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第六十三話


「イッテーーーな、受け止めてくれてもいいだろうが」


 地面に墜落したソースケが喚いてきた。一応、レビテーションの効果のおかげで落下ダメージは軽傷で済んだようだが。地面に叩き付けられたのは、それなりに痛かったようだ。


「断る、空から降ってくる美少女ならいざ知らず空から振ってくる男を受け止める趣味は俺には無い。それよりもお前が上から敵と一緒に振ってきたということはかなり苦戦しているってことだよな。そろそろ上に戻ったほうがいいかな」


「それなら、俺も連れて行ってくれ~~、ダメージを貰い過ぎて体が上手く動かないんだ。このままでは周りの連中に手も足も出せずに殺されてしまう」


 そういえば、周りはハイデラバードの連中に囲まれているんだったな。さっきまで俺が無双してできた空白地帯があるけどそれも徐々に距離を詰められて埋まってきているな。


「しょうがねぇな~、よっこらしょっと」


 シンヤはソースケを担ぎ上げると城塞に鎖を引っ掛けている敵に近づき、鎖の上を駆けのぼり始めた。


「邪魔するぜ~~と」


「おいシンヤ、鎖を持っている奴が鎖を手放したらどうするんだ?!」


 ソースケがそう叫んだのが、フラグだったのかさっきまで鎖を引っ張っていたハイデラバードの兵が鎖を手放し、鎖が撓みはじめて走れなくなってきた。


「ヒエン!!」


 シンヤがそう叫ぶと、空から黒いペガサスが飛んできてシンヤとソースケを背に乗せ、空に舞い上がった。


「あっ!! お帰りシンヤにソースケ」


 ペガサスに乗って城塞上部に帰還したシンヤ達をハルトが出迎えた。


「どうやら死なずに済んだようだ様だねソースケ」


「ああ、だけど体が上手く動かないからこのままじゃ足手まといになってしまうな」


「そうか、ソースケが俺たちの足手まといになりたくないと言うのなら、俺が介錯してやろう」


 ヒエンの背中から地面に落とされているソースケに向けてシンヤは刀を抜き、刃を突き付けた。


「おいこら、止めろ。折角生き延びたのに、わざわざ殺そうとするな。このゲームはデスペナルティがきついって知ってるだろ」


「ならどうする。そこらへんに転がしておくか?」


「それなら、自分が手配しておいたから、そろそろ来ると思うよ」


「ハイハ~イ、呼びましたか~~?」


「うわ!! ソースケ君ボロボロじゃないか、大丈夫なの?」


 ユウキとカオルがアルビオンに乗ってやってきた。どうやら、ハルトが呼んでいたようだ。


「それじゃあ、カオルさんソースケの事をよろしく頼むよ」


「任されました~」


 カオルがソースケの治療のため後方に下がっていった。


「しっかし、全然数が減らないな」


 シンヤが眺める先には次から次へと押し寄せてくる敵兵の姿が映っていた。


「畜生、やっぱり数が多いってのは単純に有利だな」


 シンヤのぼやきに隣にやってきたユウキが難しい顔をして答えた。


「それでも、今のところは護りきれているね。このまま護りきれるといいんだけど…こっちも色々作戦を立ててきてるし頑張ろう」


 ユウキはシンヤを元気づける様に笑顔を見せた。それを見ていた周りの人は、まるで元気を分けられた様に登ってきた敵兵をぶっ飛ばしていた。


「作戦と言えば例のアレ、そろそろ運ぶのを手伝いに行った方がいいかな?」


 ユウキはアルビオンを落ち着かせるように撫でつつ、作戦に使う物が置かれてある後方に視線を向けていた。


「そうだな、確かにアレを運ぶにはペガサスが必要だからな。向こうも人手が欲しいだろうからユウキは手伝いに行った方がいいかもな」


「アレ? ボクは手伝った方がいいって言ったけど、それじゃあシンヤは何するの?」


 シンヤの言い回しに疑問に思ったユウキが、そう問いかけた。それにシンヤは人の悪い笑みを浮かべて槍を担ぎながらヒエンに飛び乗った。


「な~に、俺にはちょっと一人で行くところがあるから、行って来るだけだ」


 ユウキにとって見覚えがある槍を持っていることに気付いたので、これからシンヤが何をしようとしているのか感づいたユウキは、また無謀なことをしようとしているシンヤに頬を引きつらせながら聞いてきた。


「え~と、大丈夫なのシンヤ? 確かにそれを使うには一人じゃないといけないけど、相手にしないといけない数が半端ないと思うんだけど」


「むしろ、燃えるね。全力で戦い続けることが出来るんだから。それに例の作戦が始まればこっちに構う余裕がなくなるだろうし、その時に一旦引くことにするつもりだ」


「そうなんだ…頑張って。それと死なないでね」


 ユウキはそう言うと、ヒエンに跨り飛び立ったシンヤを見送った。



 ハイデラバードの傭兵やプレイヤーを含む混成部隊が待機する一角。


「おい、そろそろ前に出たほうがいいんじゃないか」


「いや、まだ早いだろう。活躍できないのも問題だが、ツェルマットの連中もまだまだ余裕がありそうだからな。反撃食らってデスペナルティを食らってもつまらないだろう。もっと追い詰めてから前に出よう」


「そうだな、最初の大規模魔術には驚いたけど、まだまだこっちの方が数は多いし、戦争も始まったばかりだから。焦る必要もないよな」


 そんな話がされている一角に漆黒のペガサスに跨った一人の男が舞い降り、混成部隊に向かって単身突撃してきた。


「何だコイツは? 自殺志願者か」


「大方、無双ゲームの主人公気取りのバカだろう。さっさと倒してしまえ」


 一人で突撃してくる男を、罵る声が周りから上がるが、罵られた張本人は獲物を前にした悪鬼の様な笑みを浮かべ呟いた。


一騎当千(ワン・マン・アーミー)


 そして、ハイデラバードの陣営の一角で、まるで無双ゲームの様な蹂躙が始まった。


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