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第六十八話


「おい!! なんなんだよアレは!! ツェルマット周辺にあのような浮島なんて地形は無かったはずだろ」


「よく見てみろ、アレは大岩だ!! あいつ等大岩に何かくっ付けて浮かせているんだ!!」


 突然現れた浮島にハイデラバードの人員は混乱していた。


 その為に、ただ右往左往しているだけで天馬騎士団が浮島を配置するのを許してしまった。


「急げ、敵が混乱している今がチャンスだ。直ちに部隊を展開せよ」


 それにより、ハイデラバードの陣地は浮島に蓋をされるような感じになった。そして、ジークの号令と共に、ツェルマットの人員は一斉に動き出した。浮島同士は大きめの鎖で繋がれていき、それを橋替わりにし多くの兵士が駆け巡り、浮島の上に部隊を展開させていった。


「総員、攻撃を開始せよ!!」


 浮島の上からまるで雨の様に降り注ぐ攻撃は、ハイデラバードの陣地を容赦なく削っていった。


「やばい、後方部隊まで攻撃が届いてやがる、誰かカバーに出ろ」


「畜生、このままでは一方的にやられるだけだぞ。誰か反撃しろ」


「いや、一旦浮島の下に隠れるんだ。そこなら死角になって攻撃が来ないはずだ」


 ハイデラバードの陣地は浮島が現れた時よりも混迷した状況になっていた。防御力の無い者、運が悪く攻撃が集中した者は倒れていき、ある者は散発的に浮島に向けて反撃し、ある者は浮島の下に潜り込んで何とか攻撃をやり過ごそうとしていた。


「団長、予想通り攻撃に晒された部隊の中に浮島の下へ退避する者が現れました」


「なら、上にいる部隊の退避準備は完了しているか」


「はい、既に小舟を用意していあります。ですから団長が命令すればいつでも落とせます」


「よし、下に十分な数がいるな…起爆しろ」


 ジークの号令と共に多くの人間が下に退避している浮島が爆発した。


 最も、爆発と言っても側面が軽く爆発しただけだったが、浮島に付けていた浮き輪を壊すには十分だった。


 爆発によって浮き輪が壊れたことにより、浮島はただの大岩に戻り、重力に引かれて急速に落下していった。


 ハイデラバードの人間がそのことに気付いた時にはもう手遅れだった。浮島の下から逃げる間もなく下にいた人間はその圧倒的質量に押しつぶされていった。


 その光景を見たハイデラバードの人間は慌てて浮島の下から退避していたが、そこ以外は浮島の上から雨の様に攻撃が降り注いでいる場所であり、ハイデラバードの人員はもはや自分たちに安全な場所が無い事を理解した。


 もちろん、上にいたツェルマットの部隊は空飛ぶ小舟に乗って浮島の上から退避していた。緩やかに飛ぶ小舟は戦場では的になりそうだったが、すぐにペガサスナイトがやって来て、近くの浮島まで運んで行った。


 戦場の流れは、完全にツェルマットに傾いていた。



 シンヤは適当な浮島にヒエンを着陸されると、そのままポーションを飲ませて休ませてやった。


「悪いなヒエン、かなり無理をさせてしまった」


 「全くだ」と言っているように、ヒエンは撫でようとしたシンヤの手に噛みついた。


「何でヒエンに噛みつかれているのシンヤ?」


 シンヤが休んでいるのに気付いたユウキが傍までやってきた。


「うわぁ!! 傍から見るとすっごくボロボロじゃないかヒエン、どうしたらこんなにボロボロになるんだよ」


「ちょっと爆風ジャンプをして貰った」


「何だよ爆風ジャンプって」


 呆れた様にシンヤを見るユウキに、シンヤは先程のアストンとの戦いを語った。


「…逃げてはダメだったの?」


「漢が一騎打ちを挑まれて逃げるなんてかっこ悪い真似ができるか」


「…もっと楽に勝てなかったの?」


「確かに、槍にこだわらずにただ勝ちにこだわれば、もっと楽に勝てただろうが…アイツは俺をバカにしたんだ。だからこそアイツの土俵でプライドごとへし折って倒さないと気が済まなかったんだ…わかるだろ」


「わからないよ!! そんな安っぽいプライドなんて」


 どうやら、女のユウキには漢のプライドがわからないようだ。


「そうか、こう…漢っていうのは、誰にも曲げらずに真っ直ぐに生きるのが…」


「あ~、別に語らなくていいよ。そんなガキ大将の様なプライドなんて、それで一番苦労したのはヒエンだよね。もうこんなにも傷ついて」


 ユウキはヒエンを労わる様に撫でていた。撫でられているヒエンも気持ちよさそうにそれを受け入れていた。シンヤが撫でようとしたら噛みついたが。


「それで、シンヤはこれからどうするの?」


「取りあえず、ヒエンはこのまま休んでもらって。俺はもうひと暴れしてくる。まだ、敵大将も残っていることだしな」


「言っても無駄だろうけど、あんまり無理してはダメだよ」


「おう、無理せずに大将首をとってくるわ」


(本当に言っても無駄だった)


 シンヤの返答にため息をつくユウキであった。





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