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GO!!

一方、薫子たちは殺風景な砂漠をひた走る。


灼熱の地平線が揺れる向こう側に眩しく光る何かが見える。


「何だろう?」


マユが目を細めて行く手を伺う。


「針山ね」


薫子が当たり前のように説明する。近づくにつれ断末魔の叫び声と腐った肉の異臭が漂いマユとメイそれに愛梨沙の三人が鼻と口を覆う。


「人間にはきついのね」


ナヨタケが三人にマスクのようなものを渡す。三人はそれを口にあてると不思議と臭いは治まった。


「おい、おい。お前らどこへいくんだぜえ?」


サングラスをかけた針鼠が岩肌に腰掛け、薫子たちに問い掛ける。


「あ、この先。じゃ」


薫子は片手をさっとあげて通り過ぎようとした。

相手も一瞬頭を下げたが、考え直して首を振り振り待ったをかける。


「ちょっと待つんだぜえ。危うく騙されるとこだったぜえ」


「何よ?うざいな」


薫子は面倒臭そうに立ち止まる。


「この俺を誰だと思ってる?恐れ多くも針山の番人ハリーさまだぜえ?」


ハリーは得意満面に自分を親指で指差す。


「だから?」


薫子の冷たい一言にハリーはショックを受けてへたりこむ。


「だからって…。それを言ったら見も(ふた)もないぜえ。こう見えて俺だって必死で生きているんだぜえ」


「私たちと戦おうっていうの?」


薫子が腰に手をあてハリーに詰め寄る。


「おっとと。待つんだぜえ早合点はいけねえぜ。俺はお前らの邪魔をするつもりはないぜえ。通りたければ通っていくがいいぜえ」


ハリーは待て待てと両手を前にかざして薫子をいなす。


「じゃあ、呼び止めないで。忙しいの」


まあ、待つんだぜ。話は最後まで聞くんだぜ。この針山。まともに通ろうとすると串刺しにされるんだぜえ。一度串刺しになると死ぬまで悶え苦しみ、また串刺しのまま生き返ってはひどい苦痛に悶え苦しみ…。そうやって何十万年苦しみを味わうそういう地獄なんだぜえ。それを承知なら進んでいけばいいぜえ」


ハリーは含み笑いをしながら腕組をして一人悦に入っていた。


「そんな可哀想な目にあっているなんて許せません、姫子やりますよ」


メイが姫子に目で合図する。姫子も無言で頷き、背中のマユを愛梨沙に預ける。


「ほう、見物だぜえ」


ハリーは高みの見物とばかりに目を細める。


「姫子苦しんでいる皆さんを浮かせてください」


メイは術符を一枚手に取ると人指し指と中指に挟み込み、準備万端とばかりに構えをとり、上空を睨む。


「あいなー。神通力…。スタン…怒!!」


姫子が地面を叩くと、針に刺された人々が空高く舞い上がる。


「神通力…、治癒射一秒、怪我逸翔(ちゅういいちびょうけがいっしょう)!!」


メイの投げ出した術符が輝きだし、針から抜け出た全ての人を上から照らし出し瞬く間に傷口を塞ぎ、傷を治していく。


「ほお、しかし落ちれば元の木阿弥…。どうするか見物だぜえ」


仰ぎ見るハリーはまだ余裕の表情を浮かべていた。


「神通力…、スタン怒・倍ミー!!」


両手の握り拳を合わせた姫子の体から桃色の妖気が炎のように天にかけあがった。そして、全力で地面へと叩き込んだ姫子の右拳はその衝撃を地平線に広がる針という針全てに行き渡らせた。


針が全て粉々に跡形なく崩れると、地面が轟音と共にせりあがり、何もない平地へと姿を変えた。


ハリーは腕組をしたまま固まった。


落ちてきた人が怪我しないようにメイは術符を地面に投げ込み、柔らかいクッションを作り出し、皆を救う。


そして何事か唱え、針山が二度と現れないようその場に封印してしまった。


「これでよし」


メイが満足そうに笑う。姫子も額の汗を拭う。


助けられた罪人たちはメイたちに礼を言い、雄叫びをあげた。


「んな、バカな…。これは夢だぜえ。きっと悪すぎる夢だぜえ」


ハリーは唇を震わせながら自分の頬を思いきりつねってみる。


「この調子でいくのね」


ナヨタケに促され、皆走り出す。マユも何とか目を覚まし、愛梨沙に手を引かれながら走り出す。


「GO!GO!GO!!」


愛梨沙たちは掛け声と共に敵を蹴散らし前へと突き進む。


血の池は倒した鬼たちに綺麗に掃除させ、マユ監修のもと温泉リゾート施設に改築させた。


灼熱、極寒はメイの術符で適温に変えてきた。地獄が瞬く間に極楽へと様変わりしていく。


敵対していた鬼たちもいつしか緩い雰囲気に浮かれ気分に変わっていく。


モニター越しに見ていた閻魔もさすがの状況に軽いめまいと頭痛が生じる。


そして足のつま先から沸々と沸き上がるものが体をわなわなと駆け巡り、頭のてっぺんに到達するといきなり目を見開き、立ち上がった。


「おのれえ、この閻魔をこけにしおって!!一人残らず御霊もろとも消し去ってくれるわ。髑髏兵ども、もはや鬼では埒があかん。行って始末してくるのだ」


閻魔の怒声に髑髏兵たちは間接をカラカラと拍子木のように鳴らし、窓から外へと飛び降りていく。


閻魔は深い溜め息と共にその場に腰を下ろす。式が始まるまで1時間となっていた。


一方、四使途の洞窟の前では薫子たちが立ち尽くす。そこへにゃー子が現れた。


「あれ、にゃー子。かえでたちは?」


愛梨沙の問いかけに、にゃー子は自分一人であることを認識した。


「どうやら置いてきちゃったみたいね…。穴に嵌まったかえでを助けようとして彩萌も嵌まったみたい」


 薫子が来た道を頭の中でなぞりながら解説する。


「まねけだにゃー。二人とも」


にゃー子は腰に手をあて二人をわらった。


「お月さんがここに来る途中の砂丘で砂の中から現れた大ミミズを倒した時にできた穴に誤って落ちたようね。彩萌はかえでを助けようとして一緒に沈んじゃったみたい・・・」


「あんたのせいじゃないの!!」


愛梨沙はにゃー子を思い切りはたいた。

「どうしよう、待つ?」


マユが槍を自分の体の周りにくるくると回しながら意見を求める。


「先に行った方がいいのね。地下の穴は四使徒の洞窟に通じているはず必ず落ち合うのね・・・。それより、私はここでおさらばするのね。今右手に見える洞穴に式神が捕えられているはずなのね。助けに行くのね」


「私も付き合うわ。元上司だし。あいつには散々お世話になったからね」


薫子も同調する。


「にゃー子も・・・。といきたいとこだけど私は先に行く。ナオトを助けなきゃ」


にゃー子は唇をきつく噛みしめて胸の前で握りこぶしを作り出す。


「よし、じゃあここでお互いの健闘を祈る」


薫子の合図と共に二組に分かれ一斉に散ったその時、強い力に愛梨沙は地面に引き込まれる。気付いたマユが愛梨沙の手を引くが諸共地面の中へ。姫子が穴が埋まる前に一緒に飛び込んだ。


「お前らは先に行くでありんす!!」


にゃー子はそれでもあきらめきれず地面を掘るしぐさをした。メイが手を引く。


「姫子がいれば大丈夫。ナオト・・・。いや田助さんでしょ?」


メイの一言ににゃー子は口をさらに堅く結び強くうなづく。


「すまぬ、みんな・・・。生きてまた元の世界へ帰ろう」


「GOです」


にゃー子とメイは四使徒の洞窟へ乗り込んでいった。







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