枝に飛び移り次の攻撃に備えた。


「困りました。メイさんはすっかり術師として覚醒してしまったようです」


愛梨沙の隣には、いつの間にかメイの父親が弱り果てた顔で立っていた。


「おじさん、メイを止めて、はやく!!」


「ああなってしまっては、私ではもう無理です。代々うちの家系は女の子が生まれると術師としての能力が遺伝してしまいそれを二十歳になる前に抑える必要があります。メイの場合は、特に術師としての潜在能力が高かったので、17歳のうちに封じておこうとしたのです」


愛梨沙は、先日のメイがしていた髪飾りを思い出した。


いま、激しくにゃー子と交戦しているメイの髪にそれは見当たらない。


「おじさん、メイの髪飾り、あれがあれば止められるんじゃ・・・」


メイの父は悲しそうに下を向きながら首を振った。


「無理です。さっき、ムカデの話を私にしに来たとき、あなたたちの危険を救おうと自ら・・・」


メイの父が差し出した手の中には、無残に砕かれた髪飾りがあった。


「メーイーッ」


愛梨沙は、絶叫に近い悲鳴を上げた。




「化け猫、安心しろ。私がきっちり、お前を浄化してやる」


メイは、手にした札に何事か唱えながら、人差し指でなぞり書きを加えた。


すると、メイの手の中で札が金色に輝きだし、赤い怪しげな文様が浮かび上がった。


メイは、それを右手で空高く放り投げると、意思を持っているかのように札がメイの周辺ぐるぐると迂回し始めた。




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