第五十七話
ジーク達と廊下で話し合っていると廊下の奥から一人の少女が侍女を伴って現れた。
「あ、ジーク様こちらにいらしたのですね」
その少女はジークの姿を見つけると嬉しそうな顔をして、小走りに近寄ってきた。
空色の髪を背後にふわりとなびかせ、小柄な体でチョコチョコと駆け寄ってきて、髪と同じ空色の瞳でジークを眺める姿は間違いなく護ってあげたくなる美少女の姿だった。
「これは、姫さまどうかなさいましたか?」
「はい、ワタクシも新しく力を貸してもらえる人たちに挨拶をしようと思いまして」
「それは丁度良かったです。こちらの方々が今回力を貸してくれるシンヤ達です」
ジークがこちらをクーリュディナ姫に紹介しようとしていたが、シンヤ達の心は別の事で埋まっていた。
「「どうしてお前が前に出たーー!!」」
シンヤ達の叫びが廊下に響いた。
「まったく、人選を完璧間違えているだろうが」
「そうだね、この姫様が前に出て募集をしてくれれば、美少女対美幼女でいい対決になっただろうに…向こうに人が偏ってしまうのも頷けるよ」
シンヤ達が調べた限りでは、募集など前に出ることはジーク達天馬騎士団が引き受けており、今目の前にいるクーリュディナ姫に関しては殆ど情報が無かった。
「…いきなりどうしたんだお前たちは」
「いや…ちょっと物事の宣伝効果について考えていたらね」
「いっその事、この姫様も部屋の中に放り込んで一緒に撮影してもらうか?」
「任せて!!」
瞬間、モモが勢いよく扉を開けて下着姿のまま飛び出てきた。
「うわーー!! ちょっとモモちゃんなんで扉を開けてるんだよ!!」
「こら!! 早く扉を閉めなさい!!」
丁度、着替えの最中だったようで、シンヤが覗いた部屋の中では皆が下着姿のまま立っていた。
扉が開いたのはモモが飛び出したからであり、中が覗けてしまうのはシンヤ達のせいではない。なのでシンヤ達はこの光景を目に焼き付けておくことにした。
飛び出したモモが身に着けていたのはフリルが多くついたベビードールの様な可愛らしい下着で、ギンガはスポーツブラの様な飾りのない物で実用性を求めた感じが出ている。二人とも対照的な感じだがお互いの個性はでているだろう。
次に、フーカは普通の下着に見えるがシンヤは暇つぶしに調べた知識であれは小胸でも谷間が作れる超盛ブラと呼ばれる物だろうと判断した。そして、カオルは自前の胸でフーカ以上の深い谷間を作り、ブラもそんな重そうな物を支えて紐が切れたりしないか心配になるくらいだった。二人とも対照的な感じだがお互いの個性はでているだろう。
ユウキはピンクのSWEET系ブラを身に着けていた。今も恥ずかしそうに手でバランスの取れた見事な体を隠そうと必死になっている。むしろ隠そうとしている方がエロく感じるのが不思議だ。
「あはは、ごめんなさ~い。それじゃお姫様も早く中へどうぞ~」
そう言い、モモはクーリュディナ姫を連れて部屋の中へと入っていった。
「ふ~、眼福眼福」
「そうだね…最高の光景だったね」
「…あー、大丈夫なのか?」
いきなりの出来事にフリーズしていたジークはようやく再起動したようだ。
「問題ないだろう。ただの撮影会だし」
どんな写真が撮れているのか楽しみだ。
「そうだね、彼女たちの容姿なら多くの人の注目を集めることが出来るだろうし。後は人が集まるのを待つだけだね」
そのことについて、ジークは気まずそうにシンヤ達の誤算を語った。
「済まない、伝え忘れていたんだが…ハイデラバードの軍勢が来るのはこちらの時間で後三日しかないんだが」
「ハルト…間に合うと思うか?」
三日なら最も近い都市国家の首都まで行くこともできないな。
「無理だろうね。これから募集しても現実では三時間しかないから、それからこっちで移動して来ても、すでに終わっているだろうね。間に合うとしてもゲートでも使って急いできてもらうしかないけど、高いゲートの使用料を払ってまで来てくれる人なんて殆どいないだろうね」
なら、部屋の中で行われている撮影会の意味はないな…ってか三日じゃ俺たちも大した用意ができないじゃないか。
「それなら、こんな事してないで早くできることを話し合った方がいいんじゃないか」
「そうだな、ユウキ達にも後三日しかないことを伝えて今出来ることを話し合うか」
そう言い、シンヤは部屋の扉を開けた。
「おーい、ハイデラバードの連中が後三日でくるそうだぞーー」
「なんで部屋に平然と入ってきてんだよ、シンヤーーー!!」
ユウキの怒声が部屋に響いた。
「シンヤ…君のその何も恐れない行動力には感服するよ」
ハルトは昔、シンヤが修学旅行のお約束だからと言って、男子を扇動して女子の風呂を覗きに行ったことを思い出していた。ちなみにその時の結果は、シンヤ達は教師に捕まってその晩はずっと正座をさせられていた。




