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戦部!!!  作者: 城孔 翼乃
1年生編
4/13

第三楽章 課せられた課題

おかしい。どう考えてもおかしい。

....こんなのどうすりゃいいんだよ。

俺は早くも絶望しつつある。

マウスピースを口に当て必死に息を入れる。


ブっ プスー


少し音とはいえない音のような何かが鳴ってすぐに息が漏れる。


「大丈夫?口痛くない?」


目の前の、『前崎(まえさき) 千里(ちさと)』先輩が心配そうに声をかけてくる。

だがしかし、こんなところで挫け訳にはいかない。


「だ、大丈夫です!まだ頑張れます!」


「本当に?無理しないでね。」


「はい!」


こんなことじゃダメだ。

こんなんじゃトランペットパートになれない.....




ほんの10分程前、千夏先輩に話をされた。

そしていくつかの約束ができた。


一つ、 正式に全員が入部するまで、戦部の事は秘密にする事。


二つ、 しばらくは、ほかの人同様吹部として活動する事。


三つ、 トランペットパートになりたいなら、きちんとオーディションを受けること。


だった。


一つ目は即納得。二つ目も昨日、千夏先輩が

「__戦部の武器(がっき)(おと)は、吹部の楽器の技量に比例する。」と、言っていたので、そういう事なのだろう。

でも、三つ目は納得出来ない。まあそう思ってる時点で俺は自惚れていたな、って思うが。

「なんでですかぁ。僕昨日ちゃんと(おと)撃ったじゃないですか。」

図々しいにも程がある。


「あれは偶然。そんなたまたまに頼ってて本番で吹けると思う?」


「うぅ.....」


「それにいくら光くんが吹けたからって他の人が納得しないでしょ?他にもトランペットになりたい人は結構いるんだから。不公平になっちゃうでしょ。」


「わかりました。まあどうせ吹けますし。実力でなります。」


「ふう..その自信どっから湧いてくるんだか。」

呆れてため息をつく千夏先輩。

でも、俺は初めてであんなに綺麗に(おと)が出せたんだ。

吹くのも余裕でできるはず....



ブっ ブペー


だがこのザマだ。

おかしい。こんなはずじゃぁ!!


「焦らなくていいから。落ち着いて。力は入れずに、こう....」


プー


あたかも簡単そうに吹く先輩を見て早くも心が折れそうだ。

奥の方での方で千夏先輩がニヤニヤこっちを見ている。

あれ?wあんなに言ってたのに音すら出ないの?w

とでも言いたそうな目で。

悔しい。でも確かにまだ焦るような時期じゃないここは落ち着いて、こう ....


パーァン


横から音が聞こえた。


「やった!」


横で花岡 桜が嬉しそうにしていた。

まさか先を越されるとは。


「すごい!1年生でそこまで吹けるのは凄いよ!」


先輩が花岡さんを褒める。体験入部の恒例行事なのだろうが、そんな事まだ知らない俺を焦らせるには充分すぎる素材だった。

やばいヤバイヤバイ。

焦りと緊張で息すら出ない。

ターァン

横ではまだまだだけどトランペットらしい音が聞こえてくる。

「大丈夫?笑ほかの楽器行ってみる?」

これ以上こんな醜態を晒す訳にはいかない。早いとこほかのとこに行って口を休めよう。

「そ、そうですね!ちょっとほかのとこ見てきます.....」

一気にテンションの下がった俺はもう逃げる以外できなかった。


他の楽器を見ながら考える。どんな武器(がっき)になるのかを。

まず行ったのはホルン。見た目は蝸牛のように丸い形と複雑な管。そして後ろ向きについたベル。

パッと見連想したのは盾だった。だけど盾onlyと言うのも引っかかるのでわからなかった。

ホルンは音はトランペットより出たのでちょっとびっくりした。



次はサックス。実はサックスもかっこいいと思ってたりする。見た目と言い音と言い、全体的に綺麗だ。

しかし音は全くでない。どうやって出せばいいのかすらわからない。トランペットなどの金管楽器の場合、マウスピースに唇を当て息で振動させて音を出すと言っていた。

ちなみに唇を震わすのをバズィングというらしい。

一方木管楽器はリードという楽器に取り付けられた(はさまれた?)木の板を震わせるらしい。

が、イマイチよくわからない。

ピィ、という音は多少なったがクラリネットなんてウンともスントも言わなかった。

だったらフルート!と思って吹いてみたがやっぱりわからない。フルートはリードはないが、マウスピースに穴があいており、そこに横から息を入れると言った感じらしい。

イメージ的には、小学生のとき鉛筆のキャップに息を入れてひゆぅーひゆぅー鳴らしたことがあると思う。あんな感じらしい。

が、やっぱり鳴らなかった。


よし、木管は諦めよう。


そう思って次に行ったのはトロンボーン。結構大きめの楽器でトランペットより音が低い。そしてスライドという稼動する管がありそれを動かすことで音の高さを変える。

ブー

これは簡単に出た。あまりにも出たから少し、いやかなりスライドを動かして遊んでいた。


そして最後にユーフォニアム。

あまり聞いたことがない名前だった。なんでも吹奏楽楽器の中で一番知名度が低いらしい。

しかし誰にでも吹きやすく、とても言い音が出るとかなんとか。

確かに音はすぐ出た。

が、やっぱりトランペットのかっこいい音の方が好きだったのでトランペットに戻ってきた。

パーカッションとチューバに行き忘れたのは内緒だ。

というよりパーカッションは人気が高く行けなかった。


チューバ?そんなの知らんな。


結局今日はトランペットの音は吹けなかった。



次の日やっとまともな音がなった。と言ってもまだまだだが。花岡さんは早くもドレミファソラ、まで吹けているの対して、おれはドレミまでだしかもカスっカスの。負けてられない。なんとしてもトランペットにならなきゃ。そして千夏先輩を見返さなきゃ。


そんなこんなで1週間、体験入部が終わった。




___________




必死に頑張る彼を見て私は思う。

なんだ大したことないじゃん。

ちょっと警戒してたけど、その必要はなかったな。

大丈夫。このまま頑張れば受かる。なんたってこの中で一番吹けているのは(うち)だから。







___________








えっと.....なんか余裕とか言ってなかったけ?確か言ってたはず。

なのにあれか。


まあまだオーディションまで1週間ある。それまでに彼が頑張って受かってきてくれるといいけど。



...まあ大丈夫でしょ。


今回も戦闘せず.....

次こそは!

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