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第六十七話


 アストンの覚悟を感じたシンヤは、ヒエンを空高く飛び上がらせた。


 もちろん、逃げる為ではなく上空から重力の力を借り速度を上げる為である。

 

 ある程度上昇すると、ヒエンは身を翻しシンヤは上空から小さくなったアストンを睨んだ。


 そして、お互いが同時に相手に向かって駆け出した。


 大地を駆けるアストンに対して、空を駆けるシンヤは重力の力を借りて、これまでで最高の速度が出ており、まるで流星の様に一直線にアストンに迫っていった。


(速い!! だが捉えられる)


 アストンが想定したスピードよりも、上空から降下してくるシンヤのスピードは予想以上に速かったが、先程鎧を外して軽くしていたのが功を奏し、穂先はピッタリとシンヤを捉えていた。


 シンヤもアストンの穂先にしっかりと捉えられていることに気付いており、このままでは良くて相打ち、最悪自分だけが貫かれて死ぬ未来が待っていることがわかっていた。


 だからこそ、どうにかしてアストン狙いから外れないといけないが、ここで更なる攻勢にアストンはでた。


「《オーラ・スパイク》」


 スキルが発動すると共に、アストンの持つランスがオーラを纏い長大化し、先程までの二倍近い長さまで伸びた。


 これにより、アストンは更に遠くからシンヤを貫くことが出来る様になり、シンヤはアストンを貫くにはオーラで作られた槍と実体の槍の二つを回避しないといけなくなってしまった。


 圧倒的不利な状況であったが、シンヤは逃げるつもりは無かった。


「いくぜヒエン!! 今、この場から逃げるくらいなら自分の可能性を信じて全力を尽くすぞ」


 例え、どんなに困難な道であろうとも、シンヤは自分の可能性を信じて、勝つための道を探していた。


 そして、お互いが近づき、シンヤはアストンの構えるオーラの槍の穂先に接触する寸前に更に急降下した。


「愚か者が、地面に墜落するだけだろうが」


 アストンの言った通り、シンヤが駆ける軌道はもはや地面に向かって墜落する様にしか見えなかった。


 ヒエンが翼を広げ立て直そうとしているが、トップスピードまで乗った勢いを止めるには地面との距離が近すぎた。


(なんともつまらん結末だな…我が槍を避けるために自爆するとは)


 後は、地面に落ちたシンヤを轢き殺すなりすればいいと思っていたアストンだが、シンヤが振りかぶって何かを投擲しようとしているのが見えた。


『覇道の進め』(ウィニング・ラン)


 反射的に『覇道の進め』(ウィニング・ラン)で投擲物を踏みつぶすことを選んでしまったアストン。その事にシンヤは笑みを浮かべた。


 シンヤが投擲したアイテムは『覇道の進め』(ウィニング・ラン)により勢いよく地面にめり込むように踏みつぶされて、丁度シンヤ達が上に来たところで爆発した。


「うおぉぉぉぉ、爆風に乗って今一度飛べヒエン!!」


 翼を広げ、爆風を受け止めたヒエンの身体はメキメキと音を立て軋んでいたが、爆風を力強く受け止め再び空へ舞い上がる力を蓄えていた。


 その瞬間、アストンは悟った。自分のユニークスキルがただ投擲したのでは間に合わなかっただろう、この一瞬に間に合わせるために利用されたことを、そして、自分が決着がついたと気を緩めてしまっていた事を。


「しまっっっ、クソがぁぁぁ」


 もはや、騎士としての気取った一撃ではなく、ただがむしゃらに繰り出された一撃は、シンヤの体を軽く削っただけにとどまり。爆風を受け止め、空へ飛び立つヒエンに乗ったシンヤの一撃はアストンの胴体に深々と刺さり、そのままアストンを上空まで連れ去った。


「俺の勝ちだな」


「ぐ…どうやらそのようだな……だが!! このままでは終わらせん!!」


 槍が突き刺さったまま、アストンは残り少ない命を燃やすかのように腰の剣を抜き、シンヤに斬りかかった。


「あれ!? 言っていなかったけ。俺は剣の方が得意なんだって」


 槍を手放したシンヤは、アストンが斬りかかるよりも速く、アストンを斬り捨て。アストンはそのまま地面に向かって落ちていった。


「いえ~い、完全勝利…うげ!! マジかよ…」


 アストンが死んだか確かめに、地面に降り立ったシンヤの眼に飛び込んだのは、アストンに刺さったまま地面に墜落したせいでへし折れ壊れてしまった、ユニークアイテム『一騎当千』(ワン・マン・アーミー)の姿だった。


「これ、結構気に入ったんだけどな~仕方ないか」


 シンヤにも余裕があったわけでなく、最善を尽くした結果そうなったと、思い込むことにしてシンヤはヒエンの様子を確認した。


「ブルルルル」


 嘶くヒエンは、いつも通り雄々しく立っているが、軽く歩かせてみると、若干動きがおかしかった。やはり爆風に乗るなんて無茶な軌道をした反動何だろう、かなりのダメージを受けているようだった。


「どうにか休ませてやりたいんだが…来たか!!」


 敵地のど真ん中で、ヒエンの休憩場所を考えていたシンヤの眼に、城塞の奥地から次々と飛んでくる浮島が見えてきた。




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