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第五十八話


「さぁ、戦争開始まで後三日、今からでもできることを考えよう会議を始めるぞ~」


 あの後撮影会から、急遽会議の場へと模様替えされた部屋の中で、シンヤは発言した。


「それじゃ~皆、何か意見はあるか、無いなら俺から言うぞ」


「…言いたいんだねシンヤ」


 ユウキのツッコミを無視して、シンヤは事前に自分で書いてあっただろう下手くそな図面を取り出した。図面に書かれていたのは石のついた輪っかの様なものだった。


「ギンガ、こんな物の大きい奴を作ることが出来るか? 出来れば沢山作って貰えるとありがたいが」


「…なにこれ? 浮き輪? 簡単な構造なら作れるけど」


「そう、まさに浮き輪だな、イメージとしては木製の輪っかに天馬車に付いてある飛行石がはめられてある感じだな」


 シンヤの案に、会議の場に居た人が疑問符を思い浮かべたがシンヤは構わずに続けた。


「輪っかの内側には網でも張って、それに岩を乗っけてペガサスで牽引して岩を運んでいこうと思ってな。持ち物に入れなければ地形オブジェクトのままだから50メートル以上離れても大丈夫なんだろう」


 そこまで聞いて、タリアはその案が理解できたようだ。


「なるほど~確かにこれならいけそうだね。構造も単純だから製作も簡単だし、網の部分を細工すればそのまま上空から投石できそうだし…うん、十分いけるよ」


「う~ん、まぁいいか。そこらあたりは制作時に話し合えば」


 タリアの意見を聞いて、シンヤは少し歯切れが悪く答えたが会議はそのまま進んでいった。


「では、次は自分の案を聞いてもらってもいいかな」


 ハルトは魔石の埋め込まれた矢を取り出した。


「ギンガちゃんに聞いたんだけど、バリスタの矢に魔石を埋め込んでもそこまで効率が良くなかったと聞いたから、代わりの案を考えてきたんだ」


 ハルトもシンヤの様に図面を取り出した。ただ、シンヤの子供の落書きの様な図面ではなく、きっちりと作画ソフトを使用した図面だった。


「今回は敵がこちらよりかなり多いから、一発を強化するよりも、有効的な攻撃を多く放てるようにした方がいいだろうから矢では無く土台に魔石を取り付けよう。バリスタを連弩の様に改造して、魔石に加速のルーンを刻み込んで矢が加速するようにすれば、一発一発の威力も上がるし、回転率も向上するから多くの敵を相手にすることが出来るはずだよ」


「お~、レールガンみたいなものか」


「そこまで、強く加速しないけどね」


 それからも、様々な意見が出されていき会議は続いていたが、時間が無いこともあり、しばらくしたら区切られることになった。


「さて、時間が足りないのは仕方がないが会議はここら辺りでお開きにするか、しかし、いいのかシンヤ? お前たちは分かれてそれぞれ別の場所を担当することになったが」


 ジークはシンヤ達が戦場で別行動になったことを気にしているようだ。


「別に構わないだろ。全員がまとまっているよりも、各々が自分の持ち味を活かせる場所に配置する方が勝率が上がるのは間違いないんだしな」


「わかった。なら確認するがソースケ、ハルトは城塞上部で防衛してもらい、登ってきたハイデラバードの兵を撃退。フーカ、カオルはこちらの槍兵たちと共に行動して時期が来たら前線で戦って貰う。ギンガ、モモは後方で色々と援護を、そして、シンヤとユウキはペガサスに乗って遊撃行動を頼む」


「おう、問題ないぜ。それじゃ皆、自分のやることをやりに行くか」


「済まない、ちょっと待ってくれ」


 各々自分がするべきことを確認した後は、三日後までの準備に入ろうとしたら。ジークから止められた。


「そう言えば聞いていなかったが、お前たちにはパーティー名があるのか?」


 ジークの発言に、シンヤ達は雷に打たれたような顔をして、集合した。


「うぉ、そういえば考えたことも無かったな」


「あったほうが絶対いいだろう。こう名乗りを上げるとき「○○○○のソースケだ」って名乗ることもできるわけだよな。その方が絶対熱いぜ」


「ねぇねぇ、それで誰かいい案はある?」


「いきなり振られても困るよ」


 それからシンヤ達は、自分たちのパーティ名を決めるためにタダでさえ少ない時間を削り、話続けた。



 それから三日経ち、ハイデラバードの軍勢はついに城塞チェスターに到着した。


「ついに来たな」


 城塞上部で呟いたシンヤの言葉に隣に立っているユウキが反応した。


「なんだか楽しそうだねシンヤ」


 シンヤの顔は口角が上がっており、今すぐにでも飛び出していきそうだとユウキは思った。


「楽しいっていうか、楽しみだな…戦争って言うのは現実では御免だが、こういうゲームでは大歓迎だからな」


「どうして?」


 ユウキにとってはこっちでも戦争は御免だった。ユウキにとって皆で協力してモンスターを狩って様々な街を旅していくだけでも十分楽しい日々だったからだ。だから今でもテンションは低めだった。


「そりゃ~英雄になれるからな。この世界では俺たちは誰もが頑張れば強くなることができる。だからこそ英雄になってみたいじゃねぇか。努力し仲間と協力しあいながら苦しい戦いを乗り越えた先にその偉業を称えて人々が英雄と呼んでくれるなら。それはとてもカッコイイことじゃないか」


 まるで夢見る少年のような瞳で敵を眺めるシンヤに、ユウキは思わず苦笑して。そのまま表情を笑顔に変え、低めだったテンションを上げていき一緒に楽しもうという気配に変わり、冗談めかしてシンヤに言った。


「それじゃあ、期待しておりますよヒーロー…だから勝とうね」


「ああ、もちろんだ」








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