第五十六話
映像を見せたハルトはこの世の真理を悟ったような顔をして。
「やっぱり、野郎と美少女では求心力が違うね…こっちも代役を立てて募集したほうがいいんじゃないかな」
その台詞にシンヤは女性陣の姿を見て。
「ふむ、うちのメンバーの写真でも撮って募集すれば戦力が増えるんじゃないか、上手くいけば向うの戦力も削れるし」
なにせ、うちのメンバーは全員平均以上に可愛いし、巨乳、貧乳、ロリ枠もモモとギンガがいるから問題なしだな。
「任せてシンに~さん、モモのカバンの中にはすでに全員分のコスプレ衣装が揃っているから」
シンヤの発言にモモが即座に食い付き、自分のカバンから次々と衣装を取り出していった。
「うわ!! なんでこんなに衣装を用意しているんだよ!?」
「いつか皆でコスプレしてみたかったんだよ~。さぁおに~さん達今から着替えるから部屋から出ていってね」
モモに促されてシンヤ達は部屋からでた。そして、丁度部屋から出たタイミングで廊下の先からジークが案内してくれた人たちを連れてこちらに向かってきていた。
「どうやら、全員戻ったようだな…しかし、なぜ部屋から出ているんだ?」
「今部屋の中ではうちの女性メンバーが、広報作戦としてコスプレをして宣伝してもらうために着替え中なんだ」
ジークはシンヤのコスプレ発言に「なんでそんなことをしているんだ…?」と小さく呟きながら頭を悩ませていた。
「そういえばハルト、このゲームでのプレイヤーの強さはNPCと比べて大体どの程度に位置するかわかるか?」
これで、よくゲームで見られるプレイヤーを特別視させるために英雄クラスの力をもっているなら、流石に数の暴力で負けるだろう。
「そうだね、このゲームではピンキリかな、戦闘がリアルすぎて攻撃されると思わず目を瞑ってしまう人とかいるみたいだし、だから一般兵に毛の生えたくらいの実力しかないプレイヤーもいるし、まるで水を得た魚の様に旨い事マッチして、圧倒的戦闘力を発揮するシンヤの様なプレイヤーもいるしね」
ああ、ユウキも始めの頃は思わず目を瞑ることが多かったな。
「だから絶対とは言えないが大体部隊長を任せられる兵ぐらいだと思うよ。数が増えれば英雄クラスも混じっている可能性が高いけど。調べてみた限りでは有名プレイヤーが向こうについている情報は無かったね」
「逆に言えば、プレイヤーの数が変動してもそこまで戦況は変わらないってことか」
ならば、この戦況を変えるにはどうすればいい……
「いっそのこと、城塞は突破される前提でひたすらペガサスから空爆でもして戦力を削ってこの都市で決着をつけるのはどうだ?」
カバンの中に大量の爆発物や石などを詰めて、手の届かない空から一方的に攻撃をし続ければ戦力差を効率的に埋められるはずだ。
「空爆についてはこちらも考えていたが、このゲームのシステム的に一方的に攻撃するのは無理だな」
「どうしてだ?」
シンヤが疑問に思っているとジークはポーチからアイテムを取り出して見せた。
「例えばこのアイテムは俺に所有権があるが、このアイテムを身体から50メートル以上離すと自然消滅するんだ。岩とかもポーチに入れれば同じ状態になるから空から物を落として攻撃するには高度を50メートル以下まで下げる必要がある。そうなると弓矢などの射程内に入ってしまうから攻撃を受けてしまうことになる」
「ならこのゲームでは、崖の上から岩を転がすこともできないのか?」
「カバンなどに入れた場合はそうだが、岩などそのまま移動させればそれは地形オブジェクト扱われるから、50メートル以上離れても問題ない。正し、それらの地形オブジェクトは定期メンテナンスで修正されるから。それには注意しないと折角移動させても元の位置に戻ってしまうから注意しないといけないが」
「岩とかペガサスではそこまで量を運べないよな…いっそ空中戦艦でも作っていないのか」
俺達が目指している天馬車みたいに、空飛ぶ船でも作ればいいんじゃないか。
そう思い提案したシンヤだったが、その台詞にジークが隣にいたタリアに視線を向けた。視線を向けられたタリアは頬を掻きながら気まずそうに目をそらした。
「いや~、私も作ろうと思ったんだけど、色々問題があって完成しなかったんだよね」
「問題?」
「大きく作りすぎて運用にかかる資金が掛かりすぎたり、大きいから速度が全然でなかったり、そもそも燃料になる魔石の消耗が激しすぎて、ここから城塞まで飛ぶこともできなかったり」
「全然だめじゃないか」
それは単純に大きく作りすぎなだけなじゃいか。
「しょうがないじゃないか! 戦艦としての機能を付けようとしたらどうしても大きくなってしまうんだから」
「まぁ、無いなら仕方がないか。違う手でも考えてみるか」




