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黒次郎見参!!

「訳がわからん…。陽が昇り沈みって…。お前が雷神か!?お母ちゃんどこにやったんねん、返し!!」


かえでは雷神に妖刀で斬りかかる。


しかし、雷神はポケットに手を突っ込んだまま、半身だけずらしてかえでの攻撃を避けた。


かえではバランスを崩し、床に前のめりで倒れこむ。


急いで起き上がるも目の前には雷神はいない。


「心配するな、お前の母親はこの作業場の大事な働き手。死なない程度に俺たちが可愛がってやっているさ」


雷神はかえでの後ろに音もなく立ち尽くすと、かえでを蹴りつけた。


「うわっ」


かえではさっきまで雷神が立ち尽くしていた位置まで転がる。


背中を押さえ、やっとの思いで四つん這いまで体を起こす。


かえでの背中からは焦げた臭いと煙が立ち上る。


どうやら雷神に触れると雷に触れたのと同じ衝撃が走るらしい。


「どこを見ている。ここだ」


前を見つめたかえでの頭上から雷神の拳が振りおろされる。


かえでは雷の衝撃と強力な打撃のダブルパンチを食らい、床を突き破り、三階へは落下し、倒れこむ。


「かえで!!」


にゃー子が鬼退治をしながら階上を見上げた。


しゃがんで下の階を見つめる雷神。


「楽にしてやろうか?お前の気持ち次第だがな」


雷神はサングラスをずりあげる。


「うち、絶対負けへん!!」


かえでは方膝立で起き上がると雷神を睨みあげる。


「一気にカタをつけるぞ。いいな?」


雷神は腰を下ろし、階下のかえでを見据える。


一瞬の後、雷神がかえで目掛けて急降下する。


かえでは妖刀を両手で握り締め、雷神を待ち構える。


金属音の後、雷神は弾かれ、かえでも後ろに仰け反り、転がる。


「かえで!!」


階上から、階下から声がかかる。懐かしさを抑えつつ、かえでが口を開く。

「お母ちゃん、にゃー子はん。黙っとき。これはうちの問題や!!うちかて、辛い修行したんや、絶対負けへん。うちの根性みせたる」


かえでは立ち上がると妖刀を構え直す。


雷神は不敵な笑みと共に上空よりかえでを襲撃する。


さっきよりも大きな雷光を轟かせる。


雷神の振り下ろす腕をかえでは両手で握った妖刀でしかと受け止める。


火花が散り、雷鳴が轟く。


かえでの身に変化はない。


「うちを舐めんなや」


かえでは雷神をはねのける。


かえでが見つめる上空。吹き飛ばした雷神の肩越しに見えるは母親、瞳の姿。


かえでは両目でしかと確認した。


「驚いた…。こんな力を秘めていたとは。しかし、お前の可能性はこの程度。俺の敵ではない」


雷神は体の塵を払うと真っ直ぐに立ち上がった。


傷一つない。


「ーーーそんなん、うちかて同じや。本気だしてへんわ。母ちゃんに手出しおってからに」


かえでは妖刀を軽く露払いする。


雷神はため息をつくと腰をかがめ床に手のひらをついた。


「これはどうかな・・・?」


雷神が手のひらに力を込めると床の上に黄金に光り輝く竜の姿が現れる。かえではその姿を確認したと同時に大きく弾かれた。一瞬何が起きたかわからないが全身に痛みが走る。


「今のは微弱な電竜・・・。次からは俺も本気だ、いくぞ」


更に力を込めた雷神の手のひらからはさっきと比較にならぬ床全体を覆うほどの竜が現れる。


「もう、くらわへん!!」


かえでは竜の動きを読んで空を舞う。ーーーが、竜はかえでの動きに合わせて食らいつく。かえでは力なく床の上に落ちた。


「甘いな・・・。お嬢ちゃん、そいつは雷。電気を通しやすい人間の体にはどこまでも追っていって食らいつく。ましては神の意のまま、神通力を通した雷。敵と認知した的を外すなんてことはありえない。これで一気に片を付ける。覚悟しな」


雷神は両手をつけ、大きく気合を入れた。眩しい光が生じ、一瞬ののちに三階は炎に包まれた。


「かえで!!」


にゃー子の声がこだまする。上から覗き込む瞳は硬い表情を崩さない。


「さて、次は貴様か、それとも・・・」


雷神は階下のにゃー子を見た後、立ち上がり上を仰いだ。瞳とサングラスが出会い、にらみ合う。


「二人いっぺんでもいいぜ。雷はそういう『イキモノ』だ」


雷神は不敵に微笑む。すでに両手には音を立て、小さな電流が竜の形でまとわりついている。


「ふっ」


瞳が突如笑い出す。


「何がおかしい?」


雷神はサングラスをずり上げながら瞳に訊ねた。


「まだ、かえでが倒れてもいないのにもう勝った気でいるなんて滑稽で・・・」


「何だと?」


雷神は瞳の言葉に火柱と煙の籠る前方を眉にしわを寄せ、見つめる。


突如、屋内に降り出した雨。しかも三階にのみ降り注ぐ。鎮火し、辺りが霧に包まれる。晴れた視界には何かを手にひざまつくかえでの姿が現れた。


「貴様どうやって?」


雷神は攻撃することも忘れ、うろたえる。


「何や知らんけどこいつが助けてくれたんや・・・」


かえでの手には大きな黒い羽団扇が握られていた。


「黒扇丸?いや・・・ちがう、それは・・・?」


にゃー子は蛇以来、離ればなれとなった黒扇丸かと思ったがどうも色つやが違う。それにモミジの赤い紋章が真ん中にあしらわれていた。


「それは、かえであんたの羽団扇や。名を黒次郎こくじろう。天狗が羽団扇なかったら様にならんやろ」


瞳が投げ入れたものだった。羽団扇はあらゆる属性から身を守る。以前にゃー子も華閻と戦った際、業火から何度も身を守ってもらった経験がある。


現にかえでも雷神が放った最大級の雷を受けて平気のようだ。


「これが・・・うちの羽団扇」


右手の妖刀と左手の羽団扇を灌漑深げにかえでは見比べる。


「思い出は胸の内にしまっておきな。これで今度こそ最後だ!!」


雷神が再びかえでのもとに『電竜』を放つ。


かえでは(ひる)むことなく黒次郎を目の前にかざす。


四肢を広げた黒次郎は電竜の全てを受けとめた。

轟音と光を放つ竜は黒次郎に吸収されるが如く立ち消え、何事もなかったように静まり返る。


雷神は意地になり、再び電竜をかえでに放とうとした時、目の前にいたかえでの姿がないことに気づく。


「どこへ?」


雷神は辺りを見回した。


そして、何かに気づき、視線を下に落とす。


雷神の前で膝まづきニヤリと見上げるかえでが目に入る。


雷神の腹に神波を纏ったかえでの妖刀が突き刺さる。


「こしゃくな…」


雷神がかえでの肩に手を掛ける。光り輝き、じんわりと熱と痺れがかえでの体を駆け巡る。


「どうした…。んん?」


雷神は電気の出力を上げていく。妖刀をもつかえでの両手にも電気が流れ出す。


「くっ!!」


かえではあまりの衝撃に妖刀を放しそうになる。


「今度こそおしまいだ、グッバイ…天狗」


まばゆい閃光が走り、かえでがうなだれた。


勝ちを確信した雷神の口元が緩む。


瞳とにゃー子が凍りつく。


「ーーー何てな。全然効かへんわ。マッサージ器の方がマシやわ」


かえでは妖刀を握ったまま立ち上がる。


「何だと?」


雷神はかえでの肩を握り潰さんと力を込めるが、更に深く腹に突き刺さるかえでの妖刀に溜まらず、手を放す。


「腹へっただけや…。お前なんかに負けるかい。うちはもう一人ぼっちなんかじゃない…。うちはもっともっとつようなって見せる…。だっておかあちゃんの子やから」


雷神の腹を貫いた妖刀を天に向かってかえでが振り抜く。勢い、空に舞い上がったかえでが床に到達する頃、雷神の断末魔の叫びが轟き、床に前のめりとなり巨体が沈んだ。


雷神の様子に目もくれず、かえでは真っ先に母親の元へ飛び上がる。


「おかあちゃん」


かえでは全ての言葉に濁点付きそうな発音で泣きながら瞳に抱きついた。


「バカね。泣かないって約束したんやないの?私の位牌の前で」


瞳は優しくかえでの頭を撫でる。


「泣いてへん。うち、目の中が汗っかきになっただけやもん。うえーん」


かえでは隠しようのないほどの嗚咽をあげ、涙を流す。

「全く高校生にもなって…。子供なんやから」


瞳もうっすら涙を浮かべ、かえでの目元をそっと拭う。


「子供やない」


かえでは口を尖らせて、母から離れ、自らの指先で涙を拭う。


「ええ子にしてた?」


「子供じゃない、言うたんはおかあちゃんやないか。ーーーでもな、ええ子にしてたよ、ほんまやで」


かえではだだっ子のように母親へアピールする。


いつの間にか側に来ていたにゃー子に瞳は向きなおす。


「猫はん。あんときはほんまにありがとうございました。和馬がとんだことをしでかして…」


「仕方あるまい。誰にでも勘違いはあるものじゃ」

にゃー子は首を振った。


「うちの娘、よろしゅう頼みます。かえで、気張りや」


瞳は深々とにゃー子に頭を下げた。


にゃー子もそれに応じる。かえでと目配せをして魔界電力を後にしようとした。


「待ってくれ」


にゃー子は後ろからかかった声に足を止め、振り返った。


電力で働かされていた者たちと華菜がそこにいた。


真剣な面持ちでにゃー子を取り囲む。


「すまなかった」


男たちはにゃー子に土下座をして謝る。


にゃー子たちは何を謝っているのかわからず目を丸くして男たちを見つめる。


「まさか、本当に雷神たちを熨してしまうなんて…」

「にゃんだ、そんなことか。私たちは閻魔んとこに用事があるから、先に行くぞ。戦うなり、逃げるなり好きにするにゃ」


にゃー子は優しく促す。


ーーーそこへ、警鐘が鳴り響き、魔界電力の壁に何かが映し出される。


「臨時放送を申し上げる。今しがた三途の河原にて狐が脱衣婆を襲撃、縛り上げた挙げ句逃走。見つけ次第、身柄を確保されたし。繰り返す…」


背広を着た鬼が原稿を読み上げると、画面の隅には彩萌の顔が映し出される。


そして、壁中に彩萌の顔が現れ、その顔の下には一級極悪人の文字が。


「彩萌はん。お尋ねもんになっとる」

「ってことは無事に勝利したってことだにゃ」


にゃー子は満足そうに笑顔を讃えた。


「そうやな、彩萌はんめでたし、めでたしや。ってそういうことちゃうやろ」


珍しくかえでがにゃー子に突っ込んだ。


「噂をすれば影。彩萌だ」


にゃー子が窓の外を覗くと砂嵐を引き連れて彩萌が走ってくるのが見えた。


「彩萌ー」


にゃー子たちは元気に窓から手を振った。彩萌が気づき、振り返す。


にゃー子は窓の外に飛び降りた。かえでも後に続く。三人は手を取り合い、はしゃぎ回る。


お互いの現状を確認し、彩萌が黄泉の存在について補足した。


三人が魔界電力をたちさろうとしたした時、建物の中から歓声が上がる。


「かえでー」


「りんさんが先にいるわ、助けて差し上げてー華菜さん」


瞳と華菜の声もはっきりとにゃー子は受け取った。


ーーーそして、もう一つ懐かしい声。


「お月ちゃん」


にゃー子は驚いて声のする方へ顔を上げた。石垣の壁から顔を覗かした声の主は田助の村で世話になったおばちゃんだった。


「おばちゃん!!」


「挨拶はいいよ、先にお行き。私はいつでも田助とお月ちゃんの味方だよ」


にゃー子は唇を噛み締め、握り拳を掲げそれに応えた。


「さあ、行こう!」


彩萌のかけ声で三人は走り出した。






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