#2 「バイポーラ接続と株価と千枚通し」
無限に広がる大宇宙。
俺はやっと御帰還だぜ?
ポチが俺の華麗なミステイクに気づいて、
バイポーラ回路をグリッド接続にした空間調整を使ってくれたおかげで…
まあ、おかげで軌道面に向いていた全世界の42.7314%のご家庭が
停電しちまったらしいが…
それでも本来必要なエネルギー量のわずか数兆分の一だったそうで。
と、すれば、極粒子物質って一体ナニモノなのか、
ま、そこを気にしないのが俺のハードヴォイルド哲学だ。
そろそろ遊びの時間は終わりだ、とポチが恩着せがましく言う。
ポチはようやく全世界にまたがる巨大コングロマリットを
作る準備ができたと話した。
そして、またお散歩係になれと言う。
まあ…お散歩といっても、いろんな意味のあるお散歩だが…
ポチは尻尾を振って待ち構えている。
仕方ない、遊びの時間はもう終わりだぜ?ポチ。
といってもどっから手をつけるのか…
さすがのポチも今回の株価大暴落にはなすすべもなかったらしい。
ポチはどうも息抜きがしたいらしく、趣味で書いてた
泡宇宙規模の星間惑星再構築プログラムも放置して、
タコヤキ屋を始めたいという。
まあ、どっちも丸いモノを動かすのだから、
似たようなものといえば違うことはないかもしれない。
が。
大きさが、ちょっと違うような気もする。
が。
しかたない、俺も作務衣に身を包み、タコヤキをじうじうと焼いている。
ポチも焼きたそうだが、この星の保健所からNGがでちゃうので仕方ない。
そう言うところだけはコンプライアンスなところがイカスんだが、
まあ、面倒だから俺にやらせたいだけだろう。
3ヶ月もやると随分人気も出て、売り上げもかなりの額になってきた。
久しぶりに株価など見遣ると、タコヤキの売り上げ曲線と、
先進8カ国の株価平均のグラフがぴったり連動している…。
おい、ポチ。
なにやっとる。キサマ。
まーた何か仕込みくさったな、オマエ。
そして、ある銀行の頭取がやってきた。
融資をしたいと言う、この御時世に商魂逞しい。
関西人らしく、挨拶は
「もうかりまっか~?」
だ。頭取なのに。まったくこれだから関西人は…
ポチは真顔でシラッと答えた。
「ポチポチでんなぁ。」
おい、ポチ。
それが言いたかっただけか、
キサマ。
ポチの気は済んだらしい、店を畳むという。
なにかの物理方程式を弄ってるから、この店が閉まると、
また世界の経済は暗黒に包まれるのだろうが、
まあ、満たされたポチにとってはどうでもいいのであろう。
ポチが尻尾を振っている。
また散歩の時間だ。
仕方ない…、俺は千枚通しを捨て、再びポチと散歩をはじめた。