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第六十六話


 再び、ヒエンに跨り槍を構えたシンヤ。


 実は、ユニークスキルの能力が、アストンの語った通りであればシンヤは対処法を考えてついていた。


 ユニークスキルの対象が前からの攻撃のみならば、すれ違った後から背後に向かって攻撃すれば無効化できないはずだ。


 だが、それをするとアストンの挑発を認めてしまうようで、シンヤはやる気にはならなかった。先程までは勝てばいいと思い《鬼吼砲》による遠距離攻撃を選んだが、今はシンヤのちっちゃいプライドゆえにあえて相手の得意分野である馬上戦での槍で決着をつけることしかする気は無かった。


 とはいえ、むやみに突っ込んでも先程までの繰り返しになり、今度こそやられてしまうかもしれない。しばらく考えたのち、シンヤはもう少しアストンのユニークスキルの能力を調べるためにもう一度突撃してみることにした。


 お互いに、駆け出し速度にのり、近づいた時にシンヤはコッソリ手に持っていた。ナイフを投擲した。


「むっ!? 何をたくらんでいるか分からんが無駄だと言うのが分からんか!! 『覇道の進め』(ウィニング・ラン)


 アストンが再び『覇道の進め』(ウィニング・ラン)によりシンヤが投擲したナイフを踏みつぶすと同時にシンヤの跨るヒエンが跳躍した。


 遠距離攻撃が効かないと分かっているのに、シンヤが投擲したナイフにどんな目的があったのか気になったために視線が踏みつぶされて地面に埋まったナイフに、一瞬視線が吸い寄せられた所に視界の外に逃れる様に跳躍したヒエンにアストンは慌てて目を向けた。そこには思いのほか近くにイタズラが成功した少年の様な顔をしたシンヤがいた。


「隙ありだぜ、アストン!!」


 跳躍した、ヒエンはペガサスとしての能力を使い、地面を駆けるよりも早く空を駆け、アストンの懐に潜り込んでいた。そして、振り下ろされたシンヤの槍は鎧を貫通しアストンの体に傷を負わせた。


「ふぅ~~、ようやくやり返せたぜ」


 シンヤとしては先程の突撃は 『覇道の進め』(ウィニング・ラン)の能力を確認するためにしたのだが、ヒエンの能力が予想以上に高くて、反撃まですることが出来た。


(まさか、ヒエンは地面を駆けるより空を駆ける方が速いとは思わなかったな~。流石はペガサスって所か)


 だが、ヒエンの飛行能力の高さはシンヤがこれからやろうとしていることにとっては大きなプラスだった。跳躍して分かったが、シンヤが警戒していた『覇道の進め』(ウィニング・ラン)の能力が前方で空中に浮いている物を全て踏みつぶすスキルでも無かったようで、例え、近くで違う物が踏みつぶされようが、跳躍していたヒエンに一切影響が無かった様に、あくまで遠距離攻撃に分類されるものしか踏みつぶせないようだ。


「下らん小細工を、このような手が二度と通用すると思うなよ!!」


 騎士として、正々堂々と正面からぶつかり合うことをよしとするアストンにとって、先程からシンヤがしている戦いを認めることができず。いきり立つアストン。


「兵法って言葉を知らねぇのか、俺にとっては勝つためにする小細工は立派な戦術であり技なんだよ」


 勝機が見えはじめ、楽しそうに迎え撃つシンヤ。


 そして、四度目の突撃が始まった。


 お互いに向き合い、槍を構え馬を走らせるところまでは同じだが、スピードに乗った所でシンヤはヒエンを空へと駆けあがらせた。空を駆けるヒエンはアストンの頭上高くに駆け上がり、まるでバレルロールの様な軌道でアストンの頭上を駆けた。


 丁度、アストンの頭上付近で逆さまになり、重力に従い体重の乗った突きを繰り出したシンヤと、重力に逆らう頭上に重たいランスで突き出す必要があったアストンの勝負は…ともに無傷という結果になった。


「あっぶね~、危うくヒエンから落ちる所だった」


 流石に身体がしっかりと固定されていない馬上では無理な軌道だったので、途中でシンヤがバランスを崩す事態になってしまった。それによりヒエンが気を利かせて、アストンの近くから離れたので先程の攻防は双方無傷という結果になった。


「流石に逆さまになるような軌道は、無茶があったか…まぁまだやれることがあるから問題ないか」


 ヒエンの上で槍を構えるシンヤを見て、アストンは思う。


(やり辛い…)


 アストンは今まで様々な戦場で愛馬を駆り、戦果を上げ続けたがここまでやり辛いのは初めてだった。そもそも、馬上戦は平面上で戦うものであってシンヤがしているように上下に揺さぶられることは無かった。


(だが、経験に無いからと言って、何もできないのは二流以下戦士だ!!)


 アストンはこれまでの戦いでシンヤを危険だと判断していた。最初は『一騎当千』(ワン・マン・アーミー)の効果で暴れまわるシンヤを止めるために、自分ならユニークスキルにも対処ができると判断し挑んだ一騎打ちだったが、実際に一騎打ちになった時点で『一騎当千』(ワン・マン・アーミー)の効果が切れ、最初の突撃で実力も判断でき、少し肩透かしを食らった気分だった。


 しかし、たった数回の戦闘で成長し自分を傷つけ追い詰めていくシンヤの姿は、アストンの眼にはとても楽しそうに戦う悪鬼にしか見えなかった。


(この男は確実にここで倒しておかないといけない!!)


 それゆえにアストンは次の一撃には自身の命を懸けた一撃を放つこと決めた。


 そして、アストンは鎧を脱ぎ捨てた。防御など考えずただ相手を貫くために少しでも軽く、そして速くなるために。


 アストンの決意をシンヤも感じ取って理解した。次がこの一騎打ちの最後になることを…。

 





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