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戦部!!!  作者: 城孔 翼乃
1年生編
2/13

第一楽章 戦争学部開幕


突如爆音が鳴り響いた。



揺れる地面、剥がれ落ちる壁。

俺は何が起こったかわからない。

ただ今の状況が異状ということだけはかろうじて理解できた。しかし、どうすればいいかなんて思う暇はなかった。

瞬きをした瞬間見たこともない空間にいた。いや同じ場所のはずなのに異様な違和感が漂っていると言うべきだろう。場所はコモンホール。だが大きさがさっきの場所の数十倍はあるだろう。

ただただ広い空間。


そして目の前にいる...なんだこいつらは。影の塊のような真っ黒の人の形の物体が無造作に立っている。見た感じ30体はいるだろう。しかし何も動かない。俺は少しだけ落ち着いていた。

ん?なにか武器らしきものを持っているような...嫌な予感がすr.....うわあああああああああああああ。

いきなり襲ってくるとか聞いてないわ!

あっぶねーもう少しで死ぬところだった。


一瞬で目の前まで飛んできたその物体は俺の頬をかすめた。

血液が顔をつたり地面にポトリと落ちる。あまりの急な出来事に体が動かない。逃げなきゃ!とは思っているのに。


......落ち着け落ち着け俺。深く深呼吸をした。そして周りを見回す。黒い人形はまた動きを止めている。今がチャンスだ。ここがどこかなんてわからない。だけどとりあえ取りあえず逃げよう。


....でもなんでこんなところにいるんだろう。さっきまで吹奏楽部にいたはずなのに。何がなんだかわからない。

そんなことを考えながら俺は闇雲に黒い人形から離れる。


唐突にふわっとした謎の感覚が来た。そして目の前が暗転。

盛大にこけた。顔から地面に突っ込んだ俺は痛くて立ち上がれない。


そんな時黒い人形は動き出した。


不味い、立ち上がろうとするが足が重い。あっという間に真っ黒な人は俺のすぐ目の前まで迫っていた。

もうだめだ。よくわからないけど俺はここで死ぬ。

あーあ短い人生だったな


......せめて1度だけトランペットを吹きたかった...諦めたその時だっ

た。



白。限りなく白。光。


そしてトランペット。



吹奏楽に入りたかった。ただそれだけの俺がこんなことになったのは紛れもない奇跡で、そして運命だ。

体に力が漲る。へその位置が熱い。


気がつくと俺はトランペットを撃っていた。いや撃っていたというのはなんかおかしい。

だがしかし俺は確かにトランペットから出る光の玉を見た。そして目の前の敵はまるで最初からいなかったかのように俺の前から消えていた。

なんだかよくわからないけど助かったぞ!そう安堵した瞬間物凄い疲労感に襲われた。

きっと疲れたのだろう。......いやこの疲れ方は異常だ。視界がゆれる。

体の重さを支えれなくなった足が折れ、地面に倒れる。眠い。もうこのまま......寝て......しまいそう......d.....




俺は完全に意識がなくなった。



___________





......まさか、まさかそんなこと。


だけど彼は確かにトランペットを撃った。


何の訓練も受けていない、どころかトランペットに触ったこともなかった彼はあの黒い人形を倒した。

しかも30体を一撃で。.....彼は何者なんだろう。

私はこの先の未来を想像し、ぞっとした。でも、ワクワクの方が上だった。これからどんなトランペッターになるだろう。

もしかしたら私を超えるかもしれない。


非常にたのしみだな。

彼のところへ向かった。





____________






目を覚ました。



ここはどこだろう。



全く見覚えのない...いや全くではない。どこか見た事のありそうな、そんな場所に寝ていた。

この部屋にはベッドが三つ、薬の棚のようなものに、大きなテーブルと椅子があった。

そうかここは保健室だ。1度体調の悪い時に来た覚えがあった。しかし、なんでこんなところに?なんて思っていたら誰か入ってきた。


「だいじょぶだった?いきなりびっくりしたよねー」


えらくマイペースそうな喋り方。女の子で、背は割と低め。およそ145cm程度。その女の子は笑いながら俺に話しかけてきた。


「あ、ごめんごめん。自己紹介してなかった。私は『藤谷 千夏』。トランペットパートのパートリーダーでーす。よろしくー♪」


なんと中3だった。しかもトランペットのパートリーダー。てっきり同学年と思っていた。


「ん?今ホントかどうか疑ったでしょ!」


ギクッ!


「い、いやいやそんなことないですよ!ましてや同学年か?とか思うわけないじゃないですか!」


不味い。このままではトランペットになれない!!!!


「.....別にいいもん。小さいのは事実だから。ふん。」


うわー怒ってるよ!やばいよ!と、取りあえず話を変えないと!


「す、すいません!あ、あのさっきのあの黒いのって何だったんですか!?急に襲ってきたし!ここって吹奏楽部じゃないんですか!?」


思いきって聞いてみた。だが何も知らないのではと実は思っていた。だってあんな非現実的なことだったから。


「あれかぁ。うーんなんていっていいのか.....」


そう言って目の前の千夏先輩は真剣な眼差しで言った。


「....このことは誰にも言わないって約束できる?」


唐突な質問だった。

誰にも言わないで。ということは普通は知られたらいけないことなのだろう。そりゃあそうかもしれない。

あんなこと普通は誰も体験しない。


だからこそ知りたいのだ。このことの事実を。

俺は少し考えて言った。


「...はい。言いません。 どうせ誰も信じませんし。」


彼女がしたように俺も真面目な目で見つめ返す。


「ふぅ...まあこうなったのも千夏たちのせいやし、それに吹部に入るなら結局は知ることになるしね。わかった。一応知ってることは話す。うーんまず何から話そうかなぁ...」


吹部に入るなら知ることなる?どういうことなんだろう。


「まず単刀直入にいうと、あの場所は『仮想空間』って言われる場所rしい。そしてあの黒い人形。あれはまだ千夏達もよくわからないんだけど、おそらくは敵。」


「すごいアバウトな説明ですね.....」


「うるさいなぁ。説明は苦手なの!もー!..であの敵のことなんだけど、あいつらなんか武器みたいなの持ってたでしょ?あれは楽器が武器に変化した物らしいの。」


楽器が武器ぃ!?よく意味わからないんですけど!?

なんでも形が楽器によく似てるらしいの。まあそれはともかく、仮想空間ではあんな感じの敵が襲ってくるわけ。わかった?」



.....ぶっちゃけ何も説明になっていない。おそらくまだわからないことが多いせいもあるだろう。

しかしそれ以上に千夏先輩の説明力のなさに脱帽した。


「は、はいおおよそは。でもそれが吹奏楽部と何の関係が?」

そう聞きたいのはそこなんだ。なぜ体験入部に着ていただけなのに何なところにいたのか、ということだ。


「うーん。君が...名前なんだっけ?」


「白野 光 です。」


「ありがと。そう、光くんが狙われたわけじゃないとは思うけど...おそらく誰でも良かったんだろうね。あの黒いのは仮想空間だけに存在していて、現実世界の人やものを仮想空間に引きずり込む。そして破壊する。何故かはわからない。でもそれを阻止するために作られた部隊。それが千夏たち『戦争学部』って訳!。略して『戦部』!」



... もうわけがわからない。何のことかさっぱりだ。

仮想空間に住んでる敵倒すために作られた部隊?え、だってここは吹奏楽部.....


「そう!この部活は吹奏楽部。でも同時に戦争学部でもあるわけ。日本全国の吹部がそうなったの。あの敵が現れてからね。」


だったら.....


「だったらなぜ吹奏楽部なんですか?別に自衛隊でもなんでもいいじゃないですか?なのにどうして?」


吹奏楽部である必要は無い。何度考えてもおかしい。


「それは....あの敵が持っていた武器。あれが楽器に似ているっと言ったでしょ。そしてあの敵は楽器とよく似たあの武器でしか攻撃ができないらしい。そしてあの武器の腕前はその対応した楽器の技量に比例する。だから吹奏楽部なの。戦えるのが楽器を使える人たちだけだから。もちろんそれならプロの演奏家に頼めばいいと思うでしょ?国も最初はそうしていたの。でも、プロの人たちは演奏の方が忙しいすぎる。しかも戦闘なんてやったこともないのにできるわけない。だから、成長の途中段階で身体もまだまだ発達する中高生の吹奏楽部に任せられたの。」


つまり俺があの時持っていたトランペット。あれはトランペットの形をした武器だったというわけか。

だからあの敵を倒せたと。


「そうやね。普通は練習なしにあんなに綺麗に(おと)が出るわけないんだけど....なんかしてた?習ったりとか。」


「そんなことないですよ。」


そう、俺は極度の習い事嫌いで小学校6年間何もしていないのだ。今では逆に誇れる気がする。


「そっかー。じゃあなんかの偶然やね。びっくりした。」


俺自身もとてもびっくりしたのだ。突然トランペットから光の玉が出てきたのだから。


「あ、でもあの後すごい疲労感に襲われて倒れたですけど.....」


だから今ここにいるわけで。


「多分今までそんなことしてことなかったから身体が耐えられなかったんだと思うよ。仮想空間で動くには通常の3倍ぐらいの力と体力がいるし..」


なるほど。だいたい知りたいことはわかった。そして、


「どうする?これでも吹奏楽部に入る?今なら誰にも言わないなら入らなくてもいいけど?」


千夏先輩は楽しそうに聞いてくる。


そんなのもちろん決まってる。こんな面白いことが知れたんだ。やめる理由はない。


「いいえ。僕は吹奏楽部に、それと戦争学部にも入らせてもらいいます。これからよろしくお願いします!」


言い切った。おそらくこの先はもっと大変で辛いことが待っているだろう。

でもこんなに楽しそうだと思ったのは初めてだった。

千夏先輩は軽く微笑んだ。


「そう言うと思ってた。じゃあ改めて!私はトランペットパートのパートリーダー兼、戦争学部’高音属金管式直機関銃部隊長の藤谷 千夏。よろしく!!」


お互いにどちらからとも言えない握手をした。

これから楽しいことになりそうだ。




こうして俺の吹奏楽部の扉、そして戦争学部の扉が開かれた。


今回は新キャラ『藤谷 千夏』が出てきました。これからもどんどん更新していきたいです。

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