#1 「ネットワークとラーメンと10万光年」
大都市を駆け巡る下水道ネットワーク。
その配管の中、さらに巡らせるケーブルを敷く。
それがポチの仕事。
といってもポチの数多の仕事の中のひとつにすぎない。
そして俺はポチのおさんぽ係として、日々、ポチのお散歩をさせる、
それがおれのハードヴォイルドな日々。
ある日、俺の有能っぷりに目をつけられて、イギリスはCI9(クリミナンス インテリジェント ナイン)の専属ゴミ箱キーパーにスカウトされた。
なぁに、仕事は大したことはない。
ちょっと失敗れば、太陽系レベルで空間が歪む程度の、極粒子物質を見つけてゴミ箱に入れ、蓋をするだけだ。
とても簡単。
そして、ちょいとその物質を拝借して、下水道を駆け巡るポチの仕事を手伝う。
それが裏の仕事…
いや、本業かもな。
そろそろポチから誘いがくる頃だ。
イギリスから日本は、さすがの俺様でもちょい遠い。
この極粒子物質で軽く空間を歪めれば、ひきだしの中から青色ロボットが出てくるぐらいの芸はできんだぜ?
よし、ポチ、今回もいい仕事だ。
また旨いラーメン屋をみつけたらしい。
下水の成分を解析して縦横無尽にラーメン屋を調査するシステム。
こんなの、ポチぐらいしか思いつかない。
さあ、この極粒子物質を小さじに一杯…
これでイギリスから日本なんてミリセカンドオーダーで移動できちまうぜ?
おっと、その前に、「はじめての極粒子物質のつかいかた」(学習科学社刊)をちゃんと読むんだったぜ?
ハードヴォイルドな俺様は、どうも基本を疎かにしがちだぜ?
まあ、間違っちゃいないけどな!
え?
小さじに一杯だと銀河系超えちまうんだぜ?
失策ったぜ?
多すぎたぜ?
耳かきに一杯でOKだったぜ?
やばいんだぜ?
旨い極上のラーメンがぁぁぁ、だぜ?
はるか10万光年先にいっちまった、
だぜ?