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第五話




 気が付けば随分と森の奥深くまで来ていたらしい、俺たちの目の前に綺麗な湖が姿を現した。その湖のふもとに木で組まれたリザードマンの住処があった。


「・・・ねぇシンヤ君、ここらでリザードマンが一番強いって知ってる。」


「ああ、だから挑むんだ。」


 この湖には、ここら辺のボスであろう赤い鱗をしたリザードマンリーダー・ガヴラスと取り巻きに二体のリザードマンがいた・・・意外と取り巻きの数が少ないな、今は昼間だから出かけているのか? そいつらはシンヤ達に気付き、まずは取り巻きのリザードマンが駆け出してきていた。


「シンヤ君には色々とお世話になっているから言いづらいけど、ボク今物凄くついていく相手を間違えた感がしているよ!」


 ようやくゴブリン相手に一人で戦えるようになったユウキは、目の前に迫りくるリザードマンに怯えて竦んでいた。


「相手はリザードマンだよ!! しかも赤い奴はリザードマンの上位種だよ!! さらには名前持ち!!!」


 たしか、名前持ちのモンスターはユニークモンスターで通常よりも強いんだったな。


「大丈夫なのシンヤ君、勝てる?」


 心配そうに見てくるユウキに、俺は自信満ちた声で宣言した。


「任せろ!! いくぞユウキ!!」


 駆け出した俺の後ろに覚悟を決めたのかそれとも色々とあきらめたのかユウキをついてきた。そして、お互いの一対一になる形で取り巻きのリザードマンに対峙した。


「さてと、後ろに親玉もいることだし、取り巻きはさっさと片づけるか」


 取り巻きは身に着けている装備こそ森をうろついているリザードマンよりもまともだが行動パターンは変わっておらず、俺にとってはすでに見なられた動きであり、余裕をもって躱し、続け様に首を切り落とした。


 自分の分の取り巻きを早々に倒し、隣で「ちょっと! これはやっぱり無理! 助けてシンヤ君!」と叫びながら必死に教えた通りに攻撃をさばいているユウキを流しつつ、住処でこちらを睨んでいるガヴラスに向かってシンヤは中指を立てて一緒に遊びましょうの合図をした。


「ちゃんと戦えているじゃないかユウキ。それと・・・おい!いつまで眺めているんだお山の大将、さっさとかかってこい」


 その行為に、激怒したのか、ガヴラスは奇声を上げシンヤに襲いかかった。ガヴラスは通常のリザードマンよりも数段すばやくそして力強く、手に持ったファルシオンをシンヤにたたきつけた。その猛攻に対し、シンヤは冷静に見極めていき、隙を見ては切りつけていった。


 なかなかやるが、こいつも問題なく対処できるな、俺がそう思っていると、予期せぬ一撃が俺の脇腹を襲い数メートルほど吹き飛ばされることになった。


「ガハッ!! いって~~、そういえばてめーにはそれがあったな。」


 そう言いつつ、俺は自慢げに尻尾を振っているガヴラスを睨んだ。人間には当然尻尾がなく、道場で人間相手に鍛えていた俺にはなじみがない攻撃だった。筋肉の塊である尻尾はもしかしたら一番強力な部位かもしれないと思い。人型のモンスターでも予想外の攻撃があると気を引き締めなおした。


「なら、こっちも現実にはない攻撃をするか《飛斬》」


 その掛け声とともに刀がオーラにより光輝きアビリティ【刀術Ⅰ】によって習得したスキル《飛斬》により、オーラで構成された斬撃が飛び出してきて。ガヴラスを襲った。本来オーラは遠距離攻撃に向いていないがこのスキルは十メートルくらいなら問題ない攻撃力を備えている。

 しかし、リーダーの武器も光輝きシンヤの《飛斬》と同じように飛ぶ斬撃によって、シンヤの《飛斬》を相殺した。


「っち、流石はユニークモンスター、スキルまで使ってくるのか」


 せっかくのスキルがあっさりと防がれ、俺がどう攻めようか考えているとリーダーが大きく息を吸い始めた。そう行為にシンヤが警戒をすると、リーダーが口から広範囲に紫色の液体を吐き出した。


「なんだ、ゲロ・・・いや毒か!」


 俺がその場から飛び退き、液体から身をかわしたが液体の当たった草がみるみる枯れ始めたのを見て、これが毒だと判断した。


(また、厄介な攻撃だな、飛ぶ斬撃に毒のブレスと遠距離攻撃をそれなりにもっているから距離をとっているとこっちが不利だな。なら、こっちのすべき対応は接近戦)


 俺はガヴラスに近づくため足にオーラをこめ、一気に駆け出した。高速で近づく俺を迎撃するためガヴラスが斬撃を飛ばしてきたが、俺は身をひねりそれを紙一重で回避しリーダーに切りかかった。俺とガヴラスは最初のように切り結んだが、俺は尻尾や毒のブレスを警戒しなくてはならずうまく攻め込めずにいた。そうして生まれた隙をガヴラスが再び尻尾を脇腹に叩き付けた。


「それを・・・待っていた!」


 俺はオーラを集中させ体をガードし、ガヴラスの尻尾による一撃を受け止めていた。


「よう、いい尻尾だな、貰うぞ《大切断》」


 【刀術Ⅱ】で取得したスキル《大切断》は刀版の《パワースラッシュ》だ。スキルにより刀にオーラが纏い力任せに尻尾を両断した。リーダーは尻尾を切られたことにより怯んでしまい。その隙に俺は自信が持つ最速の技を叩き込んだ。


「いくぞ、天草流《疾雷》・・・なに!」


 《疾雷》は天草道場で学んだ純粋にただ速さを追求した技だ。俺が今まで道場で学んでいた刀術を完璧な状態で打ち込んだ。しかし、両断するつもりで打ち込んだ一撃はガヴラスの体を半ば切り裂く程度で思ったように斬れなかった。

 そのような結果になるとは俺は思っていなかった。先程、スキル《大切断》は尻尾を抱えたままで力任せに振るっただけで尻尾を両断することができたが俺の自前技である《疾雷》は完璧な状態で振るっても半ば切ることしか出来なかった。そのことから、考えるにスキルは刀までオーラが纏いその力により威力を上げているが自前の技は自分の肉体しかオーラが纏っておらず相手にもオーラによる防御があるのでそれで威力が激減していたのだろ。


(なら、俺のすべきことは天草の技をこの世界でも通じるスキルまで昇華させる)


 俺は大ダメージを受け倒れているガヴラスから距離をとり、オーラの制御に集中し始めた。まずはオーラを全身に巡らせそのまま刀まで自身の一部のように扱いオーラを纏わせた。次に体を巡るオーラの流れを制御し力を溜め、相手に向かって武器を構えた。


 俺の様子に気づいたガヴラスだったが、ダメージが深いようでガラガラ声で威嚇することが精一杯な様子だ。そして、威嚇するガヴラスに向かって俺は技と溜めこんだオーラを解放した。


「はぁぁぁぁ!!!」


 裂帛の気合とともに、放たれた技はスキルのようにオーラを纏い光輝く雷光如く突き進みリザードマンリーダー・ガヴラスを両断した。その成果に俺は満足し、この世界に生まれた新たなスキルに名をつけることにした。


「名づけるなら、異世界に伝える天草の技、異伝天草流《光牙疾雷》ってところか。」


 そして、俺は近くでリザードマンに襲われてキャーキャー叫んでいるユウキを助けに向かった。


 


「も~~、もっと早く助けて欲しかったよ」


「ハハ、わるいわるい」


 リザードマンを瞬殺し、リザードマン相手に接戦を演じて、ボロボロになったユウキを助けた後、ユウキの頭をポンポン叩きながら謝っていた。ユウキにしてみれば、いきなり強敵であるリザードマンと戦わせられたのだから、その怒りは当然である。


「まぁ、モンスターは片づけたから、ここら辺を探索してみようぜ」


 そう言い、俺とユウキはともにあたりを探索し始めた。周辺を探索するとリザードマンの集落の中にはダチョウの卵のようにでかい卵があった。


「なんだこの卵、リザードマンの卵か?」


「あっ、シンヤ君そのリザードマンの卵は村人から聞いた話だと珍味だから高く売れるみたいだよ。」


「マジで!よっしゃ乱獲じゃー」


 俺はその情報を聞くと集落の卵を片っ端からかき集め始めた、そして卵をかき集めている最中に鍵のかかった木箱を見つけた・・・しかしよく考えたらリザードマンたちからしては俺たちは災厄に等しいよな、ふらりと現れて一家の大黒柱を殺したあと子供(卵)を奪い去り宝物まで強奪していく存在だからな。


「お~~いユウキ、宝箱発見した」


「本当だ、けど鍵がかかっているけど、どうするのシンヤ君? 鍵を持っているの?」


「ああ、もちろん」


 そう、答えると俺は刀を抜き木箱を切りつけた。


「わっ、なにしてるんだよシンヤ君」


「なにって、宝箱を開けたんだよ。木箱なんだから壊せば開くだろう」


 俺が切りつけたことにより木箱の蓋が壊れて中を確認できるようなったが、いきなり目の前で刀を振るわれてビックリした気持ちがありユウキは「う~~~」と唸っていた。


 木箱の中身を確認すると、指輪が一つと宝石が幾つか入っていた。指輪を調べてみるとマジックアイテムであることが分かった。


・ガードリング

防御力が上昇する


 どうやら防御力が上昇する指輪のようだ。俺は少し悩んだが、指輪をユウキに向けてピンっと弾いた。


「ホラ、やるよ」


「えっいいの、ボクさっきの戦いは全然役に立たなかったし、まだ序盤だからマジックアイテムは貴重だと思うのだけど」


「いいから気にするな、巻き込んだ(故意に)わびだ」


 しばらく悩んだのちユウキは、はにかみながら指輪をはめて見せた。


「どう、似合うかな?」


「お~、似合う似合う」


「すっごい、適当に言われた!」


 俺の適当な対応にユウキは頬を膨らませた。


「それより早く村に戻って、この宝石を換金しようぜ。」


「む~~、たぶん宝石は村では換金できないよ。雑貨屋で扱える物しか売れないから宝石をうるなら、都市のほうまで行かないと」


「わかった。なら都市まで行くか」


「えっ」



 そして、俺とユウキは都市に向かって星空が照らす道を歩いていた。


「もう、やっぱり無理だった日が暮れてしまったじゃないか。」


「ハッハッハ、まぁいいじゃねえか、ゲームの中とはいえこんな綺麗な星空の下を歩けたんだから。」


 実際に、森から抜け出し空を見上げれば天然のプラネタリウムの様な星空が広がっていた。


「おっ! それに、ようやく見えてきたじゃないか。俺たちが目指していた都市。森丘都市『エレウシス』が」


 俺達の前に現れた都市はさっきまでいた数十人の村とは比べ物にならないほどでかく、数十万単位の人数が住んでいそうな強大な都市国家の姿だった。


「すっご~い、大きいね、けど周りが城壁で囲まれているけど門しまってないよね」


「大丈夫だろう、夜に狩をするプレイヤーもいるだろうし、遠目から見ても明かりがたくさんついているし、いざとなったら門の前で野宿すればいいだろ」


「それ大丈夫じゃないよね!ボク野宿なんて嫌だよ。」


こうして、シンヤは目の前の都市にワクワクしながら、ユウキは門が開いていることを祈りながら、『エレウシス』に向かっていった。


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