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第六十話


 ハルトによって放たれた新星の様な魔術は、流星の様に城塞にとりついてある前線部隊の頭上を高速で飛び越えていき、その後方に詰めていた中央部隊のど真ん中に着弾した。


 その瞬間、星が眩い光と共に爆発し、轟音と共に破壊をもたらした。そして、着弾した周囲のハイデラバードの兵は大地を砕き、大気を震わせながら迫りくる光になすすべもなく飲まれて行き、跡形もなく消えていった。


 その光景を、城塞の上から見ていたシンヤは興奮した面持ちでハルトに詰め寄った。


「すげーー、何だよあの魔術は、此処まで爆発の衝撃が届いてきたぞ。たった一発の魔術で中央部隊が崩壊しているじゃねーか」


「ハッハッハ、もっと褒め称えてくれてもかまわないよ。自分の持つ魔術の中で最高の威力を持つ魔術だからね。多数の触媒や、事前にする準備も大変で、なおかつ発動するまで三分近くかかるけど。一度放つことができたら、見ての通りの破壊力さ」


「なら、もう一発放てないのか?」


「《スーパーノヴァ》はもう無理だね。ついでに言うなら、今はここら辺のマナが乱れているから《スーパーノヴァ》の様な大魔術はしばらくは使えない様になっているよ。おそらく戦争が大魔術の打ち合いにならない様にするための処置だろうけど。発動に必要な触媒を考えるにそこまで打ち合い合戦にならないと思うんだけどね」


 ハルトが言う触媒って言うのはあれだろう。城で掻き集めていた竜の魔石やら何やらの希少なアイテムだろう。このために集めていたんだな…。


 シンヤはあの時、ハルトの奴意外と手癖が悪いな~と思っていたが、それなりの理由があって納得した。なので先程の物言いに少し気になることがあったので問いただしてみることにした。


「なぁハルト、《スーパーノヴァ》はもう無理って言っていたが。それ以外なら撃てるのか?」


 シンヤの問いにハルトは意味深な笑みを浮かべると勿体ぶりながら告げた。


「それは乞うご期待と言った所かな」


「なら楽しみにしているぜ」


 そう言い、シンヤは槍を片手に城塞から飛び降りた。


「うお!! アイツは何をしているんだ!?」


 飛び降りたシンヤに驚いたソースケは端から身を乗り出してしたを覗きこんでいた。


「おそらく下の部隊を片付けに行ったんだろうね。今は自分の魔術のおかげで、後方部隊が壊滅して、とりついていた重装部隊が孤立している状況だからこの部隊を倒しきることが出来たらかなり有利にことを進めることが出来るからね」


 ハルトの言う通り、現在ハイデラバードの前線部隊はコの字の内側に取り残されている状態であり周囲から激しく攻めたてられている状態であった。前線についていたのが耐久力がある重装部隊がメインでもこのままでは全滅は時間の問題であることは火を見るよりも明らかだった。


「ただ、敵もやすやすと全滅させてくれる気はないみたいだね。すでに増援が送り込まれてきているし。後方でも何やら準備をしているみたいだから、シンヤは少しでも多くの敵を倒すために下に降りたんだね」


「なら俺も下に降りたほうがいいか?」


「いや、ソースケは此処に残ってくれ。今も城塞に鎖が掛けられてそこから敵兵が登ってきているから、近接戦闘が得意な君が登ってきた兵と戦って貰った方が有難い。それに、周囲が敵だらけで味方からも容赦なく攻撃が降り注ぐ所に飛び込むなんて正気沙汰とは思えないしね」


 ハルトの指示に従い、城塞の上に陣取ったソースケだったがふと思い立ったようにハルトに告げた。


「けど、敵さんがハルトみたいな大魔術を撃ってきたら俺では防ぎきれないぞ」


「ああ、それはそこまで心配しなくていいよ。本来大魔術を撃つには準備に十分くらいかかるし、用意しだしたらすぐにわかるから妨害すればいいだけだしね。幸いこっちにはペガサスがいるから敵陣を飛び越えて術者を強襲できるから、妨害自体は多少の被害が出ることを覚悟すれば難しくはないからね」


 今回ハルトが三分ぐらいで発動できたのも防衛側として事前に戦場で準備ができたからであって、移動してこないといけない攻め手はその点であっても不利であった。


 ついでにハルトが言った通り、今も一部のペガサスナイトの部隊が激しくぶつかり合っている城塞付近を無視して敵陣の方を警戒していた。もし大魔術を発動させる気配があれば命を懸けてそれを妨害するつもりだろう。


 ソースケもハルトの説明に納得したようで、駆け上ってくる敵兵を片っ端からぶん殴っていた。


「…なんかこっちに敵兵が集まっていないか」


 ソースケの感じた通り、多くの敵兵がソースケが守るハルトに集まってきていた。


「…どうやら、さっきの《スーパーノヴァ》のせいで、敵兵の敵愾心を片っ端から煽ってしまったようだね。多分近くに登ってきた敵兵は皆こっちに来ていると思うよ」


 当然と言えば当然の結果だろう。敵兵としては強力な大魔術によって多くの仲間を吹き飛ばし、もしかしたら二発目もあるかもしれないハルトを敵は許す気はないのだろう。近くにいる敵兵は執拗にハルトを狙ってきていた。


「うおおぉぉ!! ちょっマジで来過ぎだろう。手が足りなくなってきたぞ! 何とかできないのかハルト」


 ソースケとハルトの周りには十人以上の敵兵が集まっていた。二人はソースケが次々と押し寄せてくる敵を押し止め、ハルトが魔術で敵を倒すよりも吹き飛ばして城塞の下に落とすようにしていた。最もかなりの高さがある城塞から叩き落とされれば無事では済まないだろうが。


「いや、自分に集まってくるのは好都合だ、城塞の上にいる他の人員の手が空く。そうすれば上から弾幕を増やすことができるから敵兵を減らすスピードが増す」


「つまり、とりついていた前線部隊が全滅するまでこのままってことか。仕方ねぇしばらく付き合ってやるか」


 ソースケが気合を入れなおした瞬間、一人の男がソースケを強襲してきた。その男は周りの兵とは違い、上等そうな装備を身に着け素手でソースケを斬りつけてきた。ソースケの身に着けている鎧の爪に当たった所はまるで剣で斬りつけられた様に金切音が激しく鳴り響いた。


「うおぉ!! あぶねぇーー」


 明らかに素手での攻撃だったのに鳴り響いた音を聞いてソースケは自分も使っているスキルなので即座にどのような攻撃か見抜いた。


「「《武装・闘気刃》」」


 双方、素早くオーラを刃の様に変質させるスキルを使い切り結んだ。ぶつかり合ったオーラが砕けて刃片となって飛び散り、切り付けたような跡を周囲に刻み込んだ。


「ほう、中々やるじゃねぇか。本当だったら後ろの魔術師を仕留める予定だったが…標的を変えるか。俺は黒槍騎士団強襲部隊隊長『爪槍』フリートだ」


「俺は『ライジングスター』のソースケだ。最も名前はこの間決まったばかりだから知らないだろうがな」


「何だ、運の無い奴らだな、名前が決まったばかりで俺たちに潰されることになるとわな」


「何言ってやがる。潰れねーよ。俺たちは誰一人として負けるためにこの場にいるわけじゃねぇからよ」


 そして、再び二人はぶつかり合った。





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