#4 「オロ●インCと魔法少女と君にフォーリンラヴ」
どうも千枚通しを抜いたキズ口にオロ●ミンCを塗ったのが敗因だった。
なにかやたらシミると思ったら、オロ●インを塗るのが正しかったらしい。
おかげで完治するのにえらく時間がかかった。
まあ、それはそれでいいだろう、ポチも別段気にはしていない………
いや、睨んでる。
こりゃ、睨んでる。
すっげぇ、睨んでる。
きゃぁ。
あ、俺、ハードヴォイルドだったんだ。
しかし、アレだ。
ハードヴォイルドなのに、こんなパルプフィクションっていうか
ペーパバックっていうか、三文小説を書いているのも、まあアレだ。
しかし、モノズキも居た者で、この駄文を読んだという、
とある出版社の編集という方から連絡をいただいた。
どうも十万五千円を支払うと、製本して書店流通しますから、
一冊分がっつりと、ポチの英雄伝を書きませんか、と。
ポチはそっぽを向いてしっぽを向けている。
そんな瑣末な事、興味もありゃしねぇって態度だ。
まあ、コイツがやらかしたことを書けば、一冊どころか
図書館を埋めるに十分なエピソードはあるんだ、
あるんだが……。
めんどくさい。
例えば、コイツがやらかしたことの一例を挙げると、
散歩の途中でポツポツと雨が降り出して、
ハードヴォイルドな俺様は
カサなど持ち合わせる事もなく、
よしんば持っていたとしても、
見た目かわいいだけのわんこに、
それを譲ろうはずもない。
ポチはもちろんそんな事は知っている、
そして楽しみにしている散歩を途絶えさせる、
この無粋な雨に俺がそそくさと、
帰ろうとするであろうことも知っている。
こんな時、普通の見た目かわいいだけのわんこなら、
素直に従い帰路につくのが当然であり、
自然の摂理であり円還の理であり、
ああそう言えば確定申告もしなくちゃなであり、
とっとと帰ってしわくちゃな領収書を、
帳面にぺたぺたしなくちゃなである。
腹も減ったし。
これらの条件が揃えば、何の迷いもなく帰路につくのが
人類としての当然の権利であろう。
見た目かわいいだけのわんこに雨の散歩の続行という権利などないのだ。
帰るぞ。
と、踵を返そうとしたその刹那。
恋に墜ちた。
え。
何故に突然フォーリンラヴ?
いやでもまてこれは愛だ。
恋なんかより濃い、これは葵、
いやそれは青より以出て、
いやそんな、
もう、
あなた愛してますからついていきます。
きゃあ。
この小雨降る街であったとしても、
どうしても散歩を完結させたいポチは、
実はメスだったとという設定を利用して、
俺にフェロモンを嗅がせる事で、
この道を思うままに追随させる手法を執ったらしい。
ああん。
もう。
さからえないぃぃぃ。
抗えない恋心。
しかし、あれだ、俺はハードヴォイルドな
人類のダンディなメンズである。
略してダンメンズだ。
ん?何を輪切りにしてるんだ?
いや、そんな事より、
なぜ見た目かわいいだけのわんこに、
フォーリンラヴしなくちゃなりませんか?
ならなきゃいけないのですか?
義務ですか?納税ですか?
ああ、確定申告ッ!
萌え盛る恋の烈情に、気付くのが遅れたが、
おれの目線がやたら低い。
推定身長185cmの視界ではない。
これは地平からおよそ45cmといったところだ。
へ?
俺は、ポチに仕掛けられた、なにかの罠、
まあ、世間ではそれを分かり易く、
魔法だなどとヌカすのであるが、
この魔法と言う言葉から連想するのは、
やはり魔法少女であるが、
この節を詳細に述べると、
別途作品化しなくちゃならない。
やたら長いタイトルで。
やたらトラックに跳ねられて。
やたら転生とかして。
やたらチート能力で。
やたらカワイイ女の子とイチャコラして。
やたら魔王とかぶっ倒したりして。
さて、手垢のついたテンプレートの説明などで、書き飽きてきたので、
ここでプレゼントコーナー。
ここまで熱心に読んでくれたアナタ!
メッセージを送ってくれれば、
もれなくおいしいラーメンをご馳走しますよ。
キーワードは「ラーメンおごってくれるって本当ですか?」です。
うん、大丈夫、絶対こない。誰も読んでない。
となれば、このままこの恋心の赴くままに、
ポチと繁殖しちゃうのも悪くないわ。あははん。
では気を取り直して、フォーリンラヴの続き……
いやまてこらおいふざけ…
と、ここまで思考を巡らせたところで
散歩は終焉を迎え、
俺の推定身長185cmの視界に世界は回帰した。
よかったよかった。
まあ、びしょ濡れではあるのだけれど。
と、まあ、これくらめんどくさいヤツなのである。
まあ、この二匹の散歩中にも、
ダース単位でおもしろエピソードがあるのだが、
もはや誰も読んではおるまい。
いるとすれば十万五千円をせしめようとしている
●●文社のアナタ!アナタですよ!!
と、ここまで夢中になって書いていたら
俺様のお気に入りのハードヴォイルド番組、
「今週のハードヴォイルド予報」(バラエティ)が
終わってしまっているじゃないか!
くそうくそう!
まあいい、次の番組はお気に入りの、
「どきどきハードヴォイルドキャッチは俺の妹が機動戦記」(アニメ)
だ、10話目という、
最終回まであと2話という重大な節目(水着回)でもある。
正座して見なくてはなるまい。
まずはCMだな。
ユニ●ロか……冒頭のCM長いんだよな……
これだから日●テレビは……。
ん?
なんだこのCMは……
「ポチとおさんぽとハードヴォイルド」
重版出来!
アニメ化決定!!
ポチはどうも、詐欺商法が嫌いらしい。
俺がこの玉稿を執筆している間に、
またなんか世界線とかパラレルワールドとか、
便利で安易でガッカリなツールを活用して、
俺を本物のハードヴォイルド小説作家に仕立ててしまったらしい。
まあ、どうせすぐ飽きるだろうし、
と言っても折角のお膳立てだ、
俺はモンヴランを手にして、
お気に入りの原稿用紙に向かった。
いやその前に、
「どきどきハードヴォイルドキャッチは俺の妹が機動戦記」(アニメ)
見るけどな。
水着回だし。
ポチはニヤニヤしながら、
そっぽを向いて
しっぽを振っていた。
見た目かわいいだけのわんこのくせに生意気だ。
そして、俺のメールフォルダには、大量のメールが届いていた。
題名は全て同じ。
「ラーメンおごってくれるって本当ですか?」