脱衣粉砕
「バカな、確かに爆破したはず…。どうやって」
彩萌の立ち尽くす様子に、よろめきながら脱衣が驚く。
「お前が投げつけてきた玉を高速で避けて、神波を使って縁に張りついていたんだ。デカかったから分かんなかっただろ」
彩萌はニヤリと笑う。
「じゃあ、もう一度ガキどもを閉じ込めて爆破してやる、覚悟しな!!」
脱衣の掌から、勢いよく玉が飛んでいく。
「コツを掴んだからもう無駄さ」
彩萌が玉を蹴り返す。
蹴られた玉はキューで突かれたビリヤードのボールのようにあっちこっちの玉に当たっては跳ね返り、玉を破裂させていく。
「おのれ」
脱衣が歯ぎしりと地団駄で悔しがる。
「ほら、どっち向いているんだい。喰らえ、神通力孤羅火霊翔!!」
彩萌の両手に纏った妖気が雄叫びを挙げながら激しく燃え盛る。
紫に輝く炎が躍りながら手薄になった脱衣の頭に降り注ぐ。
悲鳴と共にのたうち回る脱衣の腹にトドメとばかりに彩萌の右膝が入った。
彩萌は動かなくなった脱衣を縛り上げると子供たちの方を向き直した。
子供たちからは拍手と歓声が沸き起こる。
「ーーーさてと、みんなを追いかけなくっちゃ…。君たち元気でな」
彩萌は手を振り、立ち去ろうとしたが件の七人を筆頭に彩萌に群がってくる。
「お姉ちゃん、行っちゃ嫌だよ。ずっとここに居てよ」
「脱衣なら暫く起き上がれないよ。逃げるなり、好きにしたまえ」
「ダメだよ。ここは地獄。もし、目を覚まして脱衣に捕まったらもっと酷い仕打ちをされちゃうんだ。だから、お姉ちゃん一緒に居てよ。じゃなかったら僕たちも連れていってよ」
他の子供たちも一斉に「お願いします」と頭を下げる。
「困ったな」
彩萌は頬を掻いた。
こんな大人数で移動すれば、敵に居場所を教えているようなもの。ましてか弱い子供たち。襲われれば危険だ。
かといって、置いていくのも危険…。
彩萌は唸りながら考え込む。
ーーーと、一人の少女が彩萌のスカートの裾を引く。
「ん?どうした」
彩萌が気づいて、少女の頭を優しく撫でる。
はて、どこかで見たような…。
彩萌は思いだそうとしていると少女は口を開いた。
「お姉ちゃん、怪我直さなくちゃ…」
「確かに…。でも、術師はいないし…。君出来るの?」
彩萌は少女に訊ねる。
「ううん。菜子はできない。こっちに黄泉がある。それを飲めば大丈夫」
「へえ、そんな便利なものがあるのか…。えっ?今、君名前何て…」
彩萌は少女の顔を覗き込む。そして、どっかで見た屈託のない顔を思い出した。
「菜子。橘菜子」
「橘くん!!」
彩萌は愛らしく行儀のいい笑顔を食い入るように見つめる。
「橘くん…。随分やりたい放題キャラをいじくり回してくれたな…」
彩萌の独り言に菜子は不思議そうに首を傾ける。
「いやいや。なんでもない。その黄泉の場所へ案内してくれるかい、菜子ちゃん」
彩萌の問いかけに菜子は無言で頷き、彩萌の手を引く。
案内された場所に着くと、小さな滝のように空から水が降り注ぎ、池が出来ていた。
尽きることなき降り注ぐ水。澄んだ池は鏡のように景色を映し出す。
彩萌は暫し見とれていた。
「この先も要所に黄泉があるって脱衣が言っていた」
「覚えておくよ」
彩萌は手で掬って、一口飲んだ。甘く冷たい水に彩萌は驚く。
「こんなに旨い水があるのか…」
もう一口飲んだ彩萌の体に変化が起きる。傷が見る間に癒され、体力まで回復する。
「持ち歩きは無理なんだって…。数秒で腐るから」
菜子が釘を刺す。
「残念…」
彩萌はがっかりする。
ーーー岩影で何かが動く気配がした。
「誰だ」
彩萌は咄嗟に菜子を庇う。
「やるじゃねえか、お前、狐のアヤメだろう?」
岩影から現れた大きな巨体の目に傷を持つ男と痩せこけた狐顔の男が姿を現した。
「何で、ボクのことを知っているんだ、お前ら何者だ?」
彩萌は二人を睨みながらジリジリと距離をとる。
「そんな怖い顔するなよ、お頭とオレだ」
痩せこけた方が呆れたように彩萌に答えた。
「お、お頭?お頭って、アノ狐のお頭のことかい、じゃあお前はボクを助けた」
「そういうことだ」
「何でこんな所に?」
「魔界電力から逃げてきたのさ、まああそこは地獄の中でもかわいい方だがな…。まだ俺たちの仲間も沢山残っているんだ」
痩せこけた方が説明する。と、腕くみしていたお頭が口を開いた。
「全て見ていたぜ。ガキどもの面倒なら俺に任せろ。お前の仲間が二人、電力に乗り込んでいった。たった二人で…、と思ったがどうして、どうして…。かなりのもんだ。俺たちもこの水を飲んだら引き返す。だから、ガキどもは俺たちに任せて先に進め」
「分かった。ありがとう、お頭」
彩萌は菜子に大丈夫と言い聞かせるとお頭たちに子供たちを任せ、先へ走り出した。




