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第七十一話



 リーゼロッテがスキルを放つまでの間にユウキはどうすればあの強力なスキルから逃れられるか考えていた。


 思い起こすはスキルの始まり。


 このスキルは周囲の光を飲み込む時、一緒に対象の姿を吸い込むことでその対象を永続的に追い続けることが出来るのだろう。そのホーミング性能は高速で空を飛ぶペガサスでも逃げきれないほどだった。先程生き残ることが出来たのは光が拡散し過ぎて威力が下がったからだ。


 ただ、その光景を思い起こしたことでユウキは一筋の光明を見出していた。


(あのスキルはボクの姿をした分身まで拡散して光が追いかけていった。逆に考えるならば、ボクの姿が飲み込んだ時から変われば、ホーミング性能は失われるじゃないかな)


 ホーミング性能さえ失えば《シャイニング・ロア》は避けやすいスキルだ。


 放たれる前に穂先が眩しいくらい光出すので発動タイミングが非常にわかりやすいスキルだったので、穂先が光り出したら《クイックムーブ》で避けられるはずだ。更に穂先のあの眩しい光ではリーゼロッテからはおそらくこちらの様子が窺うことが出来なくなるので大きな隙もできるはず。


 つまり、このスキルの恐ろしい所は大抵の者ならば一撃で倒しきる威力と逃げ切ることが難しいホーミング性能だけだ……それだけあれば十分恐ろしいスキルだったね。


 さて、問題はどの程度姿が変わればホーミング性能が失われるかだ。


 取りあえずユウキは髪を一房括ってみた。


 その姿を見たリーゼロッテはユウキの狙いがわかった様で、ユウキの行動を鼻で笑い、光る穂先を向けた。


(やっぱりこの程度で変化では逃れることができないか…もっと大きな変化が必要だね)


「《シャイニング・ロア》」


 そして、リーゼロッテからユウキに向けて光の奔流が放たれた。


 《シャイニング・ロア》は髪型を少し変えた程度では、そのホーミング性能から逃れることはできない。これでユウキの消滅確定だと、リーゼロッテは思っていた。


 だから、光の奔流を躱し、肉薄していたユウキに反応するのが遅れてしまった。


「もらったよ!!」


 ユウキの振るった剣がリーゼロッテの肩を切り裂いた。


「そんな!? どうやっ……!!」


 どうやって《シャイニング・ロア》から生き延びたのか? リーゼロッテに浮かんだ疑問はユウキの姿を見た瞬間氷解した。


「なんですか…その翼は? 貴女は人間ではなかったのですか」


 そう、リーゼロッテが見たのは背中から天使の様に背中から翼が生えているユウキの姿だった。


「さぁどうだと思う?」


(良かった。アニマルドロップが有効で)


 ユウキが使ったのはモモから貰ったアニマルドロップである。その効果により鳥の翼を手に入れたのが今のユウキの姿である。流石に翼まで生えると《シャイニング・ロア》も違う姿だと判断されたようだ。


「…どうやら、少し、貴女を甘く見過ぎたようですね」


 先ほど与えた肩の傷も浅すぎたのか、特に気にすることもなくリーゼロッテは今度は油断なく槍を構え直した。


(しまった!! 相手が本気になっちゃったよ)


 リーゼロッテが本気になり始めたことに焦るユウキ、周囲を確認するが味方がいる様子はない。一番近くに確認できるのは浮島で戦っているシンヤである。


(どうしよう…この人強そうだから、一人で勝てる気なんかしないし。背を向けて逃げ出しても、今度は今の姿で追いかけられる《シャイニング・ロア》を撃たれるだけだから隙の大きなチャージを妨害できるこの至近距離から逃げ出すわけにもいかないし、兎に角時間を稼いでシンヤが戦い終わるか、誰か味方だ助けに来てくれるのを待つしかないのかな…)


「ところで、気になったのだけど、その槍はユニークアイテムですか?」


(取りあえず、話をして時間を稼ごう)


「いえ、この神槍スコルはユニークアイテムの上位にあたる、俗に言うレガリアと分類されるアイテムです」


(教えてくれた!? 意外と親切だこの人)


「レガリア?」


「ええ、ユニークアイテムとは人や一部モンスターが持つユニークスキルが持ち主の遺品に宿った物ですが、このレガリアと呼ばれるものは逆に神や悪魔と称される強大な力を持つ存在を討伐した際に、討伐した武器の方に力が宿った物です。この神槍スコルも遥か昔に光を食らう神獣を討伐した際に生まれた武器だそうです」


「へ~それってユニークアイテムとどう違うの?」


「ユニークアイテムは発動条件という、足を引っ張る要素がありますがレガリアにはその様な要素は殆どありません。この神槍スコルにしても精々太陽がないと光を貯めるのに時間がかかる様になるくらいです。夜でも星明りなどを飲み込むことでチャージ自体は可能ですし」


「条件が緩すぎるよ!!」


(ヤバすぎるよ、その話が本当ならあの神槍は日中は殆ど力を使いたい放題じゃないか、しかもチャージも一分ぐらいの時間しか掛かっていなかったし)

 

 ユウキは頭上を確認してみると太陽は真上にあった。つまり日没までまだまだ時間がかかるということだ。

 

「さて、時間稼ぎはこのくらいでいいですか?」


(バレてる!!)


 時間稼ぎがバレて動揺しているユウキを尻目に、リーゼロッテは槍をくるりと一回転させた。


「ついでに教えて差し上げるなら、レガリアと呼ばれる物は複数の能力を持っていることがありますよ」


 気付けば、リーゼロッテの周りには槍から生まれた光輪が展開していた。


(…ホントにマズイ状況かも)


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