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第七十四話

 

 一方、浮島の上でゼルギウスと戦っているシンヤも苦戦を強いられていた。


シンヤに向かって豪雨の如き突きが叩き込まれ、それを横っ飛びに避ければ、大木もへし折りそうな横薙ぎがシンヤを襲う。そして、何よりもシンヤを苦戦させているのは・・・相手との距離だった。


(ちっ・・・遠すぎる!!)


 今もシンヤは20mは離れている距離から槍によって一方的に攻撃されていた。それを可能にしたのはゼルギウスのユニークスキルだった。


「ふむ、我が『自由槍』(フリーランス)をここまで耐え凌ぐとは、なかなかやりおるわい」


「くそ、見てな!! もうすぐその余裕そうな顔を驚愕させて棺桶に叩き込んでやるからよ」


(しかし、『自由槍』(フリーランス)って言ったか。槍の大きさを変えるだけのスキルとはいえ、使い手次第でここまで強力になるか)


 ゼルギウスの手の中で自在に大きさを変える槍は的確にシンヤの動きを捕らえ続けていた。例え突きの一撃を躱したとしても『自由槍』(フリーランス)の伸縮スピードの速さはシンヤがゼルギウスに向かって一歩踏み出した時には短槍の様な長さまで槍を縮めて即座に次の一撃に移っていた。


 その為、シンヤにとって自分の間合いに入るための20mが果てしなく遠く感じられた。


「だが・・・進む以外に道はない!!」




 一方、ゼルギウスも一方的に攻撃できているこの状況でもシンヤから圧力を感じていた。それは・・・


(近づいてきている・・・)


 自身の、攻撃に晒され続けながらも、一歩・・・又、一歩と着実に距離を縮めてきている。


 ・・・19m


 手の中の槍を高速で伸ばしながら突き出す。


 それをシンヤは前進しながら最小限の動きで躱す。


 ・・・18m


 横に薙ぎ払う様に槍を振るう。


 それをシンヤは体制を低くし、横薙ぎの一撃を手に持った刀の上を滑らせるようにして凌ぐ。


 ・・・17m


 ・・・16m


 ・・・15m


 どれほど猛攻に晒されようと決して揺るがずにこちらを睨みつけているシンヤの瞳が。


 ・・・14m


 ・・・13m


 ・・・12m


 徐々に縮まっていく彼我の距離が。


 ・・・11m


 ・・・10m


 ・・・9m


 まるで、死神のカウントダウンに思えてくる。


 ・・・8m


 ・・・7m


 ・・・6m


 だからこそ、ゼルギウスは思ってしまう。


(やはり、戦いとはこうでなくてはならない。お互いが命を懸けて死力を尽くしてこそ戦いだ。奴らが持ってきた物は戦いには不要だ)


 ・・・5m


 ・・・4m


 ・・・3m


 そして、両者の動きが止まった。


 あと一歩でシンヤは自分の間合いに入ることができ、ゼルギウスは自分の懐に入られてしまう。


 お互いが、相手の次の一手を読むために、相手の微かな挙動まで注視していた。


 そして、弾かれるように両者が動いた。


「かぁぁぁぁ」


 ゼルギウスは気合と共に全力で槍を叩き下ろした。


 ここにきて、余りに力任せな攻撃に疑問を抱いたが。


「異伝天草流《光牙疾雷》」


 その一撃を躱し、シンヤは自信が持つ最速の技を出し・・・驚愕した。


「消え・・・上か!!」


 先程の力任せに振り下ろした槍の一撃は攻撃のためでなく、自身を『自由槍』(フリーランス)で上空に運ぶためだった。


 更に、上から鉄柱の様に巨大化させた複数の槍たちが降り注いできた。


 シンヤは慌ててその場から離れて降り注ぐ槍から逃れたが、再びゼルギウスとの距離が離されてしまっていた。


「ちっ振り出しに戻っちまったな」


(ひたすら攻撃を凌ぐのは、結構神経がすり減るんだよな)


「・・・これを使うか」


 そう言い、ゼルギウスは懐から砂時計を取り出した。


『原点回帰』(スタート オーバー)起動」


 その言葉でアレがユニークアイテムであることが分かった。


(マジか・・・これは更に厄介なことになりそうだな)





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