第七十三話
白銀の光を身に纏たユウキは先程までとは打って変わって、攻勢に出ていた。
「はぁぁぁーーー」
ユウキが剣を振るうと、そこから放たれた先程までとは比べ物にならないほどの威力の光刃がリーゼロッテの生み出した光輪を打ち砕き、真正面からリーゼロッテに襲いかかる。
余りの変化に、慌てて迎撃しようとするリーゼロッテ。だが、気付けば予想の数倍の速さで間合いを詰めたユウキに対応することが出来なかった。
「いける!! 《ゲイレルル》!!」
アルファルからあふれた膨大な光を身に纏い一条の閃光とかしたユウキの突撃がリーゼロッテを襲った。
「きゃぁぁぁ」
受けきれずに、吹っ飛ばされ、意外に可愛らしい悲鳴を上げたリーゼロッテは忌々しそうにユウキを睨む。
状況が逆転したように見えるが、ユウキの方も余裕がなさそうに息を整える間もなく攻めていた。
ユウキの使用した白銀の光を身に纏うスキル《ヴァルキュリア・マーチ》は、普段使わないマナをアルファルに貯めておき、そのマナを解放することによって一時的に全能力を強化するスキルだ。
だから、このスキルは一度使用した時のクールタイムがかなり長く、およそ一週間ほど貯めなければ次は使うことができない。
(兎に角、《ヴァルキュリア・マーチ》が解けるまでに倒さなきゃ)
「なるほど、おそらく一時的な全能力強化のスキルですね。おそらくその剣に込められた力を解放することによってスキルを発動させているのでしょうが・・・その程度で調子に乗らないで貰えますか」
「え!?」
世界が夜へと切り替わった。
そして、ユウキの目の前に先程までの軍服から、蛮族の様に毛皮を身に纏い太陽の如く輝くリーゼロッテの姿があった。
「《スコル・ベルセルク》・・・この神槍スコルの能力の一つです。あなたが今使っているスキルと同じ全能力強化のスキルですが、レガリアである神槍からもたらされたこの力とあなたの剣よりもたらされたその力、どちらが上か試してみますか」
そして、光の暴虐が始まった。
リーゼロッテが槍を振るう度に、嵐の様に光が吹き荒れ、恐ろしいまで力を放出する光は周囲の物を破壊し、リーゼロッテ自身もまるで狂気が宿ったかのように攻撃一辺倒になっていった。
だが、その中でもユウキは荒れ狂う光と破壊の奔流の中を恐れずにかき分け、リーゼロッテに刃を向ける。
「やぁぁぁぁ」
「はぁぁぁぁ」
二人の裂帛の気合の叫びが、闇夜の中で響き渡り、輝く姿で駆けまわるその姿は、両軍問わず周囲の兵の目を集めていた。
多くの人を魅了しながら戦う二人の戦いは、このまま続くと思われたが突等に銃声が割り込んだ。
「ユウね~さん大丈夫!?」
モモが撃った銃弾はリーゼロッテの体を捕らえたが、銃弾は強化されたリーゼロッテの体を貫くことが出来なかった。
「ぐっ・・・邪魔です!!」
とはいえ、流石にノーダメージとはいかなかったようで、少し顔をしかめると、モモたちに向けて光を解き放った。
「モモ・・・下がって」
モモの傍にいたギンガは大楯を構えて光を真正面から受け止めた。
「ぐぅ~~」
しかし、光に晒される大楯は徐々にひび割れ、そして破壊された。
「あっ」
盾が破壊された衝撃で吹き飛ばされたギンガだったが、幸い大きな怪我をすることなくやり過ごせた。
「大丈夫、モモちゃん、ギンガちゃん」
ユウキは傍に行き、二人の状態を確かめた。
「う~ん、何とか大丈夫だよユウね~さん。それにしてもすごいね、遠くからでもすごく目立っていたよ」
「うっ・・・まぁそれはいいとして、二人とも手伝ってくれる。あの人が持っている槍はレガリアってアイテムらしくて、とても強くて厄介なんだよ」
レガリアという言葉をユウキから聞いた瞬間、モモの目が輝いた。
「ホントにレガリアなの!! 超レアアイテムじゃんか、超ほしいーーよユウね~さん」
「・・・けど、あの人強すぎるから足手まといになりそう・・・」
さきほど、ようやく一撃を凌げただけのギンガは不安そうに声を上げたが、隣に立ったユウキが優しく声を掛けた。
「大丈夫、だからボクに力を貸して」
ユウキが手を握るとそこから白銀の光が伝わっていき、モモとギンガの体を包み込んだ。
そう、《ヴァルキュリア・マーチ》は仲間をも強化することが出来るスキルだった。
「いこう、二人とも」
そして、陽光の狂戦士と銀光の戦乙女たちの戦いの幕が開く。




