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第六話



 俺たちはエレウシスの巨大な門の前にたどり着いた。門は開け放たれていて門番はいるがどうやら自由に出入りできるようだ。俺は念のためNPCの門番に入ってもいいか聞いてみることにした。


「すいませ~ん、この門は勝手に通ってもいいんですか?」


「ん? 別に問題を起こさないなら構わないがどうした?」


「いや、俺たちは身分証とか持っていないから何か手続きをしないといけないかと思いまして」


「ハハハ、それは違うぞ少年、身分証が必要なことは貴族や大手の商会に紹介するときに必要で、いちいち門から出入りするのには必要ないぞ。そもそも、この門からは多くの人間が毎日出入りするのによっぽど怪しくないとわざわざ確認したりしないぞ」


「そうなんですか、ありがとうございます・・・ユウキどうやら自由に入っていいみたいだぞ」


 門番に礼を言い、俺たちは門の中に入っていった。そして、街灯に照らされた街並みに俺たちは「おお~~」感嘆の声を上げた。エレウシスの街並みはファンタジー定番の中世ヨーロッパのような街並みで石畳の道の所々に街灯として淡い光を放つ石が飾られていた。そして、日が暮れて現実よりはるかにでかい月と星が夜空を照らす時間になってもいまだに多くの人が道を歩いていた。外を出歩いている人はプレイヤーが多く、そのプレイヤーたちも街で一際明るい方へ歩いているようだ。


「すっげ~~な、ユウキ! これぞファンタジーの世界って感じだな!」


「そうだねシンヤ君、それにこんな時間でも結構な数の人が出歩いてるね」


「あっちの方に行っているみたいだな、行ってみるかユウキ」


 俺たちも人の流れに沿うように一際明るい方に歩いて行った。しばらく歩いていると多くの人間が犇めきあっている大通りにでた。大通りには明かりを確保するためにランプがつるされていて道の端には多くの露店とその露店を覗き見る人が道を賑わかせていた。


「おお~~、なんだ祭りでもやっているのか!」


「本当だ~、なんでこんなに人がいるんだろう?」


「知りたいか」


「えっ! バンチョウ!!」


 俺たちがこの光景に驚いていると後ろからバンチョウが話しかけてきた。


「ようシンヤ、お前もようやくこっちに来たか。しかも女づれとはやるじゃねぇか」


「ええ・・・まさか自分も逆ナンされるとは思いませんでした」


「してないよ!! ただ一人だと不安だから一緒に冒険させてって言っただけだよ」


 俺の逆ナン発言にユウキは慌てて否定しているが、バンチョウは冗談だとわかっているようでスル―している。


「クックック、嬢ちゃん慌てなくて冗談ってわかっているから。それでこの大通りの説明していいか」


 バンチョウの説明によると、これは祭りではなく多くのプレイヤーが露店を出しているだけのようだ。なぜこのような祭りのような状況になったかというと、この街ではまず朝になると多くの戦闘系プレイヤーが冒険者ギルドに行きクエストをうけ出発するそうだ。そして、日が暮れる頃にクエストを終えたプレイヤーが街に戻ってくる。そのプレイヤーたちがギルドや知り合いの生産系プレイヤーに狩ったものを売る。そして、素材アイテムを手に入れたプレイヤーが様々なアイテムを作り露店で売る。そしたら、その日の狩りを終え懐が温かいプレイヤーが集まって露店でアイテムを買っていく。それを嗅ぎ付けた多くのプレイヤーがどんどん集まって来て、このような状況になったそうだ。


「なるほど、だからすれ違う人の多くがプレイヤーだったのか」


「ちなみに、この人だかりは夜の十二時ぐらいまで続くぞ」


「へぇ~、ちなみに今は何時なんですか?」


「なんだ気付いていなかったのか、街の中心を見てみろ」


 バンチョウに言われた通りに街の中心に目を向けると巨大な時計塔があった。その明かりで照らされた時計が今は八時であることを教えてくれた。


「・・・時計塔があったんだな」


「そうだね・・・あんなに目立つ建物なのに気付かなかったね」


「それだけ、この街に興奮していたってことだろう。ついでにこの街について説明してやるよ」


 説明によると、時計塔の周りは中央区と言われており冒険者ギルドや魔術ギルドなどの各種ギルドと宿屋があるそうだ。そして俺たちが今いる所は南東区または商業区と呼ばれており、各種様々な商店が軒を並べている。その対面は南西区または職人区と呼ばれており、こっちは様々な工房が軒を並べている。そして、北側は居住区と呼ばれており、多くの人が暮らしている。ちなみにエレウシス領主の城があるのも北側である。


「へ~・・・そう言えばこんなにプレイヤーがいるのに宿は空いているのか?」


「あっ! そうだよまずは泊まるところを探さないと!」


「あ~そうだな、今はこの街も混み合っているから宿を探すのに時間がかかるかもな。俺が紹介できたらいいんだが俺の泊まっている宿も今は満席だから泊まることができないしな」


 そのことに気付いた俺たちはバンチョウに別れを告げ、急いで中央区に向かった。


「ところでユウキ」


「なに? シンヤ君」


「宿が見つからない場合は軒下と馬小屋どっちがいい」


「りょうほう嫌!! それにさっきバンチョウさんが宿は沢山あるからどこかに開いている宿があるって言ってたよね」


 俺たちは中央区につくと早速空いていそうな宿を探し始めた。


「ユウキ! あの宿はどうだあれなら確実に空いているぞ」


「えっ・・・どれ?」


 俺の指差す先にはご休憩500G ご宿泊800Gと書かれたラブホテルがあった。


「ふざけないでよ!! あんなところ泊まれるわけないよ!!」


 ユウキは怒った。当然だが俺はむしろそういうことがこのゲームですることができるかもしれない事実に驚愕していた。後で説明書を穴が開くほど見ておこう。


「もう、シンヤ君! ふざけていないで早く探そう!」


 流石にこれ以上ふざけたら本気で怒りそうだったので、おとなしく宿を探すことにした。そして、五件目にしてようやく空いている宿を見つけることができた。宿が取れた時のユウキの喜びようを見ていたら、そこまで野宿が嫌だったのかと思った・・・もし宿がどこも開いていなかったら、上手く誘導すればラブホテルに泊まれたんじゃないか。そう思うと俺は素直に宿が取れたことに喜べなかった。


「良かったねシンヤ君、空いている宿が見つかって」


「そうだなユウキ・・・ところで少し聞いていいか?」


「ん? な~にシンヤ君?」


 俺は初日で宿に泊まるときに生じた問題についてユウキはどんな答えをだしたのか聞いてみた。


「俺はこの世界で寝巻を持っていないからパンツだけで寝たがお前も下着姿で寝るのか?」


 この世界の服は結構ゴワゴワして寝難いからパンツ一枚だけで寝ているがユウキもそうなのか今物凄く気になっている。


「・・・ねぇシンヤ君、ボクの記憶が確かなら君とは今日初めて会ったんだと思うんだけど、普通初対面の女性にそんなこと聞く?」


「アハハ、いや~つい気になってしまってな」


「何、変なことを聞いてしまったなって感じで笑っているんだよ! 気になっても女の子にそんなことを聞いたらダメだよ!」


「うん、やっぱりそうだよな・・・でっどうなんだ?」


 期待を込めて聞いてみたがユウキの返答は・・・


「おやすみ!」


 ドン!! と激しい音をたてて扉を閉めて自分の部屋に入った。 


 ガチャ! ・・・どうやら鍵もかけたようだ。


「おやすみ~明日は朝の七時頃に宿の食堂でな~」


 扉の向こう側のユウキに明日の集合時間と場所を告げ、俺は自分の部屋に向かった。



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